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7 契約
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「力を……貸す?」
「うん、そうだよ」
困惑する俺に対してジェイドは首肯する。
「え、それは一体、どうやって…ですか?」
続けて疑問をぶつける俺にジェイドは返事の前に、椅子に戻り腰を下ろす。
「そうだなぁ、それを伝えるにはどうしても少し長くなるから君もそこに座ってくれるかな?」
ジェイドがパチンッと指を鳴らすと何もない場所に椅子が出現した。ジェイドの使用している椅子とは違い、ありきたりな形の純白の椅子だ。
促されるままに俺はその椅子に座る。それを見届けたジェイドはさて、と話を始める。
「実はね、君が死ぬ理由はまず寿命じゃないんだ」
「え? 寿命じゃないんですか?」
「うん、そう。君の死ぬ理由は寿命じゃなくてとある者の介入による死、なんだ」
「…え? どういうことですか?」
ジェイドの話す内容がさっぱり理解できない。寿命という確立された理由なら理解できる。だがジェイドは介入と言った。
(一体介入ってどういうことなんだ?)
「うん、予想通り理解できないと言った顔だね」
「そりゃ、そうですよ。意味がわかりません」
「うん、じゃあヒントをあげようか。まず介入の意味は分かるよね? あ、言葉としての意味だよ?」
「そっ、それくらいは分かりますよ! 何かしらが物事に干渉する、ということですよね?」
「その通りだ、じゃあ次だね。僕は君に寿命の死、ではなく介入による死であると伝えた。それはつまり?」
「………! 俺の生に誰かが介入した……って事ですね?」
「そうその通り! つまり君は、」
「誰かが俺の生に介入して死を早めた?」
「そういう事だね」
よくできました、と言わんばかりの顔でジェイドはパチパチと拍手をする。
「…因みにジェイドさんは既に心当たりがあるんですか?」
「もちろん」
さもそれが当然、というように答える。
「君に介入しているのはね、『魔神』だ」
「は……? 魔神、ですか?」
「そう、『魔神』。ソレが君の生に介入している」
魔神。字面からも見て分かる通り中々に凶悪な者であると理解する。俺が読む本や漫画にもそんな存在が出てきていた。
それがまさかよりにもよって自分に、しかも生に介入してくるなんていったい誰が思うのだろうか。
「何となく想像できますが……一応説明してもらってもいいですか?」
「そうだねぇ。説明って言っても大体君の知識にあるような解釈であってると思うよ。悪の化身、とか邪悪な神、とかね」
「やっぱり、そういう者なんですね」
「うん」
ジェイドは真剣な表情で頷く。
「そんな存在がどうして俺に?」
「ん~、それは君がはぐれ者だからだろうね」
「はぐれ者?」
(はぐれ、ってなんだ? まさかあれか、元の世界で不登校だったり引きこもりとかだったから、ぐらいしか思いつかないぞ?)
俺は1人であれこれジェイドの発した言葉を自分なりに理解しようとしていた。そんな俺にジェイドは気付いたのか、補足をする。
だがしかし、その補足は俺の精神的に打撃を与えることとなる。
「はぐれっていうのはね、召喚する際にイレギュラーを起こす原因になった者のことをいうんだ。あ、召喚っていうのは勿論君も理解してると思うけど異世界召喚のことだからね」
(なんとなくそんな気してたけどマジかよ!)
予想はついていたのでそこまで表に出ることはなかった。がやはりメンタルへのダメージは免れなかった。
「あ~、だからはぐれ者なんですね」
「そういうこと。だから君は一時的に召喚のルールから外れたわけだ。そしてそのタイミングで『魔神』が介入したってわけだ」
「なるほど…」
この説明によりようやく合点がいった。だが勝手に納得した俺をほっといてジェイドは話を続ける。
「それでね、ここからが重要なんだ。さっき僕は君にあと3日生きられるって言った。でもね、『魔神』の介入で訪れる本来の君の命日は今日だったんだ」
「………は?」
突然ジェイドはそんなことを口にした。
(え、今日? でも俺は死んでないぞ? まさか夜に死ぬってことなのか? いやでもジェイドは最初に3日後って言ってたな。ってことは俺はもう今日は死なないってことなのか?)
俺はジェイドの発言に対して必死に頭を働かせて理解に努める。ジェイドは今度も俺の様子をしってか知らずか説明を続ける。
「君はこの世界に初めて来た時魔物に遭遇した、そうだね?」
「は、はい、確かに魔物、というか狼に遭遇しました」
当時のことを思い出す。アレは本当に怖かった。殺されるかと本気で思ったくらいだ。
当時を思い返して身震いした俺をジェイドは一瞥すると再び話を続ける。
「本当はね、あの時に君は死ぬはずだったんだ」
「…え? え、そうなんですか!?」
「うん、あの時に本来はなすすべもなく運悪く遭遇したマーダーウルフに襲われて死ぬはずだった。でも君の遭遇した魔物はスタットウルフだった」
「??? え、っとつまり?」
「運命が捻じ曲がったということだよ」
ふむ、なるほど?つまりジェイドは本来起きるはずの事象が書き換わっていると言いたいのだろうか。ということは、
「俺が自力で自分の死を回避した、ということですか?」
「おお、その通りだよ! ん~ようやく君の理解力が追いついて来たようだね!」
再びジェイドはパチパチと拍手をする。俺はと言うと、どうにも素直に喜べないので苦笑を浮かべることにした。
「まぁ、ここまで言えば答えは出ていると思うけど。僕が君をここに呼んだのはね、」
俺は無意識のうちにゴクリと喉を鳴らした。
「君に死んでもらわない為にもチカラを授ける為だ」
「あ、力を貸すって言うのはそう言うことなんですね」
「うん、そう言うことだ。と言うわけで早速!」
ジェイドは徐に椅子から立ち上がると懐——どことは明言しないが——から光り輝くビー玉程の物体をいくつか取り出すと俺の正面に放った。
ビー玉は空間の床に触れると同時にそれぞれ一枚の紙に変化した。
「えっと、これは?」
おずおずと尋ねる。するとジェイドは気前よくこう言った。
「契約書だよ!」
「契約書?」
思わず聞き返す。だが内心コレがどういう契約書なのかは粗方予想がついていた。
「そう、これは僕がチカラを授ける為の契約書だ。君にはこれの中から二枚選んで僕と契約をしてもらう」
「おぉ、なるほどぉ!」
(やっぱりか! これはテンションあがるなぁ!)
ウキウキと感情が弾む。思わず小躍りしてしまいそうになるが流石に堪えた。
「まぁ、あまり長くは時間使えないけど、よく考えて後悔のないようにね。一度契約したら取り消せないから」
「わ、分かりました」
ジェイドの忠告を深く心に刻み込む。そして俺は契約書を全て拾い上げ順番に吟味して言った。
正直後のことなんてどこぞの主人公のようにそこまで深刻に考えられない俺は自分が1番気に入ったものを選ぶことにした。
一体どの位時間が経ったのだろうか。ジェイドをチラリと見てみると欠伸をしていてもう数分もあれば睡魔に負けてしまいそうな顔をしている。
ジェイドは俺の視線に気付いたのだろうか、俺に視線を合わせて、早くしろ、みたいな視線をぶつけて来た。
ここまで時間をかけたのは最後の一つに大いに悩んだからだ。だがそれも漸く決まった、いや、決められた。その場にスックと立ち上がりジェイドに歩み寄る。
「ん、漸く決まったかな?」
「ええ、すいません、こんなに時間をかけてしまって」
「いいや別に構わないよ。納得のいくものが決まったんだろう?」
「はい!」
「ん~、いい返事だ! それじゃ早速契約しようか。それで、どれを選んだのかな?」
ジェイドの問いに俺は胸を張って答えた。
「はい、俺が選んだのはですね——」
「うん、そうだよ」
困惑する俺に対してジェイドは首肯する。
「え、それは一体、どうやって…ですか?」
続けて疑問をぶつける俺にジェイドは返事の前に、椅子に戻り腰を下ろす。
「そうだなぁ、それを伝えるにはどうしても少し長くなるから君もそこに座ってくれるかな?」
ジェイドがパチンッと指を鳴らすと何もない場所に椅子が出現した。ジェイドの使用している椅子とは違い、ありきたりな形の純白の椅子だ。
促されるままに俺はその椅子に座る。それを見届けたジェイドはさて、と話を始める。
「実はね、君が死ぬ理由はまず寿命じゃないんだ」
「え? 寿命じゃないんですか?」
「うん、そう。君の死ぬ理由は寿命じゃなくてとある者の介入による死、なんだ」
「…え? どういうことですか?」
ジェイドの話す内容がさっぱり理解できない。寿命という確立された理由なら理解できる。だがジェイドは介入と言った。
(一体介入ってどういうことなんだ?)
「うん、予想通り理解できないと言った顔だね」
「そりゃ、そうですよ。意味がわかりません」
「うん、じゃあヒントをあげようか。まず介入の意味は分かるよね? あ、言葉としての意味だよ?」
「そっ、それくらいは分かりますよ! 何かしらが物事に干渉する、ということですよね?」
「その通りだ、じゃあ次だね。僕は君に寿命の死、ではなく介入による死であると伝えた。それはつまり?」
「………! 俺の生に誰かが介入した……って事ですね?」
「そうその通り! つまり君は、」
「誰かが俺の生に介入して死を早めた?」
「そういう事だね」
よくできました、と言わんばかりの顔でジェイドはパチパチと拍手をする。
「…因みにジェイドさんは既に心当たりがあるんですか?」
「もちろん」
さもそれが当然、というように答える。
「君に介入しているのはね、『魔神』だ」
「は……? 魔神、ですか?」
「そう、『魔神』。ソレが君の生に介入している」
魔神。字面からも見て分かる通り中々に凶悪な者であると理解する。俺が読む本や漫画にもそんな存在が出てきていた。
それがまさかよりにもよって自分に、しかも生に介入してくるなんていったい誰が思うのだろうか。
「何となく想像できますが……一応説明してもらってもいいですか?」
「そうだねぇ。説明って言っても大体君の知識にあるような解釈であってると思うよ。悪の化身、とか邪悪な神、とかね」
「やっぱり、そういう者なんですね」
「うん」
ジェイドは真剣な表情で頷く。
「そんな存在がどうして俺に?」
「ん~、それは君がはぐれ者だからだろうね」
「はぐれ者?」
(はぐれ、ってなんだ? まさかあれか、元の世界で不登校だったり引きこもりとかだったから、ぐらいしか思いつかないぞ?)
俺は1人であれこれジェイドの発した言葉を自分なりに理解しようとしていた。そんな俺にジェイドは気付いたのか、補足をする。
だがしかし、その補足は俺の精神的に打撃を与えることとなる。
「はぐれっていうのはね、召喚する際にイレギュラーを起こす原因になった者のことをいうんだ。あ、召喚っていうのは勿論君も理解してると思うけど異世界召喚のことだからね」
(なんとなくそんな気してたけどマジかよ!)
予想はついていたのでそこまで表に出ることはなかった。がやはりメンタルへのダメージは免れなかった。
「あ~、だからはぐれ者なんですね」
「そういうこと。だから君は一時的に召喚のルールから外れたわけだ。そしてそのタイミングで『魔神』が介入したってわけだ」
「なるほど…」
この説明によりようやく合点がいった。だが勝手に納得した俺をほっといてジェイドは話を続ける。
「それでね、ここからが重要なんだ。さっき僕は君にあと3日生きられるって言った。でもね、『魔神』の介入で訪れる本来の君の命日は今日だったんだ」
「………は?」
突然ジェイドはそんなことを口にした。
(え、今日? でも俺は死んでないぞ? まさか夜に死ぬってことなのか? いやでもジェイドは最初に3日後って言ってたな。ってことは俺はもう今日は死なないってことなのか?)
俺はジェイドの発言に対して必死に頭を働かせて理解に努める。ジェイドは今度も俺の様子をしってか知らずか説明を続ける。
「君はこの世界に初めて来た時魔物に遭遇した、そうだね?」
「は、はい、確かに魔物、というか狼に遭遇しました」
当時のことを思い出す。アレは本当に怖かった。殺されるかと本気で思ったくらいだ。
当時を思い返して身震いした俺をジェイドは一瞥すると再び話を続ける。
「本当はね、あの時に君は死ぬはずだったんだ」
「…え? え、そうなんですか!?」
「うん、あの時に本来はなすすべもなく運悪く遭遇したマーダーウルフに襲われて死ぬはずだった。でも君の遭遇した魔物はスタットウルフだった」
「??? え、っとつまり?」
「運命が捻じ曲がったということだよ」
ふむ、なるほど?つまりジェイドは本来起きるはずの事象が書き換わっていると言いたいのだろうか。ということは、
「俺が自力で自分の死を回避した、ということですか?」
「おお、その通りだよ! ん~ようやく君の理解力が追いついて来たようだね!」
再びジェイドはパチパチと拍手をする。俺はと言うと、どうにも素直に喜べないので苦笑を浮かべることにした。
「まぁ、ここまで言えば答えは出ていると思うけど。僕が君をここに呼んだのはね、」
俺は無意識のうちにゴクリと喉を鳴らした。
「君に死んでもらわない為にもチカラを授ける為だ」
「あ、力を貸すって言うのはそう言うことなんですね」
「うん、そう言うことだ。と言うわけで早速!」
ジェイドは徐に椅子から立ち上がると懐——どことは明言しないが——から光り輝くビー玉程の物体をいくつか取り出すと俺の正面に放った。
ビー玉は空間の床に触れると同時にそれぞれ一枚の紙に変化した。
「えっと、これは?」
おずおずと尋ねる。するとジェイドは気前よくこう言った。
「契約書だよ!」
「契約書?」
思わず聞き返す。だが内心コレがどういう契約書なのかは粗方予想がついていた。
「そう、これは僕がチカラを授ける為の契約書だ。君にはこれの中から二枚選んで僕と契約をしてもらう」
「おぉ、なるほどぉ!」
(やっぱりか! これはテンションあがるなぁ!)
ウキウキと感情が弾む。思わず小躍りしてしまいそうになるが流石に堪えた。
「まぁ、あまり長くは時間使えないけど、よく考えて後悔のないようにね。一度契約したら取り消せないから」
「わ、分かりました」
ジェイドの忠告を深く心に刻み込む。そして俺は契約書を全て拾い上げ順番に吟味して言った。
正直後のことなんてどこぞの主人公のようにそこまで深刻に考えられない俺は自分が1番気に入ったものを選ぶことにした。
一体どの位時間が経ったのだろうか。ジェイドをチラリと見てみると欠伸をしていてもう数分もあれば睡魔に負けてしまいそうな顔をしている。
ジェイドは俺の視線に気付いたのだろうか、俺に視線を合わせて、早くしろ、みたいな視線をぶつけて来た。
ここまで時間をかけたのは最後の一つに大いに悩んだからだ。だがそれも漸く決まった、いや、決められた。その場にスックと立ち上がりジェイドに歩み寄る。
「ん、漸く決まったかな?」
「ええ、すいません、こんなに時間をかけてしまって」
「いいや別に構わないよ。納得のいくものが決まったんだろう?」
「はい!」
「ん~、いい返事だ! それじゃ早速契約しようか。それで、どれを選んだのかな?」
ジェイドの問いに俺は胸を張って答えた。
「はい、俺が選んだのはですね——」
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