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行方
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夏休みに入って、違う大学に行った友人の田中と会った。
大学近くのチェーン系のコーヒーショップで、互いの大学の話をして、区切りがついた頃、田中が思い出したような声を出した。
「お前と仲の良かった後輩、家出したってな」
危うくコーヒーを落としそうになり、慌てた。
「お前もしかして、知らないのか? あんなに仲良かったのに?」
「大学に進んでからは全く連絡とってなくて……」
不自然には違いない。いくら忙しくてもラインやメールの交換くらいはできるはずだ。
田中の視線が怖かった……これ以上は聞かないでくれ……と、心の中で祈る。
「春休みが終わる直前にいなくなったらしい。
連絡手段があるなら、連絡してみろよ。家族も先生も心配してるし、あんだけ可愛いと変な奴に利用される可能性だってないとは言えないからな」
力なく、修は頷いた……。
それからは会話が頭に入ってこなくて、生返事を繰り返していたら、いつの間にか田中は姿を消していた……。
一人きりになって、スマートフォンを取り出し、祈る思いで通話ボタンを押す。
何度かの呼び出し音の後、「はい」と、男の声が聞こえた。
「真咲?」
またかよ。電話の向こうで見知らぬ声の男は面倒臭そうに言った。
『俺はまさきじゃねぇよ。もう番号変えちまうしかねぇな』
それだけ言うと、一方的に通話を終えた。
真咲に繋がる物は無くなっていたのだ……。
机の上に、水たまりができていた。
もう、謝ることもできない……。
すぐに謝る決心をしていれば、電話番号が変わっていても家に行くこともできた。
もう、探しようもない……。
薄暗くなってようやく立ち上がった修は、アパートに向かった。
修は部活動をしていなかったため、後輩との関りは希薄だったので、仲の良かった同級生に連絡し、真咲と同じクラスだった後輩を紹介して貰い、電話をした。
後輩が言うには、卒業式以来真咲の様子はおかしかったそうだ。明るさが消え去り、友達とも話さなくなり、学年末は最下位だった。
何か悩みはあったようだが、誰にも打ち明けた様子はない。いじめにあっていた様子もない。心配した友達が話しかけても、返事はほとんどなかった。
もしかしたらあれが原因かな。と、後輩は言った。
クラスのお調子者がふざけたように言ったそうだ。卒業式の翌日、お前、谷崎先輩とできてたんじゃないのか? と……。
クラス中がドッと笑ったそうだ。もちろん冗談のつもりだとは誰からもわかった。真咲も笑うと思っていたが、俯いて、唇を噛みしめていたという。
それ以来、人が変わったように人を避けるようになり、春休みの最終日に少しの着替えだけを持って姿を消したのだという。貯金通帳は残されていた。持っていたのは小遣い程度。すぐに戻るだろうと周りは考えていたようだが、未だに見つからず、お調子者も今では、後悔のあまり大人しくしているのだとか。
お調子者のせいではない。それは修自身が一番理解している。
しかし、それを公言するわけにもいかず、修はただ、後悔し、真咲の無事を祈るしかなかった……。
探そうにも手掛かりがない。頼りそうな親戚や友人にはもう、家族が連絡しているだろう。
以来、修は近所の神社へ毎日、真咲の無事を願いに行くようになった。
大学近くのチェーン系のコーヒーショップで、互いの大学の話をして、区切りがついた頃、田中が思い出したような声を出した。
「お前と仲の良かった後輩、家出したってな」
危うくコーヒーを落としそうになり、慌てた。
「お前もしかして、知らないのか? あんなに仲良かったのに?」
「大学に進んでからは全く連絡とってなくて……」
不自然には違いない。いくら忙しくてもラインやメールの交換くらいはできるはずだ。
田中の視線が怖かった……これ以上は聞かないでくれ……と、心の中で祈る。
「春休みが終わる直前にいなくなったらしい。
連絡手段があるなら、連絡してみろよ。家族も先生も心配してるし、あんだけ可愛いと変な奴に利用される可能性だってないとは言えないからな」
力なく、修は頷いた……。
それからは会話が頭に入ってこなくて、生返事を繰り返していたら、いつの間にか田中は姿を消していた……。
一人きりになって、スマートフォンを取り出し、祈る思いで通話ボタンを押す。
何度かの呼び出し音の後、「はい」と、男の声が聞こえた。
「真咲?」
またかよ。電話の向こうで見知らぬ声の男は面倒臭そうに言った。
『俺はまさきじゃねぇよ。もう番号変えちまうしかねぇな』
それだけ言うと、一方的に通話を終えた。
真咲に繋がる物は無くなっていたのだ……。
机の上に、水たまりができていた。
もう、謝ることもできない……。
すぐに謝る決心をしていれば、電話番号が変わっていても家に行くこともできた。
もう、探しようもない……。
薄暗くなってようやく立ち上がった修は、アパートに向かった。
修は部活動をしていなかったため、後輩との関りは希薄だったので、仲の良かった同級生に連絡し、真咲と同じクラスだった後輩を紹介して貰い、電話をした。
後輩が言うには、卒業式以来真咲の様子はおかしかったそうだ。明るさが消え去り、友達とも話さなくなり、学年末は最下位だった。
何か悩みはあったようだが、誰にも打ち明けた様子はない。いじめにあっていた様子もない。心配した友達が話しかけても、返事はほとんどなかった。
もしかしたらあれが原因かな。と、後輩は言った。
クラスのお調子者がふざけたように言ったそうだ。卒業式の翌日、お前、谷崎先輩とできてたんじゃないのか? と……。
クラス中がドッと笑ったそうだ。もちろん冗談のつもりだとは誰からもわかった。真咲も笑うと思っていたが、俯いて、唇を噛みしめていたという。
それ以来、人が変わったように人を避けるようになり、春休みの最終日に少しの着替えだけを持って姿を消したのだという。貯金通帳は残されていた。持っていたのは小遣い程度。すぐに戻るだろうと周りは考えていたようだが、未だに見つからず、お調子者も今では、後悔のあまり大人しくしているのだとか。
お調子者のせいではない。それは修自身が一番理解している。
しかし、それを公言するわけにもいかず、修はただ、後悔し、真咲の無事を祈るしかなかった……。
探そうにも手掛かりがない。頼りそうな親戚や友人にはもう、家族が連絡しているだろう。
以来、修は近所の神社へ毎日、真咲の無事を願いに行くようになった。
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