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最終章. Re:Incarnation
【戻れない二人】
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加害者は不特定多数、"その他大勢の部外者たち"だ!
行き場のない怒りに涙が止まらない。
悲しくて、ではなく、腹立たしくて
涙が出たのは生まれて初めてだった。
俺はもっと詳しくこのニュースについて
確認してみようと
スマホの電源を入れ、画面が明るくなるのを待った。
ニュースのサイトを開こうとした
その時、ある通知が目に入った。
ー セリナさんがあなたのコメントに返信しました
矢も盾もたまらず
俺はセリナのSNSを確認した
ー ありがとう…さよなら ー
レイナ…何だよ、返信くれてたのかよ?
何だよ、「さよなら」って…
何で、何で、突然逝ってしまったんだよ?
ふと返信をくれた時間が目に入った
ー7時間前ー
遡るとちょうどレイナが
窓から飛び降りたであろうと推測される時間と一致する。
レイナは最期に俺宛の返信を送って
この世に別れを告げたのか?
こんなことになるなら何であの日突然、
アドレスも消去して俺の前からいなくなったんだよ?
俺はふとあの日レイナがテレビで話していた
言葉を思い出した。
ーホントは大好きだったんですけど…
このまま彼の居心地の良さに甘えてしまったら
夢を諦めてしまうんじゃないかと
レイナ…もう戻れないよな
あの頃、あんな狭い部屋じゃなくて
もっと広いところで愛し合って
分かり合えていたなら
こんなことにはならなかったのかな?
自惚れかも知れないが
自責の念に押し潰されそうだった。
レイナがこの世を去って4年が過ぎた、
俺は30代半ば、いわゆるアラフォーへの階段に
一歩足を掛け
娘は幼稚園に通い始め妻は二人目を出産した。
慌ただしい日常の中で少しずつ
レイナの記憶も薄れ始めていたが
なかなか過去を風化することは出来ない。
関わりがあったから致し方ないわけだが
やはり俺はもうこの世にいないはずの
彼女の"影"に追われる身でもあった。
そして季節はレイナと出会ってから
8年が過ぎた2月の寒い日のこと、
珍しく午前中で終わった仕事の帰りに
車を走らせていると
懐かしい景色が目に飛び込んできた。
そこは生前レイナが働いていた
Girl's Streetがあった通りの前
建物自体は昔のままだが
店名は変わっているようであの頃の名残はない。
「Re:Incarnation」なる看板、やはり風俗店のようだ。
ふと郷愁の思いにかられ
その駐車場にウィンカーを出した。
そこでふと思い出したように
昔レイナから届いたメールを開いてみる…
当時、何度もやり取りをしていたのだろう、
何回も何回も件名に「Re:」が重ねられていた。
停車してしばらくすると
黒服の男性が駆け寄ってきてこう尋ねた。
「当店ご利用のお客様ですか?」
「あ…そう言うわけじゃ…」
「せっかくなのでどうですか?かわいい女の子いますよ」
俺は車を降りると言われるがままに
お店へと入った。
「いらっしゃいませ!」
そしてすっかり雰囲気が変わってしまった店内で
受付の男性と話していた。
「お客様、当店は初めてで?」
「そうっすね、前のお店の頃はよく来てたけど」
「あ、Girl's Street…ですね?そうなんですか?」
「もう…7、8年前かな?」
「そうですか、ではお客様ご指名はございますか?」
「いや、わかんないからお任せでいいですよ」
「それじゃフリーの女の子で…指名料はいただきませんので」
ー何だかあの頃のことを思い出すな…
数年前の高揚感に似た感情が
ほんの少しだけ押し寄せてきた。
行き場のない怒りに涙が止まらない。
悲しくて、ではなく、腹立たしくて
涙が出たのは生まれて初めてだった。
俺はもっと詳しくこのニュースについて
確認してみようと
スマホの電源を入れ、画面が明るくなるのを待った。
ニュースのサイトを開こうとした
その時、ある通知が目に入った。
ー セリナさんがあなたのコメントに返信しました
矢も盾もたまらず
俺はセリナのSNSを確認した
ー ありがとう…さよなら ー
レイナ…何だよ、返信くれてたのかよ?
何だよ、「さよなら」って…
何で、何で、突然逝ってしまったんだよ?
ふと返信をくれた時間が目に入った
ー7時間前ー
遡るとちょうどレイナが
窓から飛び降りたであろうと推測される時間と一致する。
レイナは最期に俺宛の返信を送って
この世に別れを告げたのか?
こんなことになるなら何であの日突然、
アドレスも消去して俺の前からいなくなったんだよ?
俺はふとあの日レイナがテレビで話していた
言葉を思い出した。
ーホントは大好きだったんですけど…
このまま彼の居心地の良さに甘えてしまったら
夢を諦めてしまうんじゃないかと
レイナ…もう戻れないよな
あの頃、あんな狭い部屋じゃなくて
もっと広いところで愛し合って
分かり合えていたなら
こんなことにはならなかったのかな?
自惚れかも知れないが
自責の念に押し潰されそうだった。
レイナがこの世を去って4年が過ぎた、
俺は30代半ば、いわゆるアラフォーへの階段に
一歩足を掛け
娘は幼稚園に通い始め妻は二人目を出産した。
慌ただしい日常の中で少しずつ
レイナの記憶も薄れ始めていたが
なかなか過去を風化することは出来ない。
関わりがあったから致し方ないわけだが
やはり俺はもうこの世にいないはずの
彼女の"影"に追われる身でもあった。
そして季節はレイナと出会ってから
8年が過ぎた2月の寒い日のこと、
珍しく午前中で終わった仕事の帰りに
車を走らせていると
懐かしい景色が目に飛び込んできた。
そこは生前レイナが働いていた
Girl's Streetがあった通りの前
建物自体は昔のままだが
店名は変わっているようであの頃の名残はない。
「Re:Incarnation」なる看板、やはり風俗店のようだ。
ふと郷愁の思いにかられ
その駐車場にウィンカーを出した。
そこでふと思い出したように
昔レイナから届いたメールを開いてみる…
当時、何度もやり取りをしていたのだろう、
何回も何回も件名に「Re:」が重ねられていた。
停車してしばらくすると
黒服の男性が駆け寄ってきてこう尋ねた。
「当店ご利用のお客様ですか?」
「あ…そう言うわけじゃ…」
「せっかくなのでどうですか?かわいい女の子いますよ」
俺は車を降りると言われるがままに
お店へと入った。
「いらっしゃいませ!」
そしてすっかり雰囲気が変わってしまった店内で
受付の男性と話していた。
「お客様、当店は初めてで?」
「そうっすね、前のお店の頃はよく来てたけど」
「あ、Girl's Street…ですね?そうなんですか?」
「もう…7、8年前かな?」
「そうですか、ではお客様ご指名はございますか?」
「いや、わかんないからお任せでいいですよ」
「それじゃフリーの女の子で…指名料はいただきませんので」
ー何だかあの頃のことを思い出すな…
数年前の高揚感に似た感情が
ほんの少しだけ押し寄せてきた。
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