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現実……
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近くのカフェで、あの日の話をした。
「つまりはさ、自分が言われたくない言葉を真咲君に言ったわけだろう? 修が悪い」
言葉を飾ることなく、弘樹はきっぱりと言い切った。
「修はどうしたいの? 許して欲しい? 真咲君と付き合いたい? 忘れたい?」
どうしたいのか、修には分らなかった……。いっそ罵倒してくれていたならば……。
「いっそ、逃げる?」
弘樹はいつも通りの笑顔で、なんでもないように言った。
「真咲君は健康で、仕事も真面目にしてるし、もう、心配する必要は無くなったわけだし」
心配する必要は確かになくなった。だからといって、全てをなかったことにはできない……。
「あの店の閉店時間、知ってる?」
「あと十分」
修は立ち上がると、ポケットから千円札を出した。
「ごめん、ここ奢るから」
弘樹は千円札を受け取ると、ごちそうさま。と、明るい声を投げ掛けた。
幸い、シャッターを下ろし、帰ろうとしているところであった。
真咲は笑顔を収め、修を無表情で見つめる。
男が、修を見下ろす。女のような顔をしているが、身長は修よりも高かった。
「話がしたい」
真咲は睨むような目で見ると、あなたの部屋で。と、冷たい声を出した。
「大丈夫?」
「マスターは帰って下さい。良い休日を」
憎たらしくなるくらい、可愛い笑顔を男には見せた。
部屋は散らかっていた。いつものことだ。時々本を棚に戻して箒で掃くけれど、一番新しい記憶は一月前だった。
「そう、こういう雰囲気……」
真咲が呟いた。何が? と聞こうとしたが、無意識に口から出た言葉な気がした。
真咲は、万年床の脇に立つと、服を脱ぎ始めた……。
「真咲……」
「言ったよね、僕を抱く気がないなら来るなって」
「話を……」
「だったら帰る」
下したばかりのズボンのファスナーを引き上げると、床に落としたシャツを拾うために体を屈めた。
本気で帰る気だろう……冷たい表情がそれを物語っている。
修は腹を決めた。
真咲からシャツを乱暴に取り上げると、床に放り出した。
そうして自分も服を脱ぐ……。
別れてから真咲がどうしていたのか、あの男とはどういう関係なのか、問いたいことは幾つもある……。
だが、修は問いただせる立場ではない……。
今度こそは後悔しないために、真咲の言う通りにするしかない。
修も服を脱ぎ、互いに全裸になると、向かい合い、見つめ合った……。
修は自分がわからなかった……真咲と話したいと言いながら本当は、抱きたいだけなのではないか……。
薄暗い部屋の中……二人は抱き合った……。
心の中では愛し合っていたあの頃……。
離れ離れだった三年間は二人を……変えたのだろうか……。
「つまりはさ、自分が言われたくない言葉を真咲君に言ったわけだろう? 修が悪い」
言葉を飾ることなく、弘樹はきっぱりと言い切った。
「修はどうしたいの? 許して欲しい? 真咲君と付き合いたい? 忘れたい?」
どうしたいのか、修には分らなかった……。いっそ罵倒してくれていたならば……。
「いっそ、逃げる?」
弘樹はいつも通りの笑顔で、なんでもないように言った。
「真咲君は健康で、仕事も真面目にしてるし、もう、心配する必要は無くなったわけだし」
心配する必要は確かになくなった。だからといって、全てをなかったことにはできない……。
「あの店の閉店時間、知ってる?」
「あと十分」
修は立ち上がると、ポケットから千円札を出した。
「ごめん、ここ奢るから」
弘樹は千円札を受け取ると、ごちそうさま。と、明るい声を投げ掛けた。
幸い、シャッターを下ろし、帰ろうとしているところであった。
真咲は笑顔を収め、修を無表情で見つめる。
男が、修を見下ろす。女のような顔をしているが、身長は修よりも高かった。
「話がしたい」
真咲は睨むような目で見ると、あなたの部屋で。と、冷たい声を出した。
「大丈夫?」
「マスターは帰って下さい。良い休日を」
憎たらしくなるくらい、可愛い笑顔を男には見せた。
部屋は散らかっていた。いつものことだ。時々本を棚に戻して箒で掃くけれど、一番新しい記憶は一月前だった。
「そう、こういう雰囲気……」
真咲が呟いた。何が? と聞こうとしたが、無意識に口から出た言葉な気がした。
真咲は、万年床の脇に立つと、服を脱ぎ始めた……。
「真咲……」
「言ったよね、僕を抱く気がないなら来るなって」
「話を……」
「だったら帰る」
下したばかりのズボンのファスナーを引き上げると、床に落としたシャツを拾うために体を屈めた。
本気で帰る気だろう……冷たい表情がそれを物語っている。
修は腹を決めた。
真咲からシャツを乱暴に取り上げると、床に放り出した。
そうして自分も服を脱ぐ……。
別れてから真咲がどうしていたのか、あの男とはどういう関係なのか、問いたいことは幾つもある……。
だが、修は問いただせる立場ではない……。
今度こそは後悔しないために、真咲の言う通りにするしかない。
修も服を脱ぎ、互いに全裸になると、向かい合い、見つめ合った……。
修は自分がわからなかった……真咲と話したいと言いながら本当は、抱きたいだけなのではないか……。
薄暗い部屋の中……二人は抱き合った……。
心の中では愛し合っていたあの頃……。
離れ離れだった三年間は二人を……変えたのだろうか……。
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