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chapter4
step.30-2 メイドとお邪魔者
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――そして迎えた週末。
僕とソウさんはリビングで、ニャン太さんにメイクを施して貰っていた。
ローテーブルの上には、化粧水から始まり、ファンデーション、口紅、後は睫毛をクルンとするものなどなど、名前のわからないものがたくさん転がっている。
ちなみにニャン太さんは黄色の全身タイツにオレンジのモコモコパンツ、頭には猫耳を付けている。彼が隣にいたらぼくの女装メイドなんて絶対に霞むだろう。お陰で心配は全くの杞憂になった。
されるがまま、メイクの全てをお任せする。
ニャン太さんは手慣れた様子だ。
「ニャン太さん、メイクなんて出来たんですね……」
「姉弟の末っ子をなめたらダメだよ。基本、姉ちゃんたちのオモチャなんだから」
彼はメイクの出来栄えをじっと見つめて確認しながら、僕に眉を描く。
「メイクでしょ、マニキュアでしょ、髪の毛のセットの仕方でしょ……一通りやられたし、教え込まれたよ」
「な、なるほど……」
指示に従い目を閉じた。
アイシャドウに続き、アイラインを引かれる。睫毛をクルリと引っ張られたかと思えば、付けまつげを乗せられた。
「……よし、できた!デンデンかわいいよ。鏡見てみ?」
「あ、ありがとうございます……」
恐る恐る手鏡を覗き込んだ僕は、目を瞬かせる。
どこからどう見ても男、なのだが……いつもと違う。こんな風に変わるとは思っていなくてビックリする。
お化粧って本当に魔法みたいだ。それにしたって、こんなことを毎日している女の人って大変なんだな……
「次はソウちゃんねー」
ニャン太さんはテキパキとソウさんのメイクに取りかかった。
それが終わりに差し掛かる頃、スーツ姿の帝人さんが部屋から出てきた。
「お。やってるね」
「ちょうどいいところに。どう?ソウちゃんも完成したんだけど……めっちゃキレイじゃない!?」
僕は眼鏡を掛け直す。
彼の言う通り、ウィッグを付けたソウさんは凄く蠱惑的だった。
女の人と言われても納得してしまいそうだ。
女性にしては細すぎるが……
「美男と美女ってパーツが似通ってるって言うけど、本当なんだね」と、帝人さんが吐息をこぼす。
「帝人は何の仮装だ?」
ソウさんが問う。帝人さんは気恥ずかしそうに鼻の頭をかくと、手にしていたヘルメットを被った。
「避難訓練する会社員だよ」
「あー、確かにそれっぽい!」
「ニャン太さんは?何かのキャラクターっぽいけど……」
ニャン太さんが肉球のついたグローブをはめる。次いで、両手を持ち上げた。
「えへへ。日本初、二足歩行でしゃべる野良猫だ~ニャロメ!」
「にゃろめ……?」
首を傾げれば、ガーン!と効果音が聞こえてきそうな勢いでニャン太さんがショックを受ける。
「そんな……これがジェネレーションギャップ!?」
「俺たちの世代でもないけどね」
帝人さんがクスクス笑う。
僕らは車でニャン太さんのお店に向かった。
部屋を出る前、類さんには部屋の外から「いってきます」と声を掛けた。いつものように「いてら」と応えてはくれたけど、彼が玄関まで見送りに来ることはなかった。相当、切羽詰まってるみたいだ。
そして辿り着いた会場は……僕の予想を超えて、遙かにカオスだった。
僕とソウさんはリビングで、ニャン太さんにメイクを施して貰っていた。
ローテーブルの上には、化粧水から始まり、ファンデーション、口紅、後は睫毛をクルンとするものなどなど、名前のわからないものがたくさん転がっている。
ちなみにニャン太さんは黄色の全身タイツにオレンジのモコモコパンツ、頭には猫耳を付けている。彼が隣にいたらぼくの女装メイドなんて絶対に霞むだろう。お陰で心配は全くの杞憂になった。
されるがまま、メイクの全てをお任せする。
ニャン太さんは手慣れた様子だ。
「ニャン太さん、メイクなんて出来たんですね……」
「姉弟の末っ子をなめたらダメだよ。基本、姉ちゃんたちのオモチャなんだから」
彼はメイクの出来栄えをじっと見つめて確認しながら、僕に眉を描く。
「メイクでしょ、マニキュアでしょ、髪の毛のセットの仕方でしょ……一通りやられたし、教え込まれたよ」
「な、なるほど……」
指示に従い目を閉じた。
アイシャドウに続き、アイラインを引かれる。睫毛をクルリと引っ張られたかと思えば、付けまつげを乗せられた。
「……よし、できた!デンデンかわいいよ。鏡見てみ?」
「あ、ありがとうございます……」
恐る恐る手鏡を覗き込んだ僕は、目を瞬かせる。
どこからどう見ても男、なのだが……いつもと違う。こんな風に変わるとは思っていなくてビックリする。
お化粧って本当に魔法みたいだ。それにしたって、こんなことを毎日している女の人って大変なんだな……
「次はソウちゃんねー」
ニャン太さんはテキパキとソウさんのメイクに取りかかった。
それが終わりに差し掛かる頃、スーツ姿の帝人さんが部屋から出てきた。
「お。やってるね」
「ちょうどいいところに。どう?ソウちゃんも完成したんだけど……めっちゃキレイじゃない!?」
僕は眼鏡を掛け直す。
彼の言う通り、ウィッグを付けたソウさんは凄く蠱惑的だった。
女の人と言われても納得してしまいそうだ。
女性にしては細すぎるが……
「美男と美女ってパーツが似通ってるって言うけど、本当なんだね」と、帝人さんが吐息をこぼす。
「帝人は何の仮装だ?」
ソウさんが問う。帝人さんは気恥ずかしそうに鼻の頭をかくと、手にしていたヘルメットを被った。
「避難訓練する会社員だよ」
「あー、確かにそれっぽい!」
「ニャン太さんは?何かのキャラクターっぽいけど……」
ニャン太さんが肉球のついたグローブをはめる。次いで、両手を持ち上げた。
「えへへ。日本初、二足歩行でしゃべる野良猫だ~ニャロメ!」
「にゃろめ……?」
首を傾げれば、ガーン!と効果音が聞こえてきそうな勢いでニャン太さんがショックを受ける。
「そんな……これがジェネレーションギャップ!?」
「俺たちの世代でもないけどね」
帝人さんがクスクス笑う。
僕らは車でニャン太さんのお店に向かった。
部屋を出る前、類さんには部屋の外から「いってきます」と声を掛けた。いつものように「いてら」と応えてはくれたけど、彼が玄関まで見送りに来ることはなかった。相当、切羽詰まってるみたいだ。
そして辿り着いた会場は……僕の予想を超えて、遙かにカオスだった。
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