上 下
9 / 15

豊玉発句集、奪還作戦

しおりを挟む
 ある晴れた日の昼下がり。
 沖田さんを筆頭に斎藤さん、藤堂さん、原田さん、永倉さん、そして井上さんという所謂試衛館出身の副長助勤たちが、広間の一角で円陣を組み座っていた。
 最重要機密である“とある計画”の作戦を立てるからと、沖田さんによって秘密裏に召集され、私も少し遅れて参加したのだけれど……。

「あのー、沖田さん。重要な話なんですよね? 私がいてもいいんですか?」
「何言ってるんです? 春くんには重要な任務があるんです。むしろ、いてもらわないと困ります」
「ど、どういうことですか?」

 重要な任務って一体何だ?
 そんなもの、私に勤まる気が全くしないのだけれど!

 そんな中、すでに内容を聞かされたらしい永倉さんが提案する。

「山崎に探らせた方が早いんじゃないか?」
「そうしたかったんですけどね~。丞さんは、ひとあし先に土方さんに懐柔されてしまいました。ねぇ、春くん?」
「へ!?」

 なぜ私に振る!?

 何のことかわからず首を捻るも、永倉さんは気にする様子もなく続きを口にする。

「まぁ、部屋の中にあるなら、全員で探せばすぐに見つかるか」
「じゃあさ、誰が先に見つけるか勝負でもする?」

 そんな藤堂さんらしい提案に、すかさず原田さんが反応を示した。

「そういうことなら、見つけた奴は次の飲みがタダになる、でどうだ?」

 いいね、と勝手に盛り上がれば、沖田さんがにこにこしながら斎藤さんを見る。

「一くんも、タダ酒がかかったとあれば参加しますよね~?」
「まぁ、悪くはないな」

 部屋の中での探し物に、山崎さんはすでに土方さんの味方……となれば、何となく話は見えてきた。
 うん、激しく嫌な予感しかしない。

「というわけで、春くんには豊玉発句集作戦のため、土方さんを部屋の外に連れ出すという重要な任務を任せますね~」
「なっ!」

 やっぱりそれか!
 あえてかどうかはこの際突っ込むまい。だから……私を巻き込むのはやめて!

 この場を正しく収めてくれるのはこの人しかない……と、それまで黙っていた井上さんに視線を移せば、にっこりと微笑み返された。

「たまには総司の遊びにも付き合ってやらんとな。歳がどんなものを書いてるかも見てみたい」

 まるで、成長を暖かく見守る親戚の叔父さんのごとく微笑み……。

 このままではマズイ。
 けれども私の心配をよそに、今夜はタダ酒だ、などとますます盛り上がる。

「では、春くん。さっそく作戦実行といきましょうか~」

 そう言って、沖田さんが立ち上がった時だった。 
 背後から影が差すと同時に背中にもの凄い圧を感じれば、頭上からは聞き慣れた声まで響く。

「その作戦ってのに俺も参加して、てめぇら揃って無一文にさせてやろうか」
「やだなぁ~。土方さんは隠し場所知ってるんだから、駄目に決まってるじゃないですか。そんなこともわからないんですか~?」

 お、沖田さんめっ!
 なぜ余計に煽る!?

 恐る恐る上向けば、腕を組んで仁王立ちする土方さんと目が合った。

「お前はどっちの味方だ?」
「わ、私は……どっちの味方でも――って痛ッ!」

 案の定デコピンが飛んでくるも、しばらく摩ったのちに反論する。

「何で私ばっかり!」

 私は巻き込まれただけであって、何にもしていないのに!

「何でって、もうお前しかいねぇからな」
「えっ!?」

 辺りを見渡せば、すでに全員いなくなっていたのだった……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

エロ・ファンタジー

フルーツパフェ
大衆娯楽
 物事は上手くいかない。  それは異世界でも同じこと。  夢と好奇心に溢れる異世界の少女達は、恥辱に塗れた現実を味わうことになる。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

処理中です...