23 / 47
23話 キャベツの千切りとため息
しおりを挟む
二人を伴ってクローディアと家に入ると「こんにちは。」と小さな声が後ろから聞こえた。
「エマ。」
表の扉から入ってきたのはお隣さんのエマだ。アデルさんの工房で会ってから、家が隣りで年が同じなのもあり仲良くしてもらっている。
「あの、父さんがキャベツが余っているから持って行けって...。」
たぶん知らない人が居たからだろう、エマの頬がみるみる赤くなる。彼女はかなりの人見知りだ。
「ありがとう!ちょうど今日の料理に合いそうだから助かった。お礼にこれ持って行って。」
僕はエマが持ってきてくれた立派なキャベツを2個受け取ると代わりにさっき揚げたばかりの鶏の唐揚げを手早く紙に包み、エマが持っている空になった籠に入れた。
「あとこれも。キャベツの千切りにつけて食べると美味しいから。良かったら食べてみて。」
小皿に手作りのマヨネーズをたっぷりもって唐揚げの横にそっと置いた。エマの顔がどんどん赤くなる。これは引き留めないで早く返してあげた方が親切だろう。そう考えて、裏口から出られるように着いていって扉を開けると外に出してあげた。
「お父さんとお母さんによろしく。」
エマの家の勝手口に行くにはこちらからの方が少しだけ近いのだ。
「ありがとう。小皿は後で返しに来るから。」エマは小声で呟くと、足早に帰って行った。
僕が厨房まで戻ってくると、なぜかマーリーンさんがにやにやと笑っている。
せっかくの中性的な美しい顔が台無しだ。
「ふ~ん、かわいい子だね?」
「はい、お隣のエマです。年が同じなので何かと気に掛けてくれるみたいで。あの、もう少しかかるのでどうぞ座っていてください。」
今朝クローディアが差し入れしてくれた大量の鶏肉は、一回目に揚げたものはエマにあげてしまったけど、まだまだたくさん漬け込んであった。でも、せっかくキャベツを貰ったのでキャベツの千切りを添えよう。
「もしお酒を飲まれるなら向かいの宿から買ってきてもらえますか?」
この家には調理用の酒しか置いていなかった。というのも、何故か叔母さんが僕が未成年だからまだ酒は駄目だと言ってこの家に常備しておくことを許してくれなかったからだ。もちろん僕はお酒を飲むつもりはなかったけど、クローディアは飲むし、ジェイやシュミットさんも夜に食事に来ると飲む。普段は放任主義のくせに良く分からない叔母さんルールが時々炸裂するんだから。
結局、この家で酒を飲む時はバルトさんの宿から買ってくるというルールができ上っていた。
「ああ、今日はクローディアへの土産に持参してきたから大丈夫だよ。」
そう言ってカウンター席に腰かけたマーリーンさんがローブの下から大きな酒瓶を出した。
俺も、と言ってルーも同じように袖口から出す。一体魔法使いの袖はどういう仕組みになっているのだろう...。
そこで僕はコップだけをテーブルに置いた。
カウンター席にクローディアを真ん中にして並んで座る3人が話をするのが聞こえて来る。
「クローディアもさっきの女の子くらいの年頃の姿の方が良いんじゃないの?」
マーリーンさんがクローディアに囁いている。いったい何をこの人はいっているんだと呆れたが、クローディアをちらりと見ると真剣な顔をしている。
「そうか?」
カウンター越しに何故か僕の顔を見てクローディアが聞いて来る。
「?」
訳が分からない僕が無言でいると、分かったと言ってクローディアはポンッと音と煙を立てると、あっという間に少女の姿から若い女性の姿になっていた。
「ええ?クローディア?」
確かに大きな金色の目とふっくらした赤い唇、顔立ちはクローディアに間違いないし髪型も同じだけど。
だいたい、エマと同じくらいと言っていたけど、それにしてはずいぶん...。色々と大人っぽいと思う。
「わーい。ディア色っぽい!」ルーが喜んで手を叩いた。
「うんうん、その姿もいいんじゃないか?じゃあ、今日はその恰好で飲もうか。」
マーリーンさんもそう言うとコップに酒を注ぎ飲みだした。
いきなり大人になったクローディアの大きく開いた黒いワンピースの胸元はいつもよりも更に強調されて、目のやり場に困った。
僕はため息をついて鶏の唐揚げを揚げつつ、大量のキャベツの千切りに取り掛かった。一緒にキャベツの味噌汁も作ろうか...。
「エマ。」
表の扉から入ってきたのはお隣さんのエマだ。アデルさんの工房で会ってから、家が隣りで年が同じなのもあり仲良くしてもらっている。
「あの、父さんがキャベツが余っているから持って行けって...。」
たぶん知らない人が居たからだろう、エマの頬がみるみる赤くなる。彼女はかなりの人見知りだ。
「ありがとう!ちょうど今日の料理に合いそうだから助かった。お礼にこれ持って行って。」
僕はエマが持ってきてくれた立派なキャベツを2個受け取ると代わりにさっき揚げたばかりの鶏の唐揚げを手早く紙に包み、エマが持っている空になった籠に入れた。
「あとこれも。キャベツの千切りにつけて食べると美味しいから。良かったら食べてみて。」
小皿に手作りのマヨネーズをたっぷりもって唐揚げの横にそっと置いた。エマの顔がどんどん赤くなる。これは引き留めないで早く返してあげた方が親切だろう。そう考えて、裏口から出られるように着いていって扉を開けると外に出してあげた。
「お父さんとお母さんによろしく。」
エマの家の勝手口に行くにはこちらからの方が少しだけ近いのだ。
「ありがとう。小皿は後で返しに来るから。」エマは小声で呟くと、足早に帰って行った。
僕が厨房まで戻ってくると、なぜかマーリーンさんがにやにやと笑っている。
せっかくの中性的な美しい顔が台無しだ。
「ふ~ん、かわいい子だね?」
「はい、お隣のエマです。年が同じなので何かと気に掛けてくれるみたいで。あの、もう少しかかるのでどうぞ座っていてください。」
今朝クローディアが差し入れしてくれた大量の鶏肉は、一回目に揚げたものはエマにあげてしまったけど、まだまだたくさん漬け込んであった。でも、せっかくキャベツを貰ったのでキャベツの千切りを添えよう。
「もしお酒を飲まれるなら向かいの宿から買ってきてもらえますか?」
この家には調理用の酒しか置いていなかった。というのも、何故か叔母さんが僕が未成年だからまだ酒は駄目だと言ってこの家に常備しておくことを許してくれなかったからだ。もちろん僕はお酒を飲むつもりはなかったけど、クローディアは飲むし、ジェイやシュミットさんも夜に食事に来ると飲む。普段は放任主義のくせに良く分からない叔母さんルールが時々炸裂するんだから。
結局、この家で酒を飲む時はバルトさんの宿から買ってくるというルールができ上っていた。
「ああ、今日はクローディアへの土産に持参してきたから大丈夫だよ。」
そう言ってカウンター席に腰かけたマーリーンさんがローブの下から大きな酒瓶を出した。
俺も、と言ってルーも同じように袖口から出す。一体魔法使いの袖はどういう仕組みになっているのだろう...。
そこで僕はコップだけをテーブルに置いた。
カウンター席にクローディアを真ん中にして並んで座る3人が話をするのが聞こえて来る。
「クローディアもさっきの女の子くらいの年頃の姿の方が良いんじゃないの?」
マーリーンさんがクローディアに囁いている。いったい何をこの人はいっているんだと呆れたが、クローディアをちらりと見ると真剣な顔をしている。
「そうか?」
カウンター越しに何故か僕の顔を見てクローディアが聞いて来る。
「?」
訳が分からない僕が無言でいると、分かったと言ってクローディアはポンッと音と煙を立てると、あっという間に少女の姿から若い女性の姿になっていた。
「ええ?クローディア?」
確かに大きな金色の目とふっくらした赤い唇、顔立ちはクローディアに間違いないし髪型も同じだけど。
だいたい、エマと同じくらいと言っていたけど、それにしてはずいぶん...。色々と大人っぽいと思う。
「わーい。ディア色っぽい!」ルーが喜んで手を叩いた。
「うんうん、その姿もいいんじゃないか?じゃあ、今日はその恰好で飲もうか。」
マーリーンさんもそう言うとコップに酒を注ぎ飲みだした。
いきなり大人になったクローディアの大きく開いた黒いワンピースの胸元はいつもよりも更に強調されて、目のやり場に困った。
僕はため息をついて鶏の唐揚げを揚げつつ、大量のキャベツの千切りに取り掛かった。一緒にキャベツの味噌汁も作ろうか...。
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
側妃に追放された王太子
基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」
正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。
そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。
王の代理が側妃など異例の出来事だ。
「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」
王太子は息を吐いた。
「それが国のためなら」
貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。
無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
収納持ちのコレクターは、仲間と幸せに暮らしたい。~スキルがなくて追放された自称「か弱い女の子」の元辺境伯令嬢。実は無自覚チートで世界最強⁉~
SHEILA
ファンタジー
生まれた時から、両親に嫌われていた。
物心ついた時には、毎日両親から暴力を受けていた。
4年後に生まれた妹は、生まれた時から、両親に可愛がられた。
そして、物心ついた妹からも、虐めや暴力を受けるようになった。
現代日本では考えられないような環境で育った私は、ある日妹に殺され、<選択の間>に呼ばれた。
異世界の創造神に、地球の輪廻の輪に戻るか異世界に転生するかを選べると言われ、迷わず転生することを選んだ。
けれど、転生先でも両親に愛されることはなくて……
お読みいただきありがとうございます。
のんびり不定期更新です。
神の使いでのんびり異世界旅行〜チート能力は、あくまで自由に生きる為に〜
和玄
ファンタジー
連日遅くまで働いていた男は、転倒事故によりあっけなくその一生を終えた。しかし死後、ある女神からの誘いで使徒として異世界で旅をすることになる。
与えられたのは並外れた身体能力を備えた体と、卓越した魔法の才能。
だが骨の髄まで小市民である彼は思った。とにかく自由を第一に異世界を楽しもうと。
地道に進む予定です。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる