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桃太郎 番外編
何度も
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“ごめんね? えーと、あたし、2年2組の川崎桃。今日はあなたに頼みたいことがあって来たんだけど”
あの日、いつもの場所で寝ていた俺の目の前に、突然現れた。駄々漏れ先輩の画策により、苦しい目覚めをした俺に、優しく水を差し出して。
俺はすぐに先輩に落ちた。あの日で、俺の生活はよくも悪くも変わってしまった。
桃先輩の好きなところ。天真爛漫で、可愛いところ。優しいところ。単純なところ。料理が上手いところ。
桃先輩の嫌いなところ。鈍感なところ。誰にでも平等なところ。
出会ってから、新たな面を知るたびに、足したり、引いたり。この恋はなかなかに不毛だ。ライバルも多く、俺はまだ、告白の返事を貰えていない。
「はぁ」
想いが募れば募るほど、動きづらくなっていく。今動いたら、先輩は離れていってしまう気がしたから。
俺はごろんと寝返りをうった。いつの間にか、俺の、ではなく四人の場所になった踊り場で。めんどくさかったから4限をサボってここにいる。どうせ今日は一緒にお昼を食べる日だし、誰か来たら起こしてくれるだろう。
目を閉じる。そのまま眠りにつく。あの日みたいに、目を開けたら先輩がいればいいのにと思いながら。
* * *
ゆさゆさと体を揺さぶられる感覚で、ぼんやりとしていた頭が徐々に冴えていく。まだ眠い。寝ていたい。開けようとした目をそっと閉じる。
「──……ぺいくん、おき……」
この 声は──。
「……もも、せんぱい……?」
夢じゃない……?
あの日から俺は、何度も何度も、眠りにつくたび、願ったんだ。目を開けたら、どうか、先輩がいるようにと。遠くで声が聞こえる。「あと十秒だけだよ」と、ゆっくりゆっくり、じゅうを数える──。
それに安心して、また俺は目を閉じた。少しだけ、よく眠れた。
* * *
「純平くん、疲れてるみたいだから起こしちゃだめだよ? 何回起こしても起きなかったんだから」
「……だからって、なんでお前が膝枕してんだよ?」
「なんか、寝ぼけたまま頭乗っけてきた」
「……っ!」
「眉間のシワすごいよ、祐樹」
「黙れ!」
* * *
あの日、目が覚めたら先輩がいた。その瞬間、俺のなかで確かに何かが変わったんだ。あのとき、あの瞬間だけは、先輩は俺だけを見ていてくれたから。
だから俺は、目を閉じよう。目を開けたら、あの日みたいに先輩がいるまで、何度も。
あの日、いつもの場所で寝ていた俺の目の前に、突然現れた。駄々漏れ先輩の画策により、苦しい目覚めをした俺に、優しく水を差し出して。
俺はすぐに先輩に落ちた。あの日で、俺の生活はよくも悪くも変わってしまった。
桃先輩の好きなところ。天真爛漫で、可愛いところ。優しいところ。単純なところ。料理が上手いところ。
桃先輩の嫌いなところ。鈍感なところ。誰にでも平等なところ。
出会ってから、新たな面を知るたびに、足したり、引いたり。この恋はなかなかに不毛だ。ライバルも多く、俺はまだ、告白の返事を貰えていない。
「はぁ」
想いが募れば募るほど、動きづらくなっていく。今動いたら、先輩は離れていってしまう気がしたから。
俺はごろんと寝返りをうった。いつの間にか、俺の、ではなく四人の場所になった踊り場で。めんどくさかったから4限をサボってここにいる。どうせ今日は一緒にお昼を食べる日だし、誰か来たら起こしてくれるだろう。
目を閉じる。そのまま眠りにつく。あの日みたいに、目を開けたら先輩がいればいいのにと思いながら。
* * *
ゆさゆさと体を揺さぶられる感覚で、ぼんやりとしていた頭が徐々に冴えていく。まだ眠い。寝ていたい。開けようとした目をそっと閉じる。
「──……ぺいくん、おき……」
この 声は──。
「……もも、せんぱい……?」
夢じゃない……?
あの日から俺は、何度も何度も、眠りにつくたび、願ったんだ。目を開けたら、どうか、先輩がいるようにと。遠くで声が聞こえる。「あと十秒だけだよ」と、ゆっくりゆっくり、じゅうを数える──。
それに安心して、また俺は目を閉じた。少しだけ、よく眠れた。
* * *
「純平くん、疲れてるみたいだから起こしちゃだめだよ? 何回起こしても起きなかったんだから」
「……だからって、なんでお前が膝枕してんだよ?」
「なんか、寝ぼけたまま頭乗っけてきた」
「……っ!」
「眉間のシワすごいよ、祐樹」
「黙れ!」
* * *
あの日、目が覚めたら先輩がいた。その瞬間、俺のなかで確かに何かが変わったんだ。あのとき、あの瞬間だけは、先輩は俺だけを見ていてくれたから。
だから俺は、目を閉じよう。目を開けたら、あの日みたいに先輩がいるまで、何度も。
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