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Act 5. 大好きなひと

【これから…】

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 会場に着くと不思議なことに
それまで降り続いていた雨が上がった。

こっこの出るイベント…

これまでは悪天候に左右されることが多かった
そんなトラウマももはや過去の話。


「おっ!来てくれたんだ!」

そう遠くないとは言え、
海を越えての握手会遠征に喜んでくれたのだろうか?

そんなこっこの一言で握手会は始まった。

 2ヶ月ぶりの再会となったが
心配性な私はこっこの顔を見るなり

「覚えてる?オレのこと」

そう尋ねた。

「大丈夫だよ~、覚えてるよ!」

まるで私をなだめるかのように
こっこは笑顔でそう言った。

ここまで抱いていた不安な気持ちが
ほだされるような思いになった。

「また、これからも色々と・・・」

「うん、そうだね」

「よろしく!それじゃ・・・」

「またねー!」

"色々と…"

それは煌子のことも含めて、の意味で
そう伝えたのだが

こっこはまるで全てを察しているかのように
"うん、そうだね"、そう答えてくれた。


もしも煌子が登場する、あの小説を書かなければ
この日、私はここにいただろうか?

こうしてこっこと話すことになっていたのだろうか?

きっとアイドルの現場に、彼女に会うために
赴くことなどなかっただろう…


 帰り道、一人フェリーの中で
窓から見える波しぶきを眺めがら
そんなことを考えていると

穏やかな揺れの中、二人がけの座席のシートにもたれて
そのまま深い眠りに落ちていった。


どれくらい眠っただろうか?
ふと、人の気配を感じて目を覚ますと

隣の席に

煌子が座っていた。

「起きた?」

「え?煌子?大丈夫なの?誰かに見られたら…」

「うん、大丈夫!他の人からは見えないから!アタシはあんたが生み出した架空の存在だからね」

ー  に、してもだね・・・

これまでみたいな光と共に現れる、
大袈裟な前触れの演出がなかったね…?

「そ、ほんとはこうしてスッと出て来れるんだけど…何かカッコよく登場したいじゃん?」

「え?そんな理由だったのか」

ー で、今日ここに来たのはね・・・

「わかる?」

煌子はそう言うと私の左手にそっと右手を重ねた、
その掌には前以上に "人として "体温が感じられた。
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