120 / 129
第25章. 陽の当たる坂道で
【ラストシーン…?】
しおりを挟む「え、何?どうしたの舞?」
「狙ってたでしょ?このシチュエーション」
「この曲聴くと思い出すんだよね」
「いつもここで待ち合わせしてたよね、今日みたいに」
「"今日みたいに"って…?俺は舞が来るなんて知らなかった…え…?」
「だって…ふふっ、内緒にしてたんだもーん」
「もしかして…昨日の有香からの電話の時…舞も隣に?」
「ふふふ、サプライズ成功ー!」
「電話、代わってくれてたらこんなにビックリしなかったのにな」
「サプライズなんだもん!ビックリしてもらわなきゃね、それと1年半ぶりの再会なんだから」
「ははは、でもこれで悔いなく地元に帰れるよ」
僕たちは慣れ親しんだ諏訪荘の前で
時間を忘れて話し続けていた
そう、それはまるであの日からの空白を
互いに埋め合わせるかのように。
「それじゃそろそろ帰らなきゃ…電車の時間もあるし」
「うん、またね!コウイチくん」
「再見、舞」
「え?それ何語?」
「中国の挨拶だよ」
「あれ?コウイチくんて中国語、選択してたっけ?」
「いや、ドイツ語だったね」
「じゃ何で?ふふふ」
「再見てさ『また会いましょう』て意味を込めた別れの挨拶だって聞いたことあって」
「あ、だから…ね」
「色々考えて、だね」
「そっかぁ、コウイチくん…またね!」
そう言うと舞は僕の胸に飛び込んできた
あの頃と同じ香りが僕を包んだ。
抱きしめて…いいのだろうか?
こんな儚い約束しか出来ない僕が舞のことを…
「コウイチくん…」
「え?」
「ギュッてしてよ、あの頃みたいに」
「え?いいの?」
「・・・早く」
僕は恐る恐る舞の背中に手を回して
その小さな肩をそっと抱きしめた。
あの頃のままだ…
あの頃と寸分変わらぬ舞の身体の温もり、髪の香り
それはまるで今日まで時を止めていたかのように
不変だった。
「あったかーい」
「あの時もこうやって離さなかったら…」
「ダメだよそんなこと言ったら、今日会えただけで、わたしはしあわせ…」
「舞…ごめんな」
別れの時間が少しずつ近づいていた。
「じゃ、今度こそ帰るね…」
「うん」
「それじゃ…」
舞に背中を見送られながら諏訪荘を後にした
ふと振り返るともうそこに舞の姿はなかった。
「案外、あっさりしたもんだな」
あんなに再会を喜んでくれてたけど別れの時は意外と
あっさりしたもんだったな…
いや舞のことだ、僕の心情を察して
あまり別れを惜しんだりしたら
後々まで引きずってしまうことを
危惧したのかも知れない、
だからこんな感じが一番いいんだ。
舞との思い出に浸りながら歩くこと10分
この駅で電車に乗るのもこれで最後
「さて、帰るかぁ」
と、小さな駅の入り口に
見覚えのある自転車が停まっていた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
ねえ、私の本性を暴いてよ♡ オナニークラブで働く女子大生
花野りら
恋愛
オナニークラブとは、個室で男性客のオナニーを見てあげたり手コキする風俗店のひとつ。
女子大生がエッチなアルバイトをしているという背徳感!
イケナイことをしている羞恥プレイからの過激なセックスシーンは必読♡
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる