ファミリア・ラプソディア

chapter5

episode.00-5* バレンタインとスイートチャレンジ

　ベッドに放られると、類さんに背中から抱きしめられた。耳朶を舐め上げられ小さく震えれば、前からニャン太さんが迫ってくる。

「ん、んんっ……」

　唇が重なる。
　と、服のボタンを外され、中のシャツをたくし上げられた。

　背後から回された類さんの指先が触れるか触れないかの絶妙なタッチで乳輪をなぞり、そっと摘まみ上げ、その中央にニャン太さんが吸い付いてきて、突起の先端を舌先でくすぐられた。

「ぁ……」

「デンデンのここ、ホントかわいいね。すぐプクって膨らんじゃう」

　ふにふにと摘まんだり、離したりする指の動き。
　それにちゅぱっ、じゅるっと唾液を絡める淫靡な音が重なる。

「伝。上向いて……」

　言葉に従えば、今度は類さんに深く口付けられた。
　舌先を擦り合わせると火の灯った身体の芯がドロリと溶け出すような感覚が湧き上がる。
　彼の甘い唾液が流れ込んできて、飲み下せなかったそれが口の端から溢れ出た。

「ふ……んぅっ……」

　そうこうしているうちに、ニャン太さんの手がズボンの上から股間を弄った。

「あ、待って……ニャン太さっ……」

　声にならない声を上げて、彼の手を止める。

「ここ、キツそうだよ？」と、彼は僕のズボンをくつろげて目を細める。

　見上げてくる微笑みはいつもの無邪気なものとは違って艶やかだ。

「ほら。パンツ、濡れちゃってるし……」

　はむ、と唇で下着の上から甘噛みしてくる。

「あっ、はっぁ……！」

　それだけで、腰が砕けるような快感が脳天を突き抜け、僕は背をしならせた。

　切ないような、焦らすような責め苦に身体がくねる。
　類さんがキスをしながら指を絡ませてきて、甘く自由を奪われた。

　その間に、ニャン太さんは僕の下着ごとズボンを引っ張り下げ、それをベッドの外に放った。次いで隆起するソコの先端にちゅっとキスを落とす。

「もうバッキバキだね。先走りでベトベト……」

　親指で鈴口を広げるように、グリグリ押される。吐息が跳ねる。

「うぅ……ニャン太、しゃんが……んっ、ふぁ、あ……へ、変なもの……飲ませりゅから……っ……」

「うん……ちゃんと責任取るから、安心して」

「ニャン太」と、類さんがサイドチェストにあったローションを投げた。

　それを受け取ると、ニャン太さんは手にたっぷりとローションを垂らし、温めるように両手を擦り合わせた。ねちょねちょと混ぜ合わせる水音が部屋に響き、そして――

「ひゃっ……！」

　欲望の先端を、その濡れた手で包み込んだかと思うと、彼はよしよしと撫で回した。

「んんっ、んぅっ……は、あ……」

　優しい愛撫に腰が跳ねる。
　彼はじっと僕を見つめながら、だんだんと手の動きを速めていく。

「あっ、あっ、んあぁっ……！」

　熱い手に、根元から先端を余すことなく扱きあげられ、あられもない声が迸った。
　ねっとりとしたローションが竿肌に絡みつき、柔らかな手のひらがぐちゅぬちゅと凄い音を立てる。

「スゲェ声……」

　クスリと類さんが笑うのが聞こえて、僕は慌てて唇を引き結ぶ。
　すると、扱く手の動きが更に激しさを増した。

「ひぐっ……ぅ、あっ……ニャン太さっ……」

「我慢しないでよ、デンデン。たくさんカワイイ声、聞かせて？」

「はぁうっ、そんな、はげしっ、くっ……あ、ああっ、あ……！」

　一直線に射精へと向かわせる愛撫。
　かと思えば、彼は突然手を離して竿の後ろの膨らみを揉んだり爪先で引っ掻いたりする。
　昂ぶった欲情が行き場をなくして、下っ腹の辺りでぐるぐると渦巻き苦しいくらいだ。

「や、ぁ、ダメ、ニャン太さ……それ、イジワルっ……」

「カワイイ……」

　イキたい。出したい。ああ、だけど、それ以上に……

「伝。して欲しいことがあったら言わねぇとわかんねぇよ？」

　心を読んだように、類さんが囁く。

「ん……欲し……お尻……グチュグチュ、弄って欲し……い……」

　僕は胸を喘がせて、必死に声を絞り出した。

「素直だねぇ。カワイイねぇ」

「足抱えて。俺も手伝ってやるから」

　ちゅ、とこめかみにキスをされ、僕は膝裏に手をやり両足を抱える。
　後ろまで丸見えの、卑猥な姿を見せつけるように。
　視界が涙で滲んだのは、羞恥心からだろうか。それとも、これから与えられる快感への期待だろうか。

「デンデンのココ……縦に割れちゃったね。すっごくエッチなお尻の穴になってる……」

　ローションで濡れた指先が、ツンツンと穴口を突く。
　次いで、つぷ、とそれは中へと侵入してきた。

「あ――」

「わ、凄い……中、ふわふわ。指、すぐ入っちゃったよ」

　１本の指が、ぐるりと中で円を描く。
　すかさず、２本目、３本目が中に捩じ込まれ、探るように中を擦ったり、バラバラと動いたり、出し入れされた。

「んぁっ！　あ、ぁ、あぁあっ、お尻、お尻、気持ちいっ……」

「ここ？」

　ぐぅっと固くしこった快楽のスイッチを押され、吐息が跳ねる。

「ん、そこ、そこっ、ニャン太しゃ……グリグリ、して……もっと……あっ、い、すご……ぁあっあっ……！」

　耐えがたい愉悦が腹の中で何度も打ち上がった。
　いつもよりも感覚が鋭敏になっていて、欲しいが止まらない。

「いつも、今日みたいに『して』って言っていいんだからね」

　僕は胸を喘がせて首を振る。
　こんな恥ずかしいことを素面で言うなんて無理だ。

「えー？　なんでダメ？」

「あっ、あっ、あっ……！」

「……なぁ、伝。そろそろネタバレするぞ？」

　類さんの優しい声が鼓膜を震わせたのは、そんな時だ。

「ね、ねた、ばれ……っ？」

「うん。……媚薬って言ってたの、あれ、リキュール」

「はふぇっ！？」

　思わぬセリフに声が裏返る。

「ちょっとだけアルコール度数高いけどさ。ただの酒だよ」

「じゃ、じゃあ……」

　彼は笑いをこらえるようにして、僕の乳首を弄びながら頷いた。

「そう。伝が気持ち良くて我慢できなくなってるのは……プラシーボ効果ってやつ」

　それに応えるみたいに、ニャン太さんが中の快楽スイッチを強く連打した。

「んひぁっ！」

「……もう。なんで今、バラすかなぁ」

「や、それ、激しっ……ま、待っ……あっ……」

「デンデン、こんなに素直に感じてくれてるのに」

「だからだよ」

　類さんは涼しげに言うと、僕の首筋に優しく歯を立てた。

「媚薬のせいじゃない。伝はもっとエッチになれるってわかるだろ？」

「なーる……」

「そんな……ウソ、つくなんて……ひどい、です……っ」

「うん、ごめんな。でも、伝もいつも遠慮してたみてぇだし……」

　胸の突起を指先で弾いたり抓んだりを繰り返してから、

「許して？」

　甘えるように囁き、類さんは僕の唇を塞ぐ。

「ん、んんっ、んー……っ！」

　キスをされ、痛いくらいに立ち上がった乳首を扱かれ、お尻の気持ちいい場所をこねくり回され、上下に竿肌を擦られ……意識がバラバラに霧散していく。
　けれどふたりは示し合わせたように、絶妙に、的確に、一足飛びに高みへと放るような真似はしなかった。
　快楽スイッチを連打したかと思えば、動きを止めて、周辺に愛おしそうに唇を這わせたりして焦らしてくる。

　それがもどかしくて、切なくて、脳髄が灼き切れてしまいそうだ。

「はぁ、はぁ……はぁ…………類しゃ……も……中、くらはい……」

　キスの合間に僕は懇願した。
　お尻が切ない。中をあますことなく刺激されたい。何もわからなくなるくらい乱されたい。

「も……がまん……でき……な……ぁ」

　類さんの切れ長の目がスッと優しく細くなって、ゆっくりと顔が離れた。

「ニャン太。伝、中欲しいって」

　ヌプンと中を満たしていた指が抜かれる。
　喪失感で穴口がヒクヒクと震えるのが自分でも分かった。

「あのさ、それじゃあさ……」

　ニャン太さんは濡れた手をティッシュで拭うと、ゴロリと僕の隣に寝転がる。
　それから僕と類さんを交互に見て、躊躇いがちに口を開いた。

「今日は、ボクもデンデンのこと抱いていい？」