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第23章. M
【世界で一番悲しい夜を超えて】
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そして遂に来てしまった…誕生日当日
わたしはどんな顔をして
コウイチくんに会えばいいのだろう?
電話ではいつもと変わらないトーンだった
でも…やはりアドレスが捨てられてたこと
それがどうしても引っ掛かって
コウイチくんの顔が真っ直ぐ見れない…
どうしよう、もうすぐお店に着いてしまう
ここで咲良に声をかけられなかったら
強ばった表情のままドアを開けていただろう。
「舞、どうしたの?もしかして緊張してる?」
「え?何で?」
「顔見たらわかるよ、何年一緒にいると思ってんの?」
「何かさ…いつもと違うって言うか」
「ま、特別な日ってそんなもんだよ」
ー いらっしゃいませー!!
居酒屋ならではのハイテンションな出迎えに
戸惑いながら舞たちは席に着いた。
「舞、ナカムラくんとこ行かなくていいの?こっち見てたよ」
「う、うん、大丈夫…すぐ来てくれるから」
「そっか…気、遣ってんだね」
「そぅ、だって忙しかったら…ね、、」
ほどなく料理が並べられ
鴻一からのサプライズで誕生日ケーキも届いた
が・・・
舞の記憶はここから完全に消えていた
何度か咲良から「舞っ!」と言う声は聞こえたが
緊張感と不安に押し潰されそうな想いは
次第にアルコールの量と比例していき
普段ほとんど飲まない舞は
そのまま酔い潰れてしまった。
微かに記憶にあるのは何かに揺られながら
いつも聞き慣れた鴻一の声が聞こえていたこと
「あ、コウイチくんだぁ…」
その心地よさの中で
再び舞の意識は次第に薄くなっていった。
舞が目が覚ましたのは翌日の夕方だった。
「あ…頭痛い」
「目が覚めた?舞?」
「咲良、あれ?どうしたのこんな時間に」
「舞、今何時かわかってる?」
17時25分、時計を見た舞はそのまま飛び起きた。
「学校に…あ、いたたたた」
「学校にはうちが連絡しといたから安心して」
「ごめんね咲良、わたし、昨日…」
「勘弁してよね、ホント、せっかくの誕生日なのにさ」
「ごめん」
「ナカムラくんと何かあったの?」
「うぅん」
「な、わけないでしょ?何かあったんでしょ、じゃなきゃ昨日みたいな…」
二人の会話を妨げるように電話のベルが鳴った
「あ?ナカムラくんからじゃない?早く出なよ舞…」
「あ、うん」
大慌てで受話器を取ったが
「あ、はい、そうなんですね、それじゃ今から準備して…あ、大丈夫ですよ」
電話を切るや舞はメイクをして着替え始めた
「ん?どしたの?」
「あ、実習先の病院から、何か当直の看護師さんが熱出したから今から来れない?って」
「行くの?そのテンションで」
「うん、頭ちょっと痛いけど大丈夫」
「ナカムラくんから電話あったらどうすんの?」
「明日かけ直すから…帰ったら教えて、電話あったかどうか」
「大丈夫なの?」
「大丈夫、ほら体も動くし」
「じゃなくて」
「え?」
「二人の仲のこと、だよ」
「大丈夫、ごめんね心配かけて、じゃ行ってきまーす」
「舞!ちょっと舞ったら、もう!」
大切な誕生日のお祝いの席で
コウイチくんと話すことすら出来なかった
そしてこんな時間まで何もしなかった
わたし、最低だ
もうこんなわたし
コウイチくんの隣にいる資格なんてない…
舞のやり場のない気持ちは既に限界を超えていた。
ー ごめんね咲良、今日はひとりにしてほしいの
きっと咲良と同じ部屋にいることすら
いたたまれない気持ちに苛まれただろう
こうして一人で当直に出ている方が
いくらか冷静に時間を過ごせる。
「すみません、少しだけ外出させてください…」
休憩時間にコンビニでレターセットを買ってきた舞
もう直接言葉で伝える勇気も聞く勇気もないよ
だから手紙、書こう
急患もなく時間を持て余すほど暇な
この日の当直は舞にとって
たくさんの思い出が溢れては消えていく
世界で一番悲しい夜となった。
そして鴻一もまた一人でもどかしい時間を過ごしていた
バイトを終えてせわしなく
かけ慣れた番号にダイヤルすると
受話器の向こうから聞こえてきたのは…
「ごめんね、舞ったらまだ帰ってないの」
咲良の声だった。
「え?まだ帰ってないんだ?」
「ちょっと急に病院から呼び出されてね…」
体調、良くなったんだろうか?
あんなに泥酔して意識がなくなってたのに
実習?それとも夜勤なのかな?
ま、それだけ具合もよくなったんだろうけど
心配だな・・・
明日こそ、明日こそ絶対舞に会わなきゃ
そんなことを考えながら鴻一はふと、
生誕祭を翌日に控えた
"あの日"のことを思い出していた。
わたしはどんな顔をして
コウイチくんに会えばいいのだろう?
電話ではいつもと変わらないトーンだった
でも…やはりアドレスが捨てられてたこと
それがどうしても引っ掛かって
コウイチくんの顔が真っ直ぐ見れない…
どうしよう、もうすぐお店に着いてしまう
ここで咲良に声をかけられなかったら
強ばった表情のままドアを開けていただろう。
「舞、どうしたの?もしかして緊張してる?」
「え?何で?」
「顔見たらわかるよ、何年一緒にいると思ってんの?」
「何かさ…いつもと違うって言うか」
「ま、特別な日ってそんなもんだよ」
ー いらっしゃいませー!!
居酒屋ならではのハイテンションな出迎えに
戸惑いながら舞たちは席に着いた。
「舞、ナカムラくんとこ行かなくていいの?こっち見てたよ」
「う、うん、大丈夫…すぐ来てくれるから」
「そっか…気、遣ってんだね」
「そぅ、だって忙しかったら…ね、、」
ほどなく料理が並べられ
鴻一からのサプライズで誕生日ケーキも届いた
が・・・
舞の記憶はここから完全に消えていた
何度か咲良から「舞っ!」と言う声は聞こえたが
緊張感と不安に押し潰されそうな想いは
次第にアルコールの量と比例していき
普段ほとんど飲まない舞は
そのまま酔い潰れてしまった。
微かに記憶にあるのは何かに揺られながら
いつも聞き慣れた鴻一の声が聞こえていたこと
「あ、コウイチくんだぁ…」
その心地よさの中で
再び舞の意識は次第に薄くなっていった。
舞が目が覚ましたのは翌日の夕方だった。
「あ…頭痛い」
「目が覚めた?舞?」
「咲良、あれ?どうしたのこんな時間に」
「舞、今何時かわかってる?」
17時25分、時計を見た舞はそのまま飛び起きた。
「学校に…あ、いたたたた」
「学校にはうちが連絡しといたから安心して」
「ごめんね咲良、わたし、昨日…」
「勘弁してよね、ホント、せっかくの誕生日なのにさ」
「ごめん」
「ナカムラくんと何かあったの?」
「うぅん」
「な、わけないでしょ?何かあったんでしょ、じゃなきゃ昨日みたいな…」
二人の会話を妨げるように電話のベルが鳴った
「あ?ナカムラくんからじゃない?早く出なよ舞…」
「あ、うん」
大慌てで受話器を取ったが
「あ、はい、そうなんですね、それじゃ今から準備して…あ、大丈夫ですよ」
電話を切るや舞はメイクをして着替え始めた
「ん?どしたの?」
「あ、実習先の病院から、何か当直の看護師さんが熱出したから今から来れない?って」
「行くの?そのテンションで」
「うん、頭ちょっと痛いけど大丈夫」
「ナカムラくんから電話あったらどうすんの?」
「明日かけ直すから…帰ったら教えて、電話あったかどうか」
「大丈夫なの?」
「大丈夫、ほら体も動くし」
「じゃなくて」
「え?」
「二人の仲のこと、だよ」
「大丈夫、ごめんね心配かけて、じゃ行ってきまーす」
「舞!ちょっと舞ったら、もう!」
大切な誕生日のお祝いの席で
コウイチくんと話すことすら出来なかった
そしてこんな時間まで何もしなかった
わたし、最低だ
もうこんなわたし
コウイチくんの隣にいる資格なんてない…
舞のやり場のない気持ちは既に限界を超えていた。
ー ごめんね咲良、今日はひとりにしてほしいの
きっと咲良と同じ部屋にいることすら
いたたまれない気持ちに苛まれただろう
こうして一人で当直に出ている方が
いくらか冷静に時間を過ごせる。
「すみません、少しだけ外出させてください…」
休憩時間にコンビニでレターセットを買ってきた舞
もう直接言葉で伝える勇気も聞く勇気もないよ
だから手紙、書こう
急患もなく時間を持て余すほど暇な
この日の当直は舞にとって
たくさんの思い出が溢れては消えていく
世界で一番悲しい夜となった。
そして鴻一もまた一人でもどかしい時間を過ごしていた
バイトを終えてせわしなく
かけ慣れた番号にダイヤルすると
受話器の向こうから聞こえてきたのは…
「ごめんね、舞ったらまだ帰ってないの」
咲良の声だった。
「え?まだ帰ってないんだ?」
「ちょっと急に病院から呼び出されてね…」
体調、良くなったんだろうか?
あんなに泥酔して意識がなくなってたのに
実習?それとも夜勤なのかな?
ま、それだけ具合もよくなったんだろうけど
心配だな・・・
明日こそ、明日こそ絶対舞に会わなきゃ
そんなことを考えながら鴻一はふと、
生誕祭を翌日に控えた
"あの日"のことを思い出していた。
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