サリー ～レイナ エピソード Ⅱ～

#２ 暗中模索

【対峙】

　こうして俺は「Dream Fantasy」へ案内された
受付にいるのはこれまた若い男性だ。

「こちらのサービスはどこまでで？」

「通常のヘルスコースもございますが…実はラストまでお楽しみ出来るコースもございます、いかがなさいますか？」　

“ラストまで”…その言葉に少し気持ちが高揚したが
今日の目的は“本番”を楽しむことではない
あくまでもレイナに関するリサーチ

そしてレイナはヘルス嬢だったから
同じシチュエーションで何かを探ろう…

「じゃヘルスコースでお願いします」

「女の子、どうされますか？今なら…こちらの女の子が…」

俺は男性の差し出す画像には目もくれず

「うーん…初めて飛び込みで行くお店は指名しないんだよね」

「それではタイプとか好みの女の子はいらっしゃいますか？」

随分親切なお店だな、昔ならここで

“それではおまかせで…”

そんな感じで軽く流されて空いてるフリーの女の子を
無難にあてがわれて終わりなんだけどな。

恐らく例のウイルスのせいで客足が減ったのを
何とかしたい苦肉の策なんだろう。

「タイプ…ねぇ？」

突然そんなことを言われてもなかなか思い浮かばない
その場で考え込む俺に救いの船を出すかのように
受付の男性がこう言った。

「例えば若い娘がいいとか、細いとかぽっちゃりとか…好みのタイプなどは？」

「いや、若いに越したことはないけど…明るい人がいいですね」

「若いに越したことはない…あはは、それは大事ですよね、あと何か？」

「そうですね、やっぱり細身で見た目は猫目な感じが好きなんですよ」

「かしこまりました」

「あと…」

「はい…」

あの日レイナと初めて会った時と同じ言葉を
俺は受付の男性に投げかけた。

「楽しいんだけど…いざ始まると豹変するような娘がいいですね」

「承知しました、それでは女の子の準備が整うまでこちらでお待ちください」


　待合室に案内されふと考えた…俺は何を言ってるんだ？
レイナについてリサーチするつもりで来ているのに
好みのタイプを説明してる場合じゃないだろ。

とは言え今日は40分の短時間コース、
この時間で何かしらレイナに関する情報を手に入れよう

俺はあの頃同様に動物園のゴリラの如く
所在なさげに待合室をウロウロ歩きながら

設置されているサーバーの熱いお茶を飲んだ。

さっきまで悲鳴を上げていた胃腸が
暖かいお茶で少しずつ緩和されていく。

　そして…風俗に通う者なら誰でもわかる
受付に電話のベルが鳴る瞬間こそ…

女の子の“準備が整った”と言う合図だ

「お待たせいたしました」

ほどなく店員に呼ばれて俺はカーテンの前に立った。

「それではごゆっくりどうぞ」

カーテンが開き促されて向かった
その先に立っていたのは…

「いらっしゃいませぇ…」

嘘だろ、何てことだ…

外見の好みはそりゃ人それぞれだと思うが

ここまで俺の理想に忠実なビジュアルを兼ね備えた
女の子がこの世に存在するのか…？

そう、目の前にはとんでもない美人が立っていた
これが俺とサリーとの初対面の瞬間だった。