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クレプトマニア
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中学2年生のAは元々、犯罪に対する忌避感が低い人間だった。Aには様々な精神疾患とも云える欲求や衝動があった。窃盗衝動、異常な性衝動。日に日に、年々増していくその衝動はいつ爆発してもおかしくなかった。寧ろ、今まで我慢していたことの方が驚きとも云える程の激しい衝動だった。しかし、ついにAの衝動は爆発した。
それは夏の朝だった。Aは所属している部活動の朝練習に出るために一旦教室に行き、教科書などが入っているカバンを自分の机に置いていた。どの部活動も、どの生徒も朝練習前に教室に荷物を置きに来る。だからA以外にも教室に居ることがある。しかし、その日はA1人だった。Aは「プライバシーを守るために学校の教室には防犯カメラを設置しない」と聞いたことがあった。自分しか教室に居ない今、何をしても誰にも見つかることはない。Aはそう思った。その瞬間、教室の窓側に置かれている荷物が掛けられている台に視線が向いた。
その台には水泳の授業で使う水着が掛けられていた。男子のもかけてあるが、当然女子のも掛けてあった。Aは異常性癖を持った人間だった。だから、女子の私物を盗んでみたいという衝動を抱えていた。特に、下着や水着など直接肌に当たる物を盗みたい衝動が強かった。そんなAにとって、今の状況は行動に移す絶好の機会だった。
衝動を抑えられなくなったAは周囲を見渡す。廊下から誰か来ていないか。向かいの棟に人が居ないか。見落としていたら大変なことになるので入念に確認する。そして、誰も居ないことを確認した。Aは手早く1番盗りやすい位置にあった水着を入れるためのバッグに手を入れ、下の方にしまわれた水着を取り出した。Aの通う中学校の女子用のスクール水着は上下が分かれている。しっかりと両方盗ったことを確認すると自分のバッグの中から袋を取りだしその中にしまう。そして朝練習に行く前に近くのトイレに入った。女子トイレに入りたい願望もあったが、当然見つかるリスクが高いので男子トイレの方だ。そこでAは男子トイレ内の掃除用具が入れられているロッカーを開ける。乱雑に入れられた掃除用具の奥、知っていなければ見つからない場所にAはスクール水着が入った袋を隠す。異常な冷静さを持つAは女子の水着が無くなり騒ぎになった時のことを考えて誰でも隠しうる、尚且つ見つかりづらい場所を隠し場所に選んだ。
Aはいつもと変わらない様子でその日を過ごした。少しでも普段と様子が異なれば怪しまれると理解しているからだ。
その日の帰りのショートホームルームで担任の先生がとある女子の水着が無くなったことを話した。その女子はAの席の右斜め前に座っている子だった。間違いなくAが盗ったのが原因だ。しかし、その子はAの幼稚園の頃からの幼馴染みだった。誰の水着か確認することも無く隠したので、この瞬間までAは誰の水着を盗ったのか分かっていなかった。日頃からそれなりに話す子の水着だったことにAは驚いたが、案外悪くないと思った。
ショートルームホームは終わり、Aは何事もないかの様に友人と少し話してから放課後の部活動に行った。そのAの様子は普段通りそのもので疑う人は居なかった。
部活動を終えたAはひっそりと水着を隠した男子トイレに行き回収した。そしてバッグに詰め何食わぬ顔で帰宅した。Aが思っていた以上に簡単に実行、完遂してしまった。Aはその日1日、誰かに気付かれるのではないかという不安と、下校時間が徐々に近づいてくる毎に高揚感や開放感を感じていた。そして、自室に入った瞬間、今までに感じたことが無い爽快感と達成感を感じていた。その感覚はAを魅了していた。
翌年、中学3年生に上がったAは昨年と同じ時期の日曜日に中学校の校舎内に侵入していた。彼は部活動を既に引退していたが、自分たちが使っていた部室の一部の窓が完全に閉まりきらずに開いている状態になっていることを把握していたAは、それを利用して施錠されていた校内に侵入した。その目的は、再びあのスリルを味わうためだ。彼は自分のクラスの低い位置にある窓から教室内に侵入した。そこがいつも鍵を閉められていないことも把握していた。そして、私物を入れられるロッカーから女子の水着が入っているバッグを取り出し、水着を盗った。今回もまた水着の持ち主は確認しなかった。無くなった事が発覚した時に自分も誰のが無くなったのか知りたかったからだ。
Aはバッグの元に戻し、誰にも見つかること無く速やかに敷地から抜け出した。普段友人と話す時は少し天然で変わり者のAだが、こういった場面では非常に冷静な行動をする。
翌日の昼休み、Aは友人と暇を潰していた。5時限目は水泳の授業なので誰の水着だったのか分かる時間だ。そうして誰なのか緊張しながら時間を待っていると、3つ隣の席の子が仲の良い女子と3人でトイレに向かった。手にはバッグを持っており、予め着替えておく様だ。
3人が戻ってくると、1人困った様子だった。その子はうちの学級委員長だった。どうやらAが盗った水着はその子も物だった様だ。誰の物か判明したAは家に帰って改めて物を確認するのが楽しみになった。
運が良いことにAは2回とも誰にも気付かれなかった。しかし、高校に入りリスクが更に高くなったため堪える様になった。しかし、機会があればいつまた爆発してもおかしくない。元々歪んだ人間は治る事はないだろう。そういう性格、性質として存在してしまっているのだから。
それは夏の朝だった。Aは所属している部活動の朝練習に出るために一旦教室に行き、教科書などが入っているカバンを自分の机に置いていた。どの部活動も、どの生徒も朝練習前に教室に荷物を置きに来る。だからA以外にも教室に居ることがある。しかし、その日はA1人だった。Aは「プライバシーを守るために学校の教室には防犯カメラを設置しない」と聞いたことがあった。自分しか教室に居ない今、何をしても誰にも見つかることはない。Aはそう思った。その瞬間、教室の窓側に置かれている荷物が掛けられている台に視線が向いた。
その台には水泳の授業で使う水着が掛けられていた。男子のもかけてあるが、当然女子のも掛けてあった。Aは異常性癖を持った人間だった。だから、女子の私物を盗んでみたいという衝動を抱えていた。特に、下着や水着など直接肌に当たる物を盗みたい衝動が強かった。そんなAにとって、今の状況は行動に移す絶好の機会だった。
衝動を抑えられなくなったAは周囲を見渡す。廊下から誰か来ていないか。向かいの棟に人が居ないか。見落としていたら大変なことになるので入念に確認する。そして、誰も居ないことを確認した。Aは手早く1番盗りやすい位置にあった水着を入れるためのバッグに手を入れ、下の方にしまわれた水着を取り出した。Aの通う中学校の女子用のスクール水着は上下が分かれている。しっかりと両方盗ったことを確認すると自分のバッグの中から袋を取りだしその中にしまう。そして朝練習に行く前に近くのトイレに入った。女子トイレに入りたい願望もあったが、当然見つかるリスクが高いので男子トイレの方だ。そこでAは男子トイレ内の掃除用具が入れられているロッカーを開ける。乱雑に入れられた掃除用具の奥、知っていなければ見つからない場所にAはスクール水着が入った袋を隠す。異常な冷静さを持つAは女子の水着が無くなり騒ぎになった時のことを考えて誰でも隠しうる、尚且つ見つかりづらい場所を隠し場所に選んだ。
Aはいつもと変わらない様子でその日を過ごした。少しでも普段と様子が異なれば怪しまれると理解しているからだ。
その日の帰りのショートホームルームで担任の先生がとある女子の水着が無くなったことを話した。その女子はAの席の右斜め前に座っている子だった。間違いなくAが盗ったのが原因だ。しかし、その子はAの幼稚園の頃からの幼馴染みだった。誰の水着か確認することも無く隠したので、この瞬間までAは誰の水着を盗ったのか分かっていなかった。日頃からそれなりに話す子の水着だったことにAは驚いたが、案外悪くないと思った。
ショートルームホームは終わり、Aは何事もないかの様に友人と少し話してから放課後の部活動に行った。そのAの様子は普段通りそのもので疑う人は居なかった。
部活動を終えたAはひっそりと水着を隠した男子トイレに行き回収した。そしてバッグに詰め何食わぬ顔で帰宅した。Aが思っていた以上に簡単に実行、完遂してしまった。Aはその日1日、誰かに気付かれるのではないかという不安と、下校時間が徐々に近づいてくる毎に高揚感や開放感を感じていた。そして、自室に入った瞬間、今までに感じたことが無い爽快感と達成感を感じていた。その感覚はAを魅了していた。
翌年、中学3年生に上がったAは昨年と同じ時期の日曜日に中学校の校舎内に侵入していた。彼は部活動を既に引退していたが、自分たちが使っていた部室の一部の窓が完全に閉まりきらずに開いている状態になっていることを把握していたAは、それを利用して施錠されていた校内に侵入した。その目的は、再びあのスリルを味わうためだ。彼は自分のクラスの低い位置にある窓から教室内に侵入した。そこがいつも鍵を閉められていないことも把握していた。そして、私物を入れられるロッカーから女子の水着が入っているバッグを取り出し、水着を盗った。今回もまた水着の持ち主は確認しなかった。無くなった事が発覚した時に自分も誰のが無くなったのか知りたかったからだ。
Aはバッグの元に戻し、誰にも見つかること無く速やかに敷地から抜け出した。普段友人と話す時は少し天然で変わり者のAだが、こういった場面では非常に冷静な行動をする。
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3人が戻ってくると、1人困った様子だった。その子はうちの学級委員長だった。どうやらAが盗った水着はその子も物だった様だ。誰の物か判明したAは家に帰って改めて物を確認するのが楽しみになった。
運が良いことにAは2回とも誰にも気付かれなかった。しかし、高校に入りリスクが更に高くなったため堪える様になった。しかし、機会があればいつまた爆発してもおかしくない。元々歪んだ人間は治る事はないだろう。そういう性格、性質として存在してしまっているのだから。
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