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乳母アンナ
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「まあ、ありがとうございます!助かりますわ!」
持ってきた品物を喜んで受け取ると、乳母のアンナは私と一緒に屋敷から来たハインツとジェラトーニの二人に指示を出して奥に運ばせた。
更に待ってましたとばかり言いつける。
「あんた達、私がお嬢様とお茶を飲んでいる間、旦那の仕事を手伝っておいで。」
「え~、僕たちの仕事はお嬢様の付き添いと護衛ですよ。」
ハインツが不満げな声を上げて抗議をする。
ハインツは我が家の門番兼、護衛として働いている。
元々、軍部に居たのを、シエルにお給料で釣られて転職してきたらしい。
人嫌いのシエルがわざわざスカウトしただけあって、相当の腕前らしい。
「らしい」ばかりだけど、ハインツが訓練しているところも戦っているところも見たことは無いし、軍にいた時より腕が鈍っていないのかしらと、ちょっと疑ってしまう。
口が達者で、何というか人懐っこくて憎めないところがある。
「いま私は身重で畑の手伝いができないから、人手が足りなくて大変なんだよ。どうせほんの少しの間じゃないか。私とお嬢様は女同士の話があるんだから護衛なんて要らないよ。手伝っておいで。旦那が向かいの畑にいるから。」
「え~。乳母様の旦那さん、若いのに人使い荒いんですよねぇ。」
ジェラトーニがハインツの隣でウンウンと頷いている。
彼は、庭師の息子でいつもは父親と一緒に屋敷で働いている。ただ、父親がまだまだ現役なので何かと今日みたいな雑用に駆り出されている。
我が家の侍女達からは、頼られているというか何でも屋的あてにされている。
おしゃべりなハインツとは違って余り自分から話す方ではないけれど、乳母の旦那様が苦手なのは一緒らしい。
二人とも一応抵抗を試みたけれど、我が家の家人としては先輩の乳母に言われては逆らえず、しぶしぶ外に出て行った。
それを見てクスクス笑う私に乳母はソファを勧めると、自分も斜め前のソファに腰かけてお茶を入れ始めた。
農家の居間にあるには繊細で贅沢な磁器の茶器セットが用意されていた。
ずっと、大魔法使いの屋敷で良質なお茶を上等な茶器で入れてきた乳母でも物足りなくないようにと結婚祝いに私が選んで贈ったものだ。
「体調はどう?」
お茶を入れてくれる乳母の手元を懐かしく思いながら声を掛ける。
「順調ですよ。二人目ですし、一人目の時よりは勝手も分かっていますから。」
「そう、それは良かった。お父様もよろしくと言っていました。」
「ありがとうございます。新しく来たメイドは良くやっていますか?」
乳母が嫁いだ後に私付きとして新しいメイドを二人雇っていた。
なぜ二人かというと、乳母が自分の代わりをするには一人では足りない、二人は居ないとお嬢様が不便をされると言い張ったからだ。
「ええ、二人とも若いけど良くやってくれているわ。」
「若いけどって、二人ともお嬢様よりは年上でしょうに...。」
乳母が呆れたように私を見る。
「まあ、そうだけど...。ほら、乳母よりは若いじゃない?」
まずい、人生は一度通しでやってしまっているので、時々年寄り臭い発言が出てしまう。
気を付けなければ。
「なんか、お嬢様最近ますます老けていません?」
さすがに私を親代わりに育ててくれた乳母だけあって遠慮がない。
「まあっ、失礼ね!」
確かに前世の記憶はあるけど、老けていると言われるのは身体年齢10代としては腹が立つ。
「もちろん、見た目は相変わらずお可愛らしくていらっしゃって、私が育て上げた立派な淑女であることは疑いありませんけど。お肌も艶々ですし。」
(最後の所をちょっと悔しそうに言う。まあ、子育て中だし仕方ない、乳母。今度良い化粧品を差し入れしましょう。)
「それはどうも。」
「それなのに昔からなんていうか、中身が落ち着いているというか、老けているというか。」
仕方がないではないか、頑張ってはいるが一度は天寿を全うしてしまった身。いや中身。
そうそうまっさらな10代の娘の様に、きゃぴきゃぴ感は出せない。
「私って昔からそんなだったかしら?」
「そうですよ。そりゃあ私もお嬢様を育て始めた時まだ15歳でしたから、一般的な貴族のお嬢様がどんなものか良く分かっていなかったですけど。今、考えると随分落ち着いた子供だったと思いますよ。」
懐かしそうに言ってお茶を飲む。
「ふ~ん。乳母って私が拾われた時のことは知っているの?」
「いいえ。お嬢様がお屋敷の前で拾われたのは私が奉公にあがったちょうど前日だと伺っております。わたしも普通のメイドとして働くつもりで参ったのですが、たまたま幼い兄弟たちを育てた経験があるというのを旦那様が聞いて、じゃあ、リリアナ様のお世話係になるようにと決まったのですわ。ちなみに、リリアナ様のお名前は亡くなった奥様のお名前だとか。」
ええ知っていますとも。前世の私の名前ですから。
「それが拾われた次の日?」
「ええ、そう聞かされました。本当に旦那様は見た目は冷たく見えますが、本当はお優しい方ですね。」
見た目は冷たくって、乳母ってば、元主人に対して何気に酷いことを言っているわ。
確かに、大魔法使いは外ではかなり冷徹な仕事ぶりで恐れられてるらしいけど。
それにしても、拾われた次の日には引き取ることが決まっていて、名前まで付けていた?
いくら、「本当はお優しい旦那様」でもそんなことあるかしら?
だいたい捨て子だと分かっていても一応身元を調べようとか、親を探そうとか思わなかったのかしら。
しかもその拾った赤ん坊が自分の奥さんの生まれ変わりとかって、そんな偶然ある?
怪しい…。怪しすぎる。
持ってきた品物を喜んで受け取ると、乳母のアンナは私と一緒に屋敷から来たハインツとジェラトーニの二人に指示を出して奥に運ばせた。
更に待ってましたとばかり言いつける。
「あんた達、私がお嬢様とお茶を飲んでいる間、旦那の仕事を手伝っておいで。」
「え~、僕たちの仕事はお嬢様の付き添いと護衛ですよ。」
ハインツが不満げな声を上げて抗議をする。
ハインツは我が家の門番兼、護衛として働いている。
元々、軍部に居たのを、シエルにお給料で釣られて転職してきたらしい。
人嫌いのシエルがわざわざスカウトしただけあって、相当の腕前らしい。
「らしい」ばかりだけど、ハインツが訓練しているところも戦っているところも見たことは無いし、軍にいた時より腕が鈍っていないのかしらと、ちょっと疑ってしまう。
口が達者で、何というか人懐っこくて憎めないところがある。
「いま私は身重で畑の手伝いができないから、人手が足りなくて大変なんだよ。どうせほんの少しの間じゃないか。私とお嬢様は女同士の話があるんだから護衛なんて要らないよ。手伝っておいで。旦那が向かいの畑にいるから。」
「え~。乳母様の旦那さん、若いのに人使い荒いんですよねぇ。」
ジェラトーニがハインツの隣でウンウンと頷いている。
彼は、庭師の息子でいつもは父親と一緒に屋敷で働いている。ただ、父親がまだまだ現役なので何かと今日みたいな雑用に駆り出されている。
我が家の侍女達からは、頼られているというか何でも屋的あてにされている。
おしゃべりなハインツとは違って余り自分から話す方ではないけれど、乳母の旦那様が苦手なのは一緒らしい。
二人とも一応抵抗を試みたけれど、我が家の家人としては先輩の乳母に言われては逆らえず、しぶしぶ外に出て行った。
それを見てクスクス笑う私に乳母はソファを勧めると、自分も斜め前のソファに腰かけてお茶を入れ始めた。
農家の居間にあるには繊細で贅沢な磁器の茶器セットが用意されていた。
ずっと、大魔法使いの屋敷で良質なお茶を上等な茶器で入れてきた乳母でも物足りなくないようにと結婚祝いに私が選んで贈ったものだ。
「体調はどう?」
お茶を入れてくれる乳母の手元を懐かしく思いながら声を掛ける。
「順調ですよ。二人目ですし、一人目の時よりは勝手も分かっていますから。」
「そう、それは良かった。お父様もよろしくと言っていました。」
「ありがとうございます。新しく来たメイドは良くやっていますか?」
乳母が嫁いだ後に私付きとして新しいメイドを二人雇っていた。
なぜ二人かというと、乳母が自分の代わりをするには一人では足りない、二人は居ないとお嬢様が不便をされると言い張ったからだ。
「ええ、二人とも若いけど良くやってくれているわ。」
「若いけどって、二人ともお嬢様よりは年上でしょうに...。」
乳母が呆れたように私を見る。
「まあ、そうだけど...。ほら、乳母よりは若いじゃない?」
まずい、人生は一度通しでやってしまっているので、時々年寄り臭い発言が出てしまう。
気を付けなければ。
「なんか、お嬢様最近ますます老けていません?」
さすがに私を親代わりに育ててくれた乳母だけあって遠慮がない。
「まあっ、失礼ね!」
確かに前世の記憶はあるけど、老けていると言われるのは身体年齢10代としては腹が立つ。
「もちろん、見た目は相変わらずお可愛らしくていらっしゃって、私が育て上げた立派な淑女であることは疑いありませんけど。お肌も艶々ですし。」
(最後の所をちょっと悔しそうに言う。まあ、子育て中だし仕方ない、乳母。今度良い化粧品を差し入れしましょう。)
「それはどうも。」
「それなのに昔からなんていうか、中身が落ち着いているというか、老けているというか。」
仕方がないではないか、頑張ってはいるが一度は天寿を全うしてしまった身。いや中身。
そうそうまっさらな10代の娘の様に、きゃぴきゃぴ感は出せない。
「私って昔からそんなだったかしら?」
「そうですよ。そりゃあ私もお嬢様を育て始めた時まだ15歳でしたから、一般的な貴族のお嬢様がどんなものか良く分かっていなかったですけど。今、考えると随分落ち着いた子供だったと思いますよ。」
懐かしそうに言ってお茶を飲む。
「ふ~ん。乳母って私が拾われた時のことは知っているの?」
「いいえ。お嬢様がお屋敷の前で拾われたのは私が奉公にあがったちょうど前日だと伺っております。わたしも普通のメイドとして働くつもりで参ったのですが、たまたま幼い兄弟たちを育てた経験があるというのを旦那様が聞いて、じゃあ、リリアナ様のお世話係になるようにと決まったのですわ。ちなみに、リリアナ様のお名前は亡くなった奥様のお名前だとか。」
ええ知っていますとも。前世の私の名前ですから。
「それが拾われた次の日?」
「ええ、そう聞かされました。本当に旦那様は見た目は冷たく見えますが、本当はお優しい方ですね。」
見た目は冷たくって、乳母ってば、元主人に対して何気に酷いことを言っているわ。
確かに、大魔法使いは外ではかなり冷徹な仕事ぶりで恐れられてるらしいけど。
それにしても、拾われた次の日には引き取ることが決まっていて、名前まで付けていた?
いくら、「本当はお優しい旦那様」でもそんなことあるかしら?
だいたい捨て子だと分かっていても一応身元を調べようとか、親を探そうとか思わなかったのかしら。
しかもその拾った赤ん坊が自分の奥さんの生まれ変わりとかって、そんな偶然ある?
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