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Ⅳ 嫌われ作戦は成功? 失敗?

④※

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「フクロウ君、僕はもうダメかもしれない」
今日もベランダに来てくれた大フクロウとリンは夜のお茶会をしている。

リンは色々と疲れてしまいテーブルに突っ伏している。フクロウが心配そうに『ホゥホゥ?』と喉を鳴らす。

「全部、うまく行かない。全部だよ。このままじゃ、十個の作戦が全部失敗してしまう。そうしたら、僕はどうなるのかな? 僕は、僕は……ここで王太子の妃殿下と呼ばれるの? カロール殿下の気まぐれで、城のあちこちでセックスを強要される人生になるの? きっと、城の皆が目隠しの布を持って歩くんだ。僕を隠す布じゃない。カロール殿下をお守りするための布を、ね。僕が大切にされることなど無い人生なんだ」

自分で話していてリンは辛くて泣けてきた。グスンと鼻をすする。目の前に揺れるブレスレット。キラキラと美しい輝きをそっと指で触れる。

「カロール殿下は、何を考えているのだろう? 僕に優しくする意図は、何だろう? フクロウ君、本当にココだけの話だ。僕、殿下の事が嫌いじゃないみたいなんだ。ひどいこともされているのに、憎めないような不思議な気持ちが苦しい。セレスと生きる道を諦めたわけじゃない。裏切りたくない。だけど、心が揺れるんだ」

相変わらず隣のベランダからはカタンと音がする。

「あ~~、もう死んだ方が楽なのかも。悩むのも疲れた。事故死したら、伯爵領に戻れるかな。婚姻前だから僕の遺体は王家の墓には入らないでしょ。死んで帰ればセレスは許してくれるよね」

リンはカタンと音を立てて椅子から立ち上がりベランダの欄干に近づく。フクロウが『ホー』と一鳴きした。フクロウが止まっている場所と違う場所から下を見下ろす。高さ的には五階建て程度。高い。急に怖くなる。リンは深呼吸をして欄干からテーブルに戻った。テーブルに手をついて夜空を見上げる。

「だめだめ。死ぬのは最終手段だ。まだ十個の作戦は全て実行していない。まだ僕にはやるべきことがある」
自分に言い聞かせるように言葉にする。その時、夜風に乗ってフワリと良い匂い。リンが知っている、アルファの匂い。

『ホーー、ホーー』
大フクロウが大きく鳴いて空に飛び立つ。

リンの背筋にゾワリと震えが走る。心臓が変にドクドクと動き出す。リンの呼吸が荒くなる。はぁはぁと上がる息に熱くなる身体。リンから甘い匂いが広がるのが自分で分かる。意味が分からずリンはその場に膝をつく。床を見るとリンの汗がポタリと落ちる。

苦しい。熱い。ガタン、と大きな音がする。音の方向を見れば、揺れる視界に隣のベランダを乗り越えてリンのベランダに入ってくる人影。本来ならば悲鳴をあげるところだが、リンはニッコリと微笑んだ。リンは知っている。この苦しさを、熱を抑えてくれるのはこのアルファだけだ。この人はリンの運命だ。リンに向かってくる大柄なアルファにリンは縋るように両手を差し出す。その手をとり抱き締めてくれるアルファ。

「あぁ、カロール殿下。僕の、アルファだぁ」
勝手にリンの口が動く。リンはぼやける頭で『僕は何を言っているのだろう?』と考えた。でも、それも直ぐに分からなくなった。全てがどうでも良くなってしまった。


 身体が熱い。頭が朦朧として弾けそうな心臓の音。
「お願いぃ、たすけて。これ、やだぁ」
甘ったるい声がする。

早く満たして欲しくてリンは良い匂いのアルファに抱き着く。リンの揺れる腰を押し付けてアルファの匂いを吸いこむ。最高に良い匂い。心臓がバクバクと高鳴る。太い首が色っぽい。レロと首を舐めてみると美味しさにリンの目の前がグラグラ揺れる。欲しい。コレはリンのアルファだ。リンだけの運命だ。そんな思いがリンを支配する。

「リン、最高の匂いだ。甘い匂いに頭が焼き切れそうだよ」

心臓に響く声が聞こえて、リンのすぐ近くで言葉をこぼした唇を見る。

赤い口が妙に魅力的に見える。吸い付くように唇を食んでみる。リンが舐めつくすようにキスをすると厚い舌が舐め返してくれる。嬉しくて必死に舌を絡め合わせる。唾液から、唇からアルファフェロモンが流れ込む。

リンの神経を犯すように侵食する何か。ゾワリとする背筋。リンが必死で腰をカロール殿下に擦り付ける。もっと。もっと刺激が欲しい!

「あぁ、リン。もう、俺も限界だ」
突然リンをベッドに組み敷くカロール殿下。

リンを見下ろす殿下を見つめて、その先を期待してリンは頬を染めて微笑む。次の瞬間、殿下の匂いがブワっと広がる。リンの脳みそが蕩ける匂い。深く吸い込んで「あ~~」と情けない声をリンが漏らす。早急に服を破り取られ、貪るようにカロール殿下が肌に食いつく。

「ああ、きもち、いぃ~~! もっとぉ、もっとしてぇ」
悲鳴のような甲高い声を遠くに聞いた。

執拗にリンの薄紅色の乳首を甘噛みする殿下。歯を立てられるたびにリンは悲鳴をあげた。揺れる腰と汁が垂れるリンの男根。

「触ってよぉ、こっち、こっちぃ」
乳首ばかりでは物足りない。リンは必死で男根をアピールする。

「可愛い。リン。俺のリン。あぁ、たまらない! この匂いも、愛らしい顔も、この綺麗な身体も、全てが俺のものだ! リンは俺の運命の番だ!」
叫ぶようなカロール殿下の声。それと同時にリンの男根をニュルリと殿下が口に含んだ。

「いやああ!」
余りに強烈な刺激にリンの目の前がチカチカする。ビクビクするリンの身体が抑えられず「あ~~~!」と声を上げてリンが達する。ごくりと飲み干す殿下の様子を夢心地でリンは見た。

カロールさま、裸だ。彫刻みたいな逞しさだ。男根が立派過ぎる。リンの腕より太くないか? 反り返っていやらしくて綺麗。一瞬そんなことをリンは思った。リンの足が大きく開かれる。あれ? リンも裸だ。そんなことをリンは呑気に考えていた。

「はぅ! あぁ、やああ」
急に身体に入り込む刺激にリンの背筋がぞくぞくし、部屋中に甘い香りが広がる。目の前がクラクラする。 

殿下の指がリンの後腔に刺さっている。グニグニと内腔を確認するようにうごめく指。その動きと刺激に「ひぃ!」「はぅ!」と声を漏らし全身をビクつかせるリン。グパグパと鳴る音が恥ずかしい。後腔が濡れている。いやらしくて興奮する。

「もう、リンの中に入るよ」
はいるって、なに? そんな疑問がリンの頭に一瞬浮かんだが、すぐに全てが吹き飛んだ。

「あぁあ! やぁあ!」
ものすごい圧迫。リンの脳まで突き刺すような衝撃。

苦しいのにやっと満たしてもらったと悦ぶ心。リンの内腔が大きな存在を確かめるように喰い締める。嬉しい、と訴えるようにお腹がキュンキュン反応するのが分かる。リンの全身がアルファのフェロモンに侵される。

「リン! リン!」
何度もリンを呼ぶ殿下の声。叩きつけられるような獣じみた動き。

激しさにリンの頭が真っ白になる。リンは絶頂を迎えながら、理性の全てを手放した。カロール殿下の良い匂いに包まれて、快楽を追い求めて腰を振る。身体の奥まで殿下を迎え入れて悦びに泣き叫んだ。苦しくてキモチイイ。狂ったような幸福感。

セックス以外の全てがどうでも良くなってリンは悲鳴のような快感の声を漏らし続けた。
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