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#2 暗中模索

【その名はサリー】

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「なぁにが"まあ、そう言うこと"なの?あんなに激しくされたら私、壊れちゃうでしょ?」

彼女はふてくされたような表情を浮かべ
俺の肩にそっともたれかかり頭を軽くこついた。

「あ、ごめんごめん、サリーがかわいいからつい意地悪したくなっちゃうんだよ」

「かわいいと思ってるならもっと優しくしてよね!いつも濡れる前にれるんだから!」

「でもサリーさ、最近すぐ濡れるようになったよね?」

「それは…ふじ太が責めてくれるようになったからだよ」

 彼女の名前はさりな、このお店に入ってまだ数ヶ月の
新人風俗嬢で俺は既に常連客のひとりだ。

サリナと言う源氏名から文字って
俺は"サリー"と呼んでいる。

呼び名のいきさつについては後々話すことになると思うが
実はもうひとつ命名の由来がある。

音楽好きな俺が以前好きで聴いていた
Sallyサリーと言う名前の音楽ユニット

そこのボーカルの女の子と雰囲気が似ている、
そんなのも理由のひとつだった。

またアメリカの俗語、いわゆるスラングで
「sally」には“魅力的な女性”と言う意味もある。

当然ながらこの話を彼女にしたことはないが…


 しかしだ…しばらくこの手のお店に来ていない間に
業界は新たな路線を選択したようで

こんな安価で短時間のコースでも
しっかり"最後"まで堪能出来る時代が来るとは…

レイナに会いに行っていた頃とは大違いだ。

昔はラストまでだと90分、短くても70分
料金もそこそこな値段だったってのに。

 そしてあの頃と何よりも違うこと、
それは以前のように規約違反覚悟で
意を決して連絡先を交換しなくとも

系列店のサイトで相互フォローとなれば
チャットで個人的なやり取りが出来る。

つまりは最低限の制限がある中で
来店しなくともネット上で日常的に
女の子とプライベートなやり取りが出来るのだ。

「ほら、例のウイルスのせいで濃厚接触だとか3密だとかうるさくなって客足がすっかり遠のいちゃったからね」

「お店行けなくても会話出来るのはほんと、いいよね」

「そっ!ま、あんな趣味丸出しのトークやってるの私とふじ太くらいだけど」

「そうなんだ?」

「フツーはね、プレイの質問とかちょっとした会話くらいだよ、むしろふじ太はプレイのことなんか何も聞いてこないよね」

「プレイは未知の部分があるから楽しいんだよ、おかげで遠慮なくサリーの中に入れるってわけだ」

「もう!その言い方やめてよね、これも訳あってのやり取りなんだよ…そもそも私、ほんとは本番NGなんだから!」

「そんなビジネス的な言い方、つれないなぁ…」

「ふふっ…でもほんとは気持ちいいから許す」

「ところでさ…覚えてる?」

「ん?何を?」

「俺が初めてこのお店に来た時のこと…」

「そりゃあ、もう!だぁってぇ…インパクトが大きすぎだもん」

そう、話は3ヶ月ほど前に遡る。


あれから…


そう、レイナがこの世を去って4年の月日が流れていた。


先程から頻繁に登場する“レイナ”とは一体何者なのか?

彼女は以前俺が通っていた風俗店の馴染みの女の子で
別れの言葉もなくある日突然お店を辞めて姿を消した。

その数年後に元風俗タレント
“セリナ”としてブレイクするも

ある番組に出たの最後に自らその命を絶った。

あのニュースがいくら風化しようとも
くすぶり続ける俺の心のモヤモヤが消えることはなかった。

 独身時代初めて出会った風俗デビューのお相手であり
後にも先にも現れないであろう身体の相性が抜群の女性…

本名は西尾瀬里奈、そしてその源氏名がレイナ
死後には彼女が産まれ育った街を訪ねたりもした。

セリナと言う名で芸能界入りした後
あの番組のせいで受けた誹謗中傷の数々

そしてそれが原因で…が表向きの事実。

 レイナが旅立った2年後、俺は家庭を持った
それでも俺はレイナの死を受け止められず

彼女の死因や芸能界時代のエピソードを
あれこれ検索する日々を続けることになる。

こうして俺は常に亡きレイナの幻影を追いかけ、
またその幻影に悩まされていた。
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