僕とあの娘

みつ光男

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第08章. 大好きだよ

【思い出の上書き】

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台所を使わせてもらったお礼の気持ちも込めて
出来上がった料理を管理人さんに
少しお裾分けしてから部屋に戻った。

僕にはそんな考えは及びもつかない
これは舞の提案だった。

そんな細やかな気遣いの出来る
世話女房的なところも垣間見れたことで

更に舞に対して「好き」以上に
尊敬の念に近い感情も芽生え始めていた。

「友達の分とかはどうしよう?」

「いいよいいよ、アイツらはその辺の草でも食べさせとけば」

「あははは、ひどーい!」

「もしくは魚の骨だけとか」

「ははは、もう鬼だね!」

自炊用の炊飯器はシンちゃんの部屋にある

同期三人での夕食の機会も多く
夕飯に合わせて共同でご飯を炊くこともあった。

今日は舞と二人なので
舞が部屋で盛り付けをしてくれている間に

僕は近くのお弁当屋さんにライスのみを買いに行った。

ライスが4パック入った
お弁当の袋を下げて帰った僕を見て

「びっくり!そんなに食べれるの?」

「二人、二個ずつ食べたらいいかな、って」

「えー!わたし、ひとつでも食べきれないよぉ」

「はは、冗談だよ、俺、大食いだから」

「えー!意外!そんなに細いのに?ねぇ!」

「だって舞ちゃんの手料理だから、ご飯も進むかな、って」

「ハードル上げられた…よねー?」

「お弁当、めちゃめちゃ美味しかったし」

「だってコウイチくんのための『舞スペシャル』だもん!」

「舞ちゃん独り占めだね、ははは」

「ふふふ」

「さ!食べよっか」

「うん」

しばらく実家に帰っていなかったので
久しぶりの手作りの料理が染み渡った。

舞はまだ「卵」ではあるが看護師さんに対して
そこまで家庭的なイメージを抱いてなかったので

舞衣への印象はこの日で大きく変わった
もちろん、いい意味で。

「これは美味しい!」

「ホントに?味付け、大丈夫だった?」

「いや、もう!完璧です」

「よかったー!胃袋掴んじゃったね」

「全部持っていかれたよ」

「わたしの勝ちだね」

「完敗、かも…」


愛しさが止まらなかった

あくまでも自然体な舞・・・

ここまで共に過ごした時間の中で
必要以上に体が触れ合ったり
密接なやり取りなどひとつも無い

そんな誘惑すら入り込む余地がないくらい
この穏やかな空間はだった。

向かい合わせで囲んだ食卓は
いつしか二人隣り合わせに座っていた。

こうしてこの部屋での思い出は
舞との記憶で全て塗り変えられていく。
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