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chapter5

episode.00 バレンタインとスイートチャレンジ

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 冬の日差しに春の萌芽を覚える、ある日の昼下がり。
 ソウさんと帝人さんと一緒にリビングでくつろいでいると、寝ぼけ眼を擦りながらニャン太さんが自室から出てきた。

「ねー、ねー、今日はみんなでチョコレート作らない?」

 あくびと伸びをしてから、そんなことを言う。

「チョコレート?どうしてですか?」首を傾げれば、

「バレンタインデーだから!」

 彼は満面の笑みを浮かべて応えた。

「ニャン太。バレンタインはもうとっくに過ぎちゃったよ」と帝人さん。

「そもそも僕たち、ニャン太さんからチョコ貰いましたが……」

 2月14日に、ちゃんと肉球チョコを貰っている。

 ニャン太さんは渋い顔をして、チッチッと顔の前で立てた人差し指を左右に振った。

「それだけなんてつまんないじゃん? なんのためのバレンタインよ?」

 僕と帝人さんは顔を見合わせる。

「なんのためだ?」

 ソウさんが尋ねると、ニャン太さんは何故か誇らしげに胸を張った。

「片思いの人は好きな人に告白して、恋人たちはいつもにも増してイチャイチャする日だよ!
 そんな重大イベントの日を、チョコをプレゼントしただけで終わらせるなんて勿体なさ過ぎる!」

 そう宣言し、彼はルンルン気分でキッチンへ向かった。
 棚からレシピ本を取り出してペラペラとページをめくる。

「みんな揃ってるし、作って食べてイチャイチャ過ごそ♪
 お菓子作りの監修はソウちゃん、よろしくね!」

「溶かして固めるだけじゃないのか?」

「フォンダンショコラも食べたいんだよ!」

 言って、彼は開いた本をコチラに向けてきた。
 そこには、切り分けられたところから蕩けるチョコが溢れ出るケーキが載っている。

「じゃ、類ちゃん起こしてくるね~」

 彼は足音高く類さんの部屋へと突撃した。
 ほどなくして、思わぬ襲撃をされた類さんの悲鳴が聞こえてくる。

「……要するに、甘い物が食べたかったってことかな」

 帝人さんが苦笑するのに、僕は頷いた。

「みたいですね」
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