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その壱.幼少期編
【燕の雛 ③】
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餌付けを怠ったのか、怪我をしていたのか?
それとも寿命だったのか?原因は謎のままだったが
私はその小さな亡骸を見た瞬間涙が溢れた。
一晩中、餌をあげた記憶と
微かな鳴き声を上げつぶらな瞳で私を見ていた、
そんな燕の雛の変わり果てた姿。
しかし私はMさんを問い詰めたり
咎める気持ちになれなかった。
その小さな命が失われた重みを
誰よりも理解していたのだろう、
いつも元気なMさんが憔悴しきった表情で
彼女の母親にしがみついて泣きじゃくる姿を見て
誰が責任を追及出来るだろうか。
Mさんのお母さんは私にこんな話をしてくれた、
― 夜になって急に雛の様子が弱々しくなり
餌を全く食べなくなった
Mは◯◯君(私の名)が頑張って世話してくれたのに
死なせるのはイヤだとずっと看病をしていたのだが
願いも空しく深夜にその小さな命の灯火は
消えてしまったのだと。
もしかしたら2日目に私が預かっていたら
同じ結果になっていたかも知れないし
そうではなかったのかも知れない。
「短い時間だったけど共に過ごせたことを
この雛が幸せに思ってくれたのなら
それでよかったと思うことにしましょう」
そう担任に諭されて私たちは遠足へ出発した。
遠足から帰ってから私とMさんとで
お墓を作って懇ろに弔った
これまでよく口喧嘩をしていたMさんが
人が変わったように優しくなり
この日以降、男勝りで快活だったMさんは
しおらしい穏やかな女子へと変貌していった。
ひとつの別れが一人の人間を変える、
そんな現実を目の当たりにすることになった。
私はと言えばこれまで以上に動物への愛着が増して
犬を飼いたい、猫を飼いたいと親にせがみ
家族全員の猫アレルギーを理由に
一匹の犬を家族として迎え入れた。
今でも春になって燕の飛ぶ季節が来ると
あの時の雛鳥のことを思い出す
また何かの形で生まれ変わって
私と出会う日が来るのだろうか、
いや、もう既に現れているのでは?などと。
それとも寿命だったのか?原因は謎のままだったが
私はその小さな亡骸を見た瞬間涙が溢れた。
一晩中、餌をあげた記憶と
微かな鳴き声を上げつぶらな瞳で私を見ていた、
そんな燕の雛の変わり果てた姿。
しかし私はMさんを問い詰めたり
咎める気持ちになれなかった。
その小さな命が失われた重みを
誰よりも理解していたのだろう、
いつも元気なMさんが憔悴しきった表情で
彼女の母親にしがみついて泣きじゃくる姿を見て
誰が責任を追及出来るだろうか。
Mさんのお母さんは私にこんな話をしてくれた、
― 夜になって急に雛の様子が弱々しくなり
餌を全く食べなくなった
Mは◯◯君(私の名)が頑張って世話してくれたのに
死なせるのはイヤだとずっと看病をしていたのだが
願いも空しく深夜にその小さな命の灯火は
消えてしまったのだと。
もしかしたら2日目に私が預かっていたら
同じ結果になっていたかも知れないし
そうではなかったのかも知れない。
「短い時間だったけど共に過ごせたことを
この雛が幸せに思ってくれたのなら
それでよかったと思うことにしましょう」
そう担任に諭されて私たちは遠足へ出発した。
遠足から帰ってから私とMさんとで
お墓を作って懇ろに弔った
これまでよく口喧嘩をしていたMさんが
人が変わったように優しくなり
この日以降、男勝りで快活だったMさんは
しおらしい穏やかな女子へと変貌していった。
ひとつの別れが一人の人間を変える、
そんな現実を目の当たりにすることになった。
私はと言えばこれまで以上に動物への愛着が増して
犬を飼いたい、猫を飼いたいと親にせがみ
家族全員の猫アレルギーを理由に
一匹の犬を家族として迎え入れた。
今でも春になって燕の飛ぶ季節が来ると
あの時の雛鳥のことを思い出す
また何かの形で生まれ変わって
私と出会う日が来るのだろうか、
いや、もう既に現れているのでは?などと。
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