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Act 1. 煌子、現る

【再会】

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 目の前に現れた瞬間からずっとつんけんしていた煌子が
ようやく穏やかな表情になってこう答えた。

「それなら心配しなくていいよ。アタシ、もう少ししたらあんたの近くまで行くから」

「近くに?どう言うこと?」

「それはアタシが説明しなくても、すぐにわかるからさ」

「じゃ、今、ここにいる煌子は誰なんだよ?」

「これはね、あんたが描いてるアタシのイメージを映像で形にした、いわば幻みたいなモノ」

「でも今こうして俺と会話してるじゃないか」

「そう、だから意思も感情もあるの。でもには本体が無いから思念だけをここに飛ばしてるってわけ」

煌子が何を言ってるのか私には全く理解できない。

ただ待ってさえいれば"実在する"煌子が
私の前に現れる、今わかっているのはそれだけだ。

「今日伝えたかったメインなのはそれ、だよ」

「リアルな煌子に会いに行けば、ってこと?」

それを聞いた煌子からようやく笑みがこぼれた。

「そっ!そう言うことね。じゃアタシ帰るから、また次会う時によろしくね」

「え、ちょっと待って!俺にはまだ聞きたいことが…!」

「じゃ、またねー」

そう言うと一瞬で煌子のシルエットは消え、
再びソファーの上で目覚めるとすっかり夜が明けていた。

その時、思ったことは

「変な夢を見たな」

その程度にしかこの時の出来事を重んじていなかった。

 決して何かに期待していたわけではないが
いつ、その日が来るのかと最初は少し心待ちにしていた。

しかしあの日以降、待てども待てども
実在する煌子と遭遇することはなかった。

やはりあれはただの夢、だったのだろう

そんなファンタジーじみた出来事が
今の時代にあるはずなどない。


 そしてその後はお決まりのように
気が多い私の性格も災いしてか、

他の作品を手掛け始めたことで煌子の言った通り
「僕の彼女はアイツの親友」は
ストーリーの展開に行き詰まってしまい

書きかけのまま
スマホからパソコンのフォルダ内へと移動され

数年間、私の中で「忘れられた作品」と化していた。


 そんなある日、私の暮らす地域に
有名な某国民的アイドルの姉妹グループが
結成されると言う話題が忽然と盛り上がり始めた。

それとほぼ時を同じくして私は思い出したように
USBメモリに保存された作品たちを
久しぶりにチェックしてみた。

するとその中に懐かしい作品、
「僕の彼女はアイツの親友」を見つけ

思い出したように再び
数年振りにこの作品を読み返してみた。

「この話、使えそうだな…」

小説投稿サイトで連載を始めようと
ある日思い立った私は格好の題材を見つけた、
と言うわけだ。

もちろん、数年前の冬に体験した不思議な出来事など
当然のようにすっかり忘れてしまっていた。
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