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29 俺たちの力
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俺は目の前の光景を受け入れられなかった。
今の俺の身体は返り血にまみれており、右手から滴る赤い液体には未だ熱が灯っていた。
そんな俺の目の前には本物の鬼がいる。
「とまぁこんな感じだ」
「どんな感じだよ!? 素手で魔物の首を両断とか、なんの冗談だよ!?」
「ハッハッハ、まぁ落ち着け?」
「落ち着け!? 落ち着けるかってーの! 自分の身体殴って回復とかどんな変態だよ! わかった、これは夢だ、絶対そうだ!」
「いや、夢じゃねぇって」
「わかってんだよ、現実逃避だよ! 分かったら俺に現実を見せんな!」
「おっけ、じゃあもう少しこの身体借りとくわ」
「やめろ、本当に現実に戻ってこれなくなるから!」
ゼィゼィと息を切らしつつ呼吸を整えることに専念する。
グラヴィスの野郎、本当に何やってくれてんの……?
「まぁまぁ、とりあえず落ち着け、な?」
「フゥ…フゥ…フゥ…」
「よし、落ち着いたな?」
「あ、ああとりあえずな……」
俺の様子を見たグラヴィスは納得し話を続ける。
「とりあえずだな、さっき俺が見せた力が俺の固有能力であり、お前の能力でもある『転撃』だ」
「まぁ、それは分かった。効果はある程度予想はつくけど、一応説明を頼む」
「そうだな、簡潔にいえばだな、自分の攻撃属性を他の属性に入れ替える能力だな」
なんでもないことのようにいうグラヴィス。
「とんでもない能力だよな、これ……」
「まぁ進化までしてしょっぱい能力を手に入れるよりも格段にいいだろう?」
「それはそうなんだけどなぁ……」
あんまりにもチート過ぎて凄い、とか嬉しい、とかの表情より先に戸惑いが浮かんでくるな。
「ちなみに発動条件ってやっぱりあるんだよな? あと制限とか」
「ん? まぁそりゃあな?」
やっぱりか。タダでこんなヤバイ能力使える訳ないよなぁ。
「んで、発動条件は?」
「スキル名を言った後に属性を詠唱するか、肉体にその属性が付いた武器を取り込むか、だな」
「肉体に武器って、まじか……」
「ああ、マジだな。俺はそんなまだるっこしいことやってられないから詠唱でやるがな」
「まぁ当然だよな」
「んで、付与する属性のことだが、自身が覚えて使える技や魔法に当てはまる属性のみだな」
「まぁ、妥当なラインだよな」
「ああ、だから大変だぜ? ひたすら武器振り回して魔法覚えまくらなきゃここまで万能にはなんねぇからな。それだけは覚えておけよ?」
グラヴィスはそんな当たり前のことを態々釘をさすように言ってきた。
「分かってるって。まぁ、なんとか頑張ってみるよ」
「本当に、本当に分かってるんだろうな?」
「だから分かってるって」
「マジか? 本当にわかっt」
「グラヴィス! お前は俺の母親か!?」
「だってぇ……」
イジイジと地面を触りだした。
「子どもか!」
「残念! 鬼だ!」
「分かってるよ! まったく……」
「ハッハッハ、すまんからかいすぎた! まぁ大丈夫ってんなら俺はお前の中でその行動をじっくり見守るとしますかね」
「ああ、そうしておいてくれ……」
ああ疲れた……。だが自分の能力について知れたことはデカイ。これでとりあえず当分の目標は決まった。
「お、じゃあそろそろリラちゃん起きそうだし向こう戻るか?」
「ああ、そうするよ。色々ありがとうな、とりあえず武器とか魔法とか一通り試してみるよ」
「そうだな、やっぱり向き不向きはどうしてもあるからな、そこから学んだ方がいいぜ」
「ああ、じゃあまたな」
「おう」
そう言って笑ったグラヴィスの顔を見たのを皮切りに俺は瞼を閉じた。
今の俺の身体は返り血にまみれており、右手から滴る赤い液体には未だ熱が灯っていた。
そんな俺の目の前には本物の鬼がいる。
「とまぁこんな感じだ」
「どんな感じだよ!? 素手で魔物の首を両断とか、なんの冗談だよ!?」
「ハッハッハ、まぁ落ち着け?」
「落ち着け!? 落ち着けるかってーの! 自分の身体殴って回復とかどんな変態だよ! わかった、これは夢だ、絶対そうだ!」
「いや、夢じゃねぇって」
「わかってんだよ、現実逃避だよ! 分かったら俺に現実を見せんな!」
「おっけ、じゃあもう少しこの身体借りとくわ」
「やめろ、本当に現実に戻ってこれなくなるから!」
ゼィゼィと息を切らしつつ呼吸を整えることに専念する。
グラヴィスの野郎、本当に何やってくれてんの……?
「まぁまぁ、とりあえず落ち着け、な?」
「フゥ…フゥ…フゥ…」
「よし、落ち着いたな?」
「あ、ああとりあえずな……」
俺の様子を見たグラヴィスは納得し話を続ける。
「とりあえずだな、さっき俺が見せた力が俺の固有能力であり、お前の能力でもある『転撃』だ」
「まぁ、それは分かった。効果はある程度予想はつくけど、一応説明を頼む」
「そうだな、簡潔にいえばだな、自分の攻撃属性を他の属性に入れ替える能力だな」
なんでもないことのようにいうグラヴィス。
「とんでもない能力だよな、これ……」
「まぁ進化までしてしょっぱい能力を手に入れるよりも格段にいいだろう?」
「それはそうなんだけどなぁ……」
あんまりにもチート過ぎて凄い、とか嬉しい、とかの表情より先に戸惑いが浮かんでくるな。
「ちなみに発動条件ってやっぱりあるんだよな? あと制限とか」
「ん? まぁそりゃあな?」
やっぱりか。タダでこんなヤバイ能力使える訳ないよなぁ。
「んで、発動条件は?」
「スキル名を言った後に属性を詠唱するか、肉体にその属性が付いた武器を取り込むか、だな」
「肉体に武器って、まじか……」
「ああ、マジだな。俺はそんなまだるっこしいことやってられないから詠唱でやるがな」
「まぁ当然だよな」
「んで、付与する属性のことだが、自身が覚えて使える技や魔法に当てはまる属性のみだな」
「まぁ、妥当なラインだよな」
「ああ、だから大変だぜ? ひたすら武器振り回して魔法覚えまくらなきゃここまで万能にはなんねぇからな。それだけは覚えておけよ?」
グラヴィスはそんな当たり前のことを態々釘をさすように言ってきた。
「分かってるって。まぁ、なんとか頑張ってみるよ」
「本当に、本当に分かってるんだろうな?」
「だから分かってるって」
「マジか? 本当にわかっt」
「グラヴィス! お前は俺の母親か!?」
「だってぇ……」
イジイジと地面を触りだした。
「子どもか!」
「残念! 鬼だ!」
「分かってるよ! まったく……」
「ハッハッハ、すまんからかいすぎた! まぁ大丈夫ってんなら俺はお前の中でその行動をじっくり見守るとしますかね」
「ああ、そうしておいてくれ……」
ああ疲れた……。だが自分の能力について知れたことはデカイ。これでとりあえず当分の目標は決まった。
「お、じゃあそろそろリラちゃん起きそうだし向こう戻るか?」
「ああ、そうするよ。色々ありがとうな、とりあえず武器とか魔法とか一通り試してみるよ」
「そうだな、やっぱり向き不向きはどうしてもあるからな、そこから学んだ方がいいぜ」
「ああ、じゃあまたな」
「おう」
そう言って笑ったグラヴィスの顔を見たのを皮切りに俺は瞼を閉じた。
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