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意地を張る理由 (本編229話頃)
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※他サイトでですが、本編の連載が二周年を迎え、勢いと思い付きの記念投稿です。
※公開する予定はなかった裏設定(ストーリーに矛盾が出ないよう心情を中心に走り書きしていたモノ)がベースです。(一応読める程度には直しました!)
※本編229~230話、春が御陵衛士へ行くと言い出した時の土方さんサイドのお話です。
* * * * *
「私、御陵衛士に行きます」
「……は?」
真っ暗な部屋の隅で蹲っていたかと思えば、突然何を言い出すんだ?
「ですから……御陵衛士に行きま――」
「寝言は寝てから言え」
おでこを弾いてやった。
余りのくだらなさについ加減をし忘れたが、つまらん冗談を言うお前が悪い。
文机へ向かい書状を手に取るも、隣にやって来たかと思えば話を聞けとしつこい。
仕方なく話を聞いてやりゃあ、御陵衛士の活動が上手くいけば新選組に有益な情報をもたらせるだと?
お前が新選組を離れたくないのはよくわかっているつもりだ。何なんだ。
つくならもう少しマシな嘘をつきやがれ。伊東の受け売りまんまじゃねぇか。
……あいつが何か仕掛けてきたか?
伊東がこいつを気に入ってるのは知っている。斎藤や新八、そしてこいつを衛士へ連れて行きたいと直接申し入れてくるくらいだ。
斎藤だけを許可したが、それじゃ納得出来ず直接働きかけたか。
だが、普通に誘ったところでこいつなら断るだろう。
それをしないという事は、つまり、断れない状況……脅されているのか?
だとしたら何を? 秘密か? バラすと脅されたか?
こいつは秘密が公になれば新選組にいられなくなるとわかっている。
ただ追放されるくらいなら、少しでも繋がりの持てる衛士へ行き、そこから新選組に関わると決めたか。
馬鹿野郎。
どうしてそれを打ち明けて頼らねぇんだ。一人で抱え込むなと言っただろうが。
そんなに俺は頼りにならねぇのかよ。
「勝手にしろ」
気づいた時にはそんな言葉を放っていた。
意地っ張りはお互い様か?
あれから碌な会話もしねぇまま、気づけば前夜じゃねぇか。
今頃荷物を纏め出したが、お前がやるべき事はそうじゃねぇ。
助けてくれって、どうしてその一言が出ねぇんだよ。
まさか、本当にこのまま出ていくつもりか?
……ああ、くそっ。
「俺に言わなきゃならねぇ事があんだろう」
「えっと、今までお世話になりま――」
「馬鹿。そうじゃねぇだろうが」
あのなぁ。ここまでお膳立てしてやってるのに何で言わねぇんだ。
核心を突いてやろうか。逃げんなよ。
「伊東に脅されてんだろ?」
「ッ!?」
そんなんでこの俺を騙せるとでも思ってんのか……。
「大方、秘密をバラすとでも脅されてんだろ。お前の考えてることなんざお見通しなんだよ」
「違い、ます。そんなんじゃありません」
何が違うだ。全部顔に出てんだよ、馬鹿。
俺だって折れたんだ。いい加減、お前も意地張るのはやめろ。
「あのな、お前が言わなきゃいけねぇのはたった一言、“助けてくれ”だろうが。何で頼らねぇんだ。意地張ってんじゃねぇよ」
「意地なんて張ってません。御陵衛士へ行くと決めたのは、私の意志です」
この期に及んでまだ言うか。
普段のお前なら、そろそろ折れてもおかしくねぇはずだが。
おおよそ俺にバレてるとわかっていながら、なぜそこまで意地を張る?
……何だ? まだ何かあるのか?
お前がそこまで意地になるような事……おそらく、自分自身の事だけじゃねぇんだろう。
だとすれば他の誰か……。
「……チッ。そういうことか……」
ようやく繋がった。
「お前が意地になってる原因は俺か。俺の首でもかけられたか」
ずっと近くにいる俺なら、こいつの秘密を知っていると考えるのが妥当だろう。
つまり、副長という立場にありながら、こいつの秘密を一緒になって隠してきた。そんな俺も断罪されて当然というわけか。
お前の表情も態度も、肯定しているに等しいくせにいまだ首を左右に振りやがる。
「餓鬼か! この意地っ張りが!」
俺も大概だが、お前ほどじゃねぇ!
俺のせいで今まで意地張ってただなんて笑えねぇんだよ。
そのうえ、行きたくもねぇ衛士へ行くだと? ふざけんな。
お前一人に背負わせるような、んな格好悪ぃこと出来るか!
こうなったら局長である近藤さんに全て打ち明ける。
「離してください! どこ行くんですか?」
「近藤さんの所だ。全部打ち明ける。そうすりゃ、お前が衛士へ行く理由はなくなんだろ」
「それだけはダメですっ! そんなことしたら――」
そんなことしたら?
ほらな。俺の読みは当たりじゃねぇか。
安心しろ。
俺の首一つで済ませてやる。
新選組にはいられなくなっちまうだろうが、せめて今後の生活には困らねぇようしてもらうさ。
※公開する予定はなかった裏設定(ストーリーに矛盾が出ないよう心情を中心に走り書きしていたモノ)がベースです。(一応読める程度には直しました!)
※本編229~230話、春が御陵衛士へ行くと言い出した時の土方さんサイドのお話です。
* * * * *
「私、御陵衛士に行きます」
「……は?」
真っ暗な部屋の隅で蹲っていたかと思えば、突然何を言い出すんだ?
「ですから……御陵衛士に行きま――」
「寝言は寝てから言え」
おでこを弾いてやった。
余りのくだらなさについ加減をし忘れたが、つまらん冗談を言うお前が悪い。
文机へ向かい書状を手に取るも、隣にやって来たかと思えば話を聞けとしつこい。
仕方なく話を聞いてやりゃあ、御陵衛士の活動が上手くいけば新選組に有益な情報をもたらせるだと?
お前が新選組を離れたくないのはよくわかっているつもりだ。何なんだ。
つくならもう少しマシな嘘をつきやがれ。伊東の受け売りまんまじゃねぇか。
……あいつが何か仕掛けてきたか?
伊東がこいつを気に入ってるのは知っている。斎藤や新八、そしてこいつを衛士へ連れて行きたいと直接申し入れてくるくらいだ。
斎藤だけを許可したが、それじゃ納得出来ず直接働きかけたか。
だが、普通に誘ったところでこいつなら断るだろう。
それをしないという事は、つまり、断れない状況……脅されているのか?
だとしたら何を? 秘密か? バラすと脅されたか?
こいつは秘密が公になれば新選組にいられなくなるとわかっている。
ただ追放されるくらいなら、少しでも繋がりの持てる衛士へ行き、そこから新選組に関わると決めたか。
馬鹿野郎。
どうしてそれを打ち明けて頼らねぇんだ。一人で抱え込むなと言っただろうが。
そんなに俺は頼りにならねぇのかよ。
「勝手にしろ」
気づいた時にはそんな言葉を放っていた。
意地っ張りはお互い様か?
あれから碌な会話もしねぇまま、気づけば前夜じゃねぇか。
今頃荷物を纏め出したが、お前がやるべき事はそうじゃねぇ。
助けてくれって、どうしてその一言が出ねぇんだよ。
まさか、本当にこのまま出ていくつもりか?
……ああ、くそっ。
「俺に言わなきゃならねぇ事があんだろう」
「えっと、今までお世話になりま――」
「馬鹿。そうじゃねぇだろうが」
あのなぁ。ここまでお膳立てしてやってるのに何で言わねぇんだ。
核心を突いてやろうか。逃げんなよ。
「伊東に脅されてんだろ?」
「ッ!?」
そんなんでこの俺を騙せるとでも思ってんのか……。
「大方、秘密をバラすとでも脅されてんだろ。お前の考えてることなんざお見通しなんだよ」
「違い、ます。そんなんじゃありません」
何が違うだ。全部顔に出てんだよ、馬鹿。
俺だって折れたんだ。いい加減、お前も意地張るのはやめろ。
「あのな、お前が言わなきゃいけねぇのはたった一言、“助けてくれ”だろうが。何で頼らねぇんだ。意地張ってんじゃねぇよ」
「意地なんて張ってません。御陵衛士へ行くと決めたのは、私の意志です」
この期に及んでまだ言うか。
普段のお前なら、そろそろ折れてもおかしくねぇはずだが。
おおよそ俺にバレてるとわかっていながら、なぜそこまで意地を張る?
……何だ? まだ何かあるのか?
お前がそこまで意地になるような事……おそらく、自分自身の事だけじゃねぇんだろう。
だとすれば他の誰か……。
「……チッ。そういうことか……」
ようやく繋がった。
「お前が意地になってる原因は俺か。俺の首でもかけられたか」
ずっと近くにいる俺なら、こいつの秘密を知っていると考えるのが妥当だろう。
つまり、副長という立場にありながら、こいつの秘密を一緒になって隠してきた。そんな俺も断罪されて当然というわけか。
お前の表情も態度も、肯定しているに等しいくせにいまだ首を左右に振りやがる。
「餓鬼か! この意地っ張りが!」
俺も大概だが、お前ほどじゃねぇ!
俺のせいで今まで意地張ってただなんて笑えねぇんだよ。
そのうえ、行きたくもねぇ衛士へ行くだと? ふざけんな。
お前一人に背負わせるような、んな格好悪ぃこと出来るか!
こうなったら局長である近藤さんに全て打ち明ける。
「離してください! どこ行くんですか?」
「近藤さんの所だ。全部打ち明ける。そうすりゃ、お前が衛士へ行く理由はなくなんだろ」
「それだけはダメですっ! そんなことしたら――」
そんなことしたら?
ほらな。俺の読みは当たりじゃねぇか。
安心しろ。
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