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chapter2
step.9-3 腰痛とDIY
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* * *
その後は予定していたデスクを見て回った。
さすがにデスクはふたつもいらないし、ふたりが揉めたらどうしようかと思っていたが……
「やっぱ作業スペースは広い方がいいよな」
「L字デスクなら角のスペース無駄にならないよね。あっ、棚もついてる方がいいか」
「引き出しとか、収納も多いと便利だよな」
今のところ問題はなさそうだ。
……にしても。
僕はデスクの値段を眺め歩きながら、内心、ホッと溜息をついた。
たくさんお手頃価格なものがある。
ホームセンターに行きたいと進言して本当に良かった。
……もしも類さんたちが普段行っているようなお店に出掛けたら、マホガニーとかウォールナットのデスクを勧められたりしたかもしれない。そんなことになったら恐縮し過ぎて死ぬ。
「伝、どうだ? 気に入ったのあったか?」
「はい。これがいいかな、と」
僕は目を付けていたダークブラウンのデスクを選んだ。
棚も引き出しもついていない、小ぶりのものだが、とにかく1番安い。売れ残りなのか、15パーセントオフで税込3000円。
「えええっ!? それ、板に足ついてるだけじゃん」
「シンプルが一番いいんです」
「ノートパソコンくらいしか置けないよ?」
「十分ですよ」
「ふぅん……そーいうもんかねぇ……」
欲を言えば、複数の資料が開けるようにもう少しだけスペースがあると助かるが……今使っているのに比べたら遙かにいい。
その時、ニャン太さんがこちらを覗き込むようにしてきた。
「ねえ、デンデン」
「……なんです?」
「本当はもっと欲しいのあるんじゃないの~?」
「い、いえ、これが欲しいんですよ」
「遠慮してない?」
「してません、してません」
ブンブン首を振る。
ニャン太さんは、顎に手を当てると何か考えるようにした。それからハッと顔を上げた。
「ごめん。ボク、ワガママ言ってもいいかな?」
「はい? なんでしょう?」
「引っ越し祝い……手作りデスクをプレゼントするよ」
「え!?」
「今、流行ってるじゃん! DV!」
「DIYな」
すかさず、類さんが訂正する。
ニャン太さんは目をキラキラ輝かせて続けた。
「手作りなら記念になるし、これくらいシンプルなら作れないこともなさそうだし! それに何より楽しそう!」
「まあ確かに、楽しそうではある」
「ま、待ってくださいよ。僕はこのデスクが……」
手作りなんて手間が掛かりすぎる。
材料費だって、眼前にあるデスクより確実に高くつくだろう。
「言ったでしょ、ボクのワガママだって」
それを言われてしまったら、何も言えない。
「じゃあ、一旦デスクの話は家に持ち帰ってみんなで話してみるか」
「設計図?とか、決めなきゃだしね」
「そうそう」
「くぅ~……! テンションめちゃ上がる……!」
楽しそうにするニャン太さんに途方に暮れる。
そんな僕の髪を類さんがくしゃりと撫でた。
「帰るぞ、伝」
颯爽と横切った類さんの背を見つめる。
彼は少し進んでから、僕を振り返った。
「どうした?」
「いえ……」
僕は、物理的にも精神的にも、たくさんのものを貰いすぎている。
なのに、何も返せない自分が歯がゆくて情けない。
せめて迷惑をかけないようにと思うのに……。
「家帰ったら忙しくなりそうだな。いろいろ調べねぇと」
「うちのお客さんにも聞いてみるよ。きっとDV趣味な人もいるだろうし!」
「DIYな。DV野郎は警察に突き出せ」
その後は予定していたデスクを見て回った。
さすがにデスクはふたつもいらないし、ふたりが揉めたらどうしようかと思っていたが……
「やっぱ作業スペースは広い方がいいよな」
「L字デスクなら角のスペース無駄にならないよね。あっ、棚もついてる方がいいか」
「引き出しとか、収納も多いと便利だよな」
今のところ問題はなさそうだ。
……にしても。
僕はデスクの値段を眺め歩きながら、内心、ホッと溜息をついた。
たくさんお手頃価格なものがある。
ホームセンターに行きたいと進言して本当に良かった。
……もしも類さんたちが普段行っているようなお店に出掛けたら、マホガニーとかウォールナットのデスクを勧められたりしたかもしれない。そんなことになったら恐縮し過ぎて死ぬ。
「伝、どうだ? 気に入ったのあったか?」
「はい。これがいいかな、と」
僕は目を付けていたダークブラウンのデスクを選んだ。
棚も引き出しもついていない、小ぶりのものだが、とにかく1番安い。売れ残りなのか、15パーセントオフで税込3000円。
「えええっ!? それ、板に足ついてるだけじゃん」
「シンプルが一番いいんです」
「ノートパソコンくらいしか置けないよ?」
「十分ですよ」
「ふぅん……そーいうもんかねぇ……」
欲を言えば、複数の資料が開けるようにもう少しだけスペースがあると助かるが……今使っているのに比べたら遙かにいい。
その時、ニャン太さんがこちらを覗き込むようにしてきた。
「ねえ、デンデン」
「……なんです?」
「本当はもっと欲しいのあるんじゃないの~?」
「い、いえ、これが欲しいんですよ」
「遠慮してない?」
「してません、してません」
ブンブン首を振る。
ニャン太さんは、顎に手を当てると何か考えるようにした。それからハッと顔を上げた。
「ごめん。ボク、ワガママ言ってもいいかな?」
「はい? なんでしょう?」
「引っ越し祝い……手作りデスクをプレゼントするよ」
「え!?」
「今、流行ってるじゃん! DV!」
「DIYな」
すかさず、類さんが訂正する。
ニャン太さんは目をキラキラ輝かせて続けた。
「手作りなら記念になるし、これくらいシンプルなら作れないこともなさそうだし! それに何より楽しそう!」
「まあ確かに、楽しそうではある」
「ま、待ってくださいよ。僕はこのデスクが……」
手作りなんて手間が掛かりすぎる。
材料費だって、眼前にあるデスクより確実に高くつくだろう。
「言ったでしょ、ボクのワガママだって」
それを言われてしまったら、何も言えない。
「じゃあ、一旦デスクの話は家に持ち帰ってみんなで話してみるか」
「設計図?とか、決めなきゃだしね」
「そうそう」
「くぅ~……! テンションめちゃ上がる……!」
楽しそうにするニャン太さんに途方に暮れる。
そんな僕の髪を類さんがくしゃりと撫でた。
「帰るぞ、伝」
颯爽と横切った類さんの背を見つめる。
彼は少し進んでから、僕を振り返った。
「どうした?」
「いえ……」
僕は、物理的にも精神的にも、たくさんのものを貰いすぎている。
なのに、何も返せない自分が歯がゆくて情けない。
せめて迷惑をかけないようにと思うのに……。
「家帰ったら忙しくなりそうだな。いろいろ調べねぇと」
「うちのお客さんにも聞いてみるよ。きっとDV趣味な人もいるだろうし!」
「DIYな。DV野郎は警察に突き出せ」
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