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感動の再会?

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 ──あー、もう視線がマジでヤバかったよほんと。

 俺の心は塩酸でもかけられたかのようにジワジワとあの視線に溶かされているようだった。

 「ハアアァァ……」

 思わず特大の溜め息が出てしまう。そんな俺を見て一緒に同行しているアリウスが一言漏らす。

 「そりゃあ大事な話してるときに居眠りすりゃあ誰だってあんな顔にもなるだろうよ」

 ──ごもっともで。

 正論を口にされて更に心の耐久度が減っていく。だが仕方ないだろう。俺だってあんなタイミングで居眠りしてれば自ずと拳が飛んでいくだろう。

 ──あ~あ、失敗したなぁ。

 これ以上くよくよしていてもしょうがないので話題を変える。

 「あー、そういえば次はギルドに登録するんだっけ?」
 「ああ、そうだ。今から『冒険者ギルド』に向かう」
 「それってどこに向かえばいいんだ?」
 「ふぅ、道中説明したろ?」

 と、言葉を一度切って再び話し始める。

 「今は中央の南側にいる。だからここから道沿いに西側に進めば住民地区があるから、そこまでいけば、後は簡単だ」
 「簡単って言うのは?」
 「まぁ、行けば分かるさ。何しろでけぇからな、すぐにこれだって分かる」

 ──建物の特徴がデカイだけって。

 情報すくなっ、と思う。でも何やら意味ありげにほくそ笑んでいるしそれほどデカいのだろう。どのくらい大きいのだろうか。

 ──アリウスの家よりは大きいんだろうなぁ。いや、もしかするとさっきの騎士団駐屯所よりも大きいのかも!

 勝手に想像が膨らんでくる。大きいのか、それとも小さいのか、とか考えてるうちに今から実物を見るのが楽しみになってきた。
 他にもあれやこれやと考えつつ先を行くアリウスの背中を追った。

 「ほれ、ここが住民地区だ。とは言ってもさっきも通ったんだけどな!」

 カカカと陽気に笑うアリウス。その傍らで俺は

 「んで、『冒険者ギルド』とやらはどこなんだ?」

 質問を投げ掛ける。

 「ああ、あれだあれ、見えるか?あのでけぇ建物だよ」
 「どれどれ。ってあれか!あれの事か!?」
 「そう、あれよあれ」

 視界に入ったそれは──建物こそまぁ多少大きいが騎士団駐屯所ほどでは無いにせよ、驚くのはそこではなかった。問題はその上にあるブツだった。俺は思わず叫ぶ。

 「何だあのバカデカい剣は!?」

 そう、ギルドの建物の上には人の身長を優に越える刃先が少しだけ反った片刃の大剣が突き立てられていた。
 隣ではアリウスが何か意味ありげに視線を送ってくる。

 ──なんだ?聞いてほしいのか?

 「アリウス、あれ、一体、なに?」

 その言葉を待ってましたと言わんばかりに素早く反応する。

 「あれな、俺がやったのよ。こう、ズブッっと、な!」

 ──マジかよ。なんだこいつは超人か?

 と、ここで俺の中の記憶のピースがカチッと音をたててハマった。

 「もしかして、洞窟であの、ゴブリンだっけ?を倒したのって」
 「ハハッ!今さらだなおい、そうそう俺よオ、レ!」

 ──マジか。全然見えねぇ。ってそれより!

 「あの時はホントにありがとう」
 「なんだよ急に!良いんだよ、だって俺達もう家族だろ?」
 「いや、あの時はそんな関係じゃなかったし、あんたがいなかったら俺達とっくに死んでただろうし。」
 「律儀だなぁ、おい!」

 と心の底から嬉しがるようにそういった。

 ──あれ?

 「そう言えば、俺以外の人達ってどうなったんだ?」

 唐突に出た疑問にアリウスが答える。

 「ああ、皆無事に助かったよ。まぁ助けたのは俺だけどな!」
 「まぁそうだよな。でも良かった、皆助かって。……ん?そう言えばアリウスはなんであそこに来れたんだ?」
 「ああ、丁度その洞窟のゴブリン討伐のクエストを受けていてな。俺が侵入したときには既に戦ってる音が聞こえてたからな、道を探すのも面倒くさいから壁を突き破って音のする方向に向かったらお前達が居たって訳だ」
 「なるほどなぁ」

 ──と言うことはアリウスがクエストをしていなかったら俺達全員アウトだったってことか。

 ゾクンと寒気を感じて身震いをする。俺達の中には実際に死に直面していたものも少なくなかった。今さら気付いた自分の死を認識したことで、今こうして生きていられることに少なからず幸福を感じた。

 「アリウス、ホントにありがとな。まさか命の恩人だったとは」
 「だーからもう良いって言ってるだろ?」

 はにかみながら諭すようにそう言ってくる。また思わず涙が溢れそうになったが、グッと何とか我慢した。

 「まぁ、立ち話もなんだしさっさと入ろうぜ」

 と、アリウスが建物へと歩き出す。俺はそれについていった。

 ギルドの扉を開けるとまず賑やかな喧騒が聞こえてくる。耳を澄まして注意深く聞き取ると、ターゲットが強かった、とか報酬がどうのという内容のものだった。
 それらをBGMがわりとして施設内を進んでいく。歩みを進める度に聞こえていた喧騒がウェーブのように静まっていく。
 その事に比例して原因がわからずドクドクと心臓が激しく脈をうち始める。
 そんな静寂を破ったのは、聞き覚えのある声だった。

 「おーい!」

声のする方へと顔を向ける。すると人を掻き分けるようにして俺の前へと出てきた人物がいた。俺はこの人は知っているがこの人の名前は知らなかった。

 「?え、えーと…」
 「ダールだ、覚えているか?」

 ──ああ!

 「ああ、ダールさんですか!無事だったんですね!」
 「ああ、なんとかな。あの剣士─お前の後ろにいる人のお陰だ。因みに他の者もいるぞ」

 とダールが声を出した途端─ダールの掻き分けて作った道からまた一人、今度は女性が出てきた。

 「君は─」
 「ご無事でしたか!?」

 食いぎみに女性の身の安否を訪ねられた。

 「ああ、何とか大丈夫で─」
 「ああ、良かった!もう三日も意識が戻らなかったそうですよ!?」
 「え?そうなんですか?」

 ──ビックリだ。まさか三日も意識がなかったなんて。

 「ええ、そうですよ!命の恩人である貴方が死んでしまったらどうしようかと、ホントに心配したんですよ!」
 「それは、ご心配かけて申し訳ありま─」
 「あ、いえ!頭をどうかお上げください!お礼を言わねばいけないのはこちらなのですから!」

 ──この人は食いぎみに話を進めないと気が済まない性癖でもあるんだろうか。

 「そう言えば、貴方のお名前は?」
 「あ、ごめんなさい名乗りもせずに!私はリース・カレンツェと申します!この度は本当にありがとうございました!」
 「いや、俺ではなく俺の後ろの方にお礼は言うべきなんじゃ─」
 「いいえ!皆を助けて下さったのはこの方、ですがのは、……え~と」
 と言葉を濁しチラチラと俯きつつこちらに視線を送ってくる。

 「ああ、俺の名前は慎一です」
 「シンイチさんが助けてくれたのですから!」
 「え、いやぁ、ハハハ、た、偶々ですよ」
 「偶々でも何でも命の恩人はシンイチさんです!」

 その淡いサファイアのような色の瞳でこちらを力強く見つめてくる。

 ──うおお、眩しいぃ!

 「コホンッ、いや、助けられてホッとしましたよ。それでは、俺は用事があるのでこれで─」
 「私もお供します!」
 「ええ!?」

 ──ちょ、マジか!

 アリウスが背後で声を抑えて笑っている。

──このやろう。

 こいつは後で殴る!だが問題は正面にいる女性─リースをどうにかすることだ。

 ──でもどうにもできそうにないんだけど。

 と、そこで後ろで笑っていたアリウスからこの状況を打開するであろう一言が飛んできた!

 「よし、リースちゃん、君も一緒にきな!」
 「はい!」

 ──即答かよ!というかこんにゃろなにしてくれとんじゃ!

 恨みがましい視線をアリウスにぶつける。だがアリウスはものともせず、

 「じゃあリースちゃんシンイチ連れてこっち来てね」
 「はい!」

 その瞬間俺は腕を捕まれ──

 グゥン!
 ──!?力つええ!何なのこの人!

 抗えないほど強烈な力でもって連れていかれる。その際腕を抱き込むように掴んできたので自然と──

 ムニュ

 という感覚を感じたわけで──
 その瞬間俺の体は石と化した。硬直した体がリースによって引きずるように連れていかれる。その際アリウスが笑っているのを目撃したが、俺の頭はそんなことを考えるよりも先程の感触を未来永劫忘れない為に記憶の再現が延々とリピートされていた。そしてついでに視界に入ったダールが居心地の悪さを噛み締めるように長々と味わってひどく疲れたような顔をしていたのは言うまでもないだろう。
 
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