21 / 57
桃太郎 番外編②
好きかも、しれない《祐樹目線》
しおりを挟む
「祐樹さー、桃に告白とかしないの?」
親友の唐突な発言に、俺は思わず飲んでいたジュースを吹き出した。部活が終わって一緒に帰っていたときだ。
本当に、一真の発言は意味が分からない。「うわっ、汚いな」と不満そうな声を漏らす一真に、俺はむせながらも何をいきなり、と聞き返した。
「いきなりじゃないよ? 前から気になってた」
「……何で、俺が」
告白とか、何で俺があいつにしなきゃいけないんだ。俺はあいつに苦労をかけられてる身であって。あいつからしたら、俺はただの“お供”であって。……ただの、お供で。
「まーいいけどね。お前がそれでいいなら」
そう言ってわざとらしく笑う一真に、胸がチクリと痛む。いや、騒つく。こいつは──何が言いたい。
「……お前、何なわけ?」
「言ったじゃん? お供その一」
「……そういうことじゃ……あーもういいよ」
俺はイライラしながら頭を掻くと、前を歩く一真に並ぶ。こいつは、そうやっていつも俺が欲しい答えをよこさない。わけがわからない。数学みたいに公式を当てはめれば答えが出ればいいのに。
「好きでしょ? 桃のこと」
ぐ、と喉が鳴る。答えづらい質問ばかりしてくる。俺はどう答えればいいんだよ。──好きだ、と?
「……お前はどうなんだよ」
うまく自分から話題をそらしたつもりだった。しかし、言ってから気がつく。一真が、「桃を好きだ」と言ったら、俺はどうするんだ……?
「俺? うん、好きだよ?」
あっさりと返されて、俺は眉間に皺を寄せた。だから、その“好き”は。
イラついて、ふと思う。何で俺はイラついてるんだろう。
「で、告白しないの?」
戻った話題に、肩を落とす。何で戻った。お前は、何がしたいんだ。
「見ててもどかしいから、お前。さっさとどうにかなってほしい。うまくいくにしても、玉砕するにしても」
そう言って、一真は笑った。玉砕……その一言にドキリとした。いや、玉砕も何も、俺は──。
もんもんと考えているうちに、一真はすたすたと歩いていってしまっていた。俺の、桃に対する気持ちの答えは──?
* * *
ある日のことだ。自販機の前で、桃にばったりとあった。桃は一真に買ってもらったジュースを片手に、ご機嫌だ。……ジュースぐらいで、大げさな。俺は会話をする二人を放って、呆れながら自分の飲み物を買っていた。また下らない会話してやがるな。
あぁ、そうだ。一真の分の、お茶──。
「じゃあ」
「何?」
「桃を拘束して、離したくない」
──っ!
耳を疑った。思わず弾けるように二人を見ると、愛しそうに桃を見ながら、指先に髪を絡める一真が目に入った。
──やめろ!
俺はとっさに、持っていたお茶を突き出した。
見ていたくなかった。二人を引き剥がしたかった。
「……あぁ、買ってくれたの? ありがとう」
何とも淡々とした声で言う一真を、ずるずると引きずっていく。
畜生。畜生。畜生。あぁもう、わかった。わかってしまった。答えは出た。
一真が桃に触れているのはムカつく。一真が桃を好きだと言うのがムカつく。他の奴にへらへらしてる桃がムカつく。さっき──俺が一真だったらと、一真が羨ましいと思った俺がムカつく。
今、こんなにも苛立っているのは、やっぱり。俺は、桃が好き。……かも、しれない。
(C)確かに恋だった
親友の唐突な発言に、俺は思わず飲んでいたジュースを吹き出した。部活が終わって一緒に帰っていたときだ。
本当に、一真の発言は意味が分からない。「うわっ、汚いな」と不満そうな声を漏らす一真に、俺はむせながらも何をいきなり、と聞き返した。
「いきなりじゃないよ? 前から気になってた」
「……何で、俺が」
告白とか、何で俺があいつにしなきゃいけないんだ。俺はあいつに苦労をかけられてる身であって。あいつからしたら、俺はただの“お供”であって。……ただの、お供で。
「まーいいけどね。お前がそれでいいなら」
そう言ってわざとらしく笑う一真に、胸がチクリと痛む。いや、騒つく。こいつは──何が言いたい。
「……お前、何なわけ?」
「言ったじゃん? お供その一」
「……そういうことじゃ……あーもういいよ」
俺はイライラしながら頭を掻くと、前を歩く一真に並ぶ。こいつは、そうやっていつも俺が欲しい答えをよこさない。わけがわからない。数学みたいに公式を当てはめれば答えが出ればいいのに。
「好きでしょ? 桃のこと」
ぐ、と喉が鳴る。答えづらい質問ばかりしてくる。俺はどう答えればいいんだよ。──好きだ、と?
「……お前はどうなんだよ」
うまく自分から話題をそらしたつもりだった。しかし、言ってから気がつく。一真が、「桃を好きだ」と言ったら、俺はどうするんだ……?
「俺? うん、好きだよ?」
あっさりと返されて、俺は眉間に皺を寄せた。だから、その“好き”は。
イラついて、ふと思う。何で俺はイラついてるんだろう。
「で、告白しないの?」
戻った話題に、肩を落とす。何で戻った。お前は、何がしたいんだ。
「見ててもどかしいから、お前。さっさとどうにかなってほしい。うまくいくにしても、玉砕するにしても」
そう言って、一真は笑った。玉砕……その一言にドキリとした。いや、玉砕も何も、俺は──。
もんもんと考えているうちに、一真はすたすたと歩いていってしまっていた。俺の、桃に対する気持ちの答えは──?
* * *
ある日のことだ。自販機の前で、桃にばったりとあった。桃は一真に買ってもらったジュースを片手に、ご機嫌だ。……ジュースぐらいで、大げさな。俺は会話をする二人を放って、呆れながら自分の飲み物を買っていた。また下らない会話してやがるな。
あぁ、そうだ。一真の分の、お茶──。
「じゃあ」
「何?」
「桃を拘束して、離したくない」
──っ!
耳を疑った。思わず弾けるように二人を見ると、愛しそうに桃を見ながら、指先に髪を絡める一真が目に入った。
──やめろ!
俺はとっさに、持っていたお茶を突き出した。
見ていたくなかった。二人を引き剥がしたかった。
「……あぁ、買ってくれたの? ありがとう」
何とも淡々とした声で言う一真を、ずるずると引きずっていく。
畜生。畜生。畜生。あぁもう、わかった。わかってしまった。答えは出た。
一真が桃に触れているのはムカつく。一真が桃を好きだと言うのがムカつく。他の奴にへらへらしてる桃がムカつく。さっき──俺が一真だったらと、一真が羨ましいと思った俺がムカつく。
今、こんなにも苛立っているのは、やっぱり。俺は、桃が好き。……かも、しれない。
(C)確かに恋だった
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
妹の妹による妹のためのハーレム計画
相上和音
恋愛
八乙女誠一は、平凡な生活を送る青年。
しかしある夜、妹の遥香が真夜中に彼の部屋を訪れ、彼にとんでもないお願いをする。
「お兄ちゃん、お願い――私の代わりに、ハーレムを作ってほしいの」
遥香の突飛な依頼に戸惑う誠一。
可愛い妹の頼みならば何でも聞いてあげたいと思うものの、倫理観や常識が頭をよぎる。
遥香の無邪気で真剣な姿勢に、誠一は次第に彼女の頼みを受け入れる決意を固めていく。
果たして、妹の代わりにハーレムを作るとはどういうことなのか?
そして、遥香が抱える秘密とは?
兄妹の奇妙で愉快な冒険が、常識を超えた方向へと進んでいく!
予想外の展開が次々と巻き起こる、兄妹の絆と笑いが詰まったハーレム・コメディ!
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
最後の恋って、なに?~Happy wedding?~
氷萌
恋愛
彼との未来を本気で考えていた―――
ブライダルプランナーとして日々仕事に追われていた“棗 瑠歌”は、2年という年月を共に過ごしてきた相手“鷹松 凪”から、ある日突然フラれてしまう。
それは同棲の話が出ていた矢先だった。
凪が傍にいて当たり前の生活になっていた結果、結婚の機を完全に逃してしまい更に彼は、同じ職場の年下と付き合った事を知りショックと動揺が大きくなった。
ヤケ酒に1人酔い潰れていたところ、偶然居合わせた上司で支配人“桐葉李月”に介抱されるのだが。
実は彼、厄介な事に大の女嫌いで――
元彼を忘れたいアラサー女と、女嫌いを克服したい35歳の拗らせ男が織りなす、恋か戦いの物語―――――――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる