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第24章. こいのうた
【手紙】
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生誕祭前日、僕は舞への贈り物を探していた。
やはり舞がせっかく手書きで書いてくれた
連絡先を処分してしまったことが気にかかっていて
その埋め合わせを自分の中ですることで
罪悪感を消そうとしていた。
「そうだ!それならいっそのこと…」
こんな時期にはあるかどうかわからないが
新しいスケジュール帳をプレゼントしよう、
そして僕も新しいのを買ってお揃いにして
そこにまた舞から連絡先を本人に書いてもらおう
その時に以前のアドレスを処分したことを伝えて
舞に謝ることで
あのアドレス帳を見るたびに感じる
重たい気持ちが払拭できるだろう。
「うん、我ながらグッドアイデアだな」
下半期から半年分、と言うスケジュール帳を見つけて
僕は舞の分と自分用に色違いの物を購入した。
これを生誕祭の時にジョッキーで渡そう、
こうして僕は自分の中に芽生え始めていた
あの日の舞への不安を自己解決させた。
それがまさか、当日プレゼントを
舞に渡すことが出来ないなどと
誰が予測しただろうか?
舞衣が泥酔してしまったことで
僕の中で描いていた青写真は全て水泡と化した。
結局舞と話せないまま
プレゼントも渡せないまま迎えた
そして不意に訪れた舞衣との終焉の時…
講義が終わり帰った部屋に
ぽつんと寂しげに置かれた所在なさげな手紙は
最後まで読まなくとも
何が書かれているのかはある程度予測はついた。
僕は放心状態のままその一行目から最後まで読み終えた…
その瞬間、全身から力が抜け
目の前が滲んで何も見えなくなった。
その手紙はこのような文面で始まっていた。
ー コウイチくんへ
コウイチくん、
もうわたしのことは忘れてください
誕生日をお祝いしてもらう日に
あんなひどい姿を見せてしまって
わたしはホントにバカな女です。
実は仲良くなってからも
ずっと感じてたことがあったの
わたしと一緒にいること、重荷じゃないかな?って
だってコウイチくんはバンドマンだし
彼女とかいない方が人気も出るだろうし
わたしといることで先に進めないんじゃ?って
心のどこかで思ってたのかも知れない
無理してるのかな、って。
でも一緒にいる時間は楽しくて
この時間がずっと続けばいいなって思ってた
だけどコウイチくんのこれからのこと考えたら
わたしが隣にいていいのかな?
もっともっと前みたいに自由に歩いていく方が
きっとコウイチくんらしくいられるんじゃないかな?
そう考えるようになってしまって
色々悩んだ結果、
コウイチくんから去る決心をしました
でもね、いざそれを伝えようとしたら
色んなこと思い出して涙が止まらなくて
きっとコウイチくんに直接伝えに行ったら
絶対に決心が鈍っちゃうと思って
手紙を書くことにしました。
これまでありがとう、そしてごめんね
わたしは…
コウイチくんの人生の一部になれたかな?
少しでも意味のある存在でいられたかな?
ほんの少しでもそう思ってもらえたら
わたしはそれだけで幸せです。
これまで楽しい時間をありがとう
きっときっと幸せになってね
音楽もがんばって続けてね
わたしもいつかどこかで
コウイチくんの曲を聴ける日が来るのを
楽しみにしてるね
その時は自慢してやるんだ
「わたしの大好きな人なんだよ、すごいでしょ」ってね
それでは風邪なんかひかないようにね
もし体調崩したらわたしが注射してあげるからね
どこにいてもわたしは
コウイチくんのことを思い出せる
わたしの大好きな人です。
さようなら、そしてありがとう。
北浜 舞
やはり舞がせっかく手書きで書いてくれた
連絡先を処分してしまったことが気にかかっていて
その埋め合わせを自分の中ですることで
罪悪感を消そうとしていた。
「そうだ!それならいっそのこと…」
こんな時期にはあるかどうかわからないが
新しいスケジュール帳をプレゼントしよう、
そして僕も新しいのを買ってお揃いにして
そこにまた舞から連絡先を本人に書いてもらおう
その時に以前のアドレスを処分したことを伝えて
舞に謝ることで
あのアドレス帳を見るたびに感じる
重たい気持ちが払拭できるだろう。
「うん、我ながらグッドアイデアだな」
下半期から半年分、と言うスケジュール帳を見つけて
僕は舞の分と自分用に色違いの物を購入した。
これを生誕祭の時にジョッキーで渡そう、
こうして僕は自分の中に芽生え始めていた
あの日の舞への不安を自己解決させた。
それがまさか、当日プレゼントを
舞に渡すことが出来ないなどと
誰が予測しただろうか?
舞衣が泥酔してしまったことで
僕の中で描いていた青写真は全て水泡と化した。
結局舞と話せないまま
プレゼントも渡せないまま迎えた
そして不意に訪れた舞衣との終焉の時…
講義が終わり帰った部屋に
ぽつんと寂しげに置かれた所在なさげな手紙は
最後まで読まなくとも
何が書かれているのかはある程度予測はついた。
僕は放心状態のままその一行目から最後まで読み終えた…
その瞬間、全身から力が抜け
目の前が滲んで何も見えなくなった。
その手紙はこのような文面で始まっていた。
ー コウイチくんへ
コウイチくん、
もうわたしのことは忘れてください
誕生日をお祝いしてもらう日に
あんなひどい姿を見せてしまって
わたしはホントにバカな女です。
実は仲良くなってからも
ずっと感じてたことがあったの
わたしと一緒にいること、重荷じゃないかな?って
だってコウイチくんはバンドマンだし
彼女とかいない方が人気も出るだろうし
わたしといることで先に進めないんじゃ?って
心のどこかで思ってたのかも知れない
無理してるのかな、って。
でも一緒にいる時間は楽しくて
この時間がずっと続けばいいなって思ってた
だけどコウイチくんのこれからのこと考えたら
わたしが隣にいていいのかな?
もっともっと前みたいに自由に歩いていく方が
きっとコウイチくんらしくいられるんじゃないかな?
そう考えるようになってしまって
色々悩んだ結果、
コウイチくんから去る決心をしました
でもね、いざそれを伝えようとしたら
色んなこと思い出して涙が止まらなくて
きっとコウイチくんに直接伝えに行ったら
絶対に決心が鈍っちゃうと思って
手紙を書くことにしました。
これまでありがとう、そしてごめんね
わたしは…
コウイチくんの人生の一部になれたかな?
少しでも意味のある存在でいられたかな?
ほんの少しでもそう思ってもらえたら
わたしはそれだけで幸せです。
これまで楽しい時間をありがとう
きっときっと幸せになってね
音楽もがんばって続けてね
わたしもいつかどこかで
コウイチくんの曲を聴ける日が来るのを
楽しみにしてるね
その時は自慢してやるんだ
「わたしの大好きな人なんだよ、すごいでしょ」ってね
それでは風邪なんかひかないようにね
もし体調崩したらわたしが注射してあげるからね
どこにいてもわたしは
コウイチくんのことを思い出せる
わたしの大好きな人です。
さようなら、そしてありがとう。
北浜 舞
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