ファミリア・ラプソディア

Epilogue

Familia Rhapsodia

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　その部屋のカーテンは、左右で柄が違う。

　左側には、紺色の生地に、落ち着いた色合いの大輪の花がプリントされた可愛らしいカーテン。右側には染め物のようにまだらな濃淡が美しい、薄いカーテンが降りている。

　その窓際に置かれた手作りのデスクの上には山と積まれた学術書。
　横には開きっぱなしのノートパソコンが置かれていて、スリープ中のボタンが点灯している。

　と、カーテンの隙間から差し込む夕日が、デスクの上の写真立てを優しく照らした。
　それはちょっと変わった写真だ。
　ポーズを決めるでもなく、５人がちょうど背景のデスクを振り返った瞬間が切り取られている。

　その時、玄関の方で音がした。

「ただいま～」

　バタバタと足音がして、静寂が俄に破られる。

「お腹空いちゃったね。夕飯どうしよっか」

「僕が作りますよ」

「俺も手伝うよ。なんか今日はうまくいく気がするんだよな」

「「「「「えっ！？」」」」」

「……なんだよ、その反応」

「類は味付け禁止」

「賛成かな……」

「お前ら、失礼過ぎねぇか！？」

「しょーがないでしょ。類ちゃん、余計なもの入れちゃうんだもん」

「……決めた。ぜってー今日は俺がやるわ。お前らまとめてギャフンと言わせてやる」

「レシピ通りに作ってくださいね……！？」

　そんな賑やかな声と共に、家に柔らかな明かりが灯る。



――これは、とある家族の物語。
　笑って、ときおり切ない、ありふれた日常の物語。





『ファミリア・ラプソディア』　Fin