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chapter2
step.8-3 5つのグラスとおやすみのキス
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* * *
「……やっぱ、男3人は無理があるんじゃねぇか」
類さんの呆れたような声が部屋に落ちる。
「全然平気だよー。こうやって、くっついてれば」
明るい応えと共に、ニャン太さんがグイグイと身体を寄せてくる。
ダブルベッドはすし詰め状態だ。
しかも並びは、何故か僕が真ん中。
「平気じゃねぇ。狭い……俺、身体半分ベッドから落ちてんだけど」
「なんかさ、なんかさ、こういうのって修学旅行っぽくてワクワクするねっ!?」
「……聞いてねぇし」
溜息が落ちる。
類さんは身体を横に倒すと頬杖をついた。
「ってか、修学旅行でこんなくっつくかよ。どうでもいいヤローと密着するとか、考えるだけでゾッとする」
「あー……それもそうだね」
スンッと声のトーンを落として、ニャン太さんは真っ直ぐ仰向けになった。
が、それも短い間だけで、またすぐコチラを向いた。
「でもさ、たまにはいいじゃん。今度、5人でゴロゴロしよーよ」
「このスペースの何処に後ふたり入れるんだよ」
「そうじゃなくて。リビングのテーブルどかして布団敷くの!」
「もう布団は捨てた」
「そうだっけ? じゃあ買おう! そして並べてみんなで寝よう!」
「なんでそんなに寝たいんだ……」
「そんなの親交を深めるために決まってるじゃん。同じ布団で寝た仲って言うし」
「同じ釜の飯を食べた仲のノリで言われてもな」
「似たようなもんでしょ?」
「全然。いかがわしいだけ」
ニャン太さんがむぅ、と唸る。
次いで唇を一文字に引き結ぶ僕の方を不思議そうに見た。
「……ってか、デンデン。さっきから黙ってるけど、どうしたの?」
「ど、どうもしていませんが……?」
変にどもる僕に、彼はますます不審げにする。
『アイツ激しいぞ?』
類さんの冗談が、まだ頭の中でこだましている。
ニャン太さんに「その気」はないし、今の雰囲気だって健全そのものだというのに、僕はもしもを心配している。
いや、正確にはもしもを考えた自分のふしだらさが恥ずかしいというか、何というか。
「もしかして緊張してる? でも、なんで?」
鋭い指摘に口の端がヒクつく。
右隣で類さんが忍び笑いをこぼした。
「……類ちゃん。何したの?」
僕に乗っかって、彼は反対側の類さんに訊いた。
「何もしてねぇよ」
「気になるんだけど」
改めて僕を見下ろしてきたニャン太さんから逃げるように、目線を泳がす。
すると彼は突然ベッドのライトをつけた。
「……っ」
「デンデン、顔真っ赤だよ? どうして……」
更に問を重ねようとしたニャン太さんが、きょとんとする。それから声を上げた。
「あーっ! そういうこと!?」
「そ、そういうこととは、どうーー」
「3人でエッチなことすると思ってたんだ!?」
食い気味でズバリと言い当てられた。
そんなに僕の心情は読み取りやすいんですか。そうですか。……もうやだ。
僕は顔を両手で覆った。
ニャン太さんがブハッと噴き出した。
「あはっ、あははっ……そんなにボク、節操なしに見える?」
「…………すみません」
そんなことを本気で考えてごめんなさい。
「そりゃ、ボクはデンデンのこと気に入ってるし、もっと仲良くなりたいとは思うけど、エッチするのはまた別でしょー」
ひとしきり笑ってから、ニャン太さんは言った。
「そ、そうですよね……」
「うんうん。今はね」
……今は?
「でも、そっかー。意識してくれてたんだー。嬉しいなあ」
顔を覆っていた手を退かされる。
かと思うと、ニャン太さんが覆いかぶさるようにして、顔を覗き込んできた。
「あ、の……ニャン太さ……?」
彼は柔らかな髪をかき上げて、目を細めた。
まとう雰囲気が一変して、ギクリとしてしまう。
「試しにチューしてみよっか?」
「……やっぱ、男3人は無理があるんじゃねぇか」
類さんの呆れたような声が部屋に落ちる。
「全然平気だよー。こうやって、くっついてれば」
明るい応えと共に、ニャン太さんがグイグイと身体を寄せてくる。
ダブルベッドはすし詰め状態だ。
しかも並びは、何故か僕が真ん中。
「平気じゃねぇ。狭い……俺、身体半分ベッドから落ちてんだけど」
「なんかさ、なんかさ、こういうのって修学旅行っぽくてワクワクするねっ!?」
「……聞いてねぇし」
溜息が落ちる。
類さんは身体を横に倒すと頬杖をついた。
「ってか、修学旅行でこんなくっつくかよ。どうでもいいヤローと密着するとか、考えるだけでゾッとする」
「あー……それもそうだね」
スンッと声のトーンを落として、ニャン太さんは真っ直ぐ仰向けになった。
が、それも短い間だけで、またすぐコチラを向いた。
「でもさ、たまにはいいじゃん。今度、5人でゴロゴロしよーよ」
「このスペースの何処に後ふたり入れるんだよ」
「そうじゃなくて。リビングのテーブルどかして布団敷くの!」
「もう布団は捨てた」
「そうだっけ? じゃあ買おう! そして並べてみんなで寝よう!」
「なんでそんなに寝たいんだ……」
「そんなの親交を深めるために決まってるじゃん。同じ布団で寝た仲って言うし」
「同じ釜の飯を食べた仲のノリで言われてもな」
「似たようなもんでしょ?」
「全然。いかがわしいだけ」
ニャン太さんがむぅ、と唸る。
次いで唇を一文字に引き結ぶ僕の方を不思議そうに見た。
「……ってか、デンデン。さっきから黙ってるけど、どうしたの?」
「ど、どうもしていませんが……?」
変にどもる僕に、彼はますます不審げにする。
『アイツ激しいぞ?』
類さんの冗談が、まだ頭の中でこだましている。
ニャン太さんに「その気」はないし、今の雰囲気だって健全そのものだというのに、僕はもしもを心配している。
いや、正確にはもしもを考えた自分のふしだらさが恥ずかしいというか、何というか。
「もしかして緊張してる? でも、なんで?」
鋭い指摘に口の端がヒクつく。
右隣で類さんが忍び笑いをこぼした。
「……類ちゃん。何したの?」
僕に乗っかって、彼は反対側の類さんに訊いた。
「何もしてねぇよ」
「気になるんだけど」
改めて僕を見下ろしてきたニャン太さんから逃げるように、目線を泳がす。
すると彼は突然ベッドのライトをつけた。
「……っ」
「デンデン、顔真っ赤だよ? どうして……」
更に問を重ねようとしたニャン太さんが、きょとんとする。それから声を上げた。
「あーっ! そういうこと!?」
「そ、そういうこととは、どうーー」
「3人でエッチなことすると思ってたんだ!?」
食い気味でズバリと言い当てられた。
そんなに僕の心情は読み取りやすいんですか。そうですか。……もうやだ。
僕は顔を両手で覆った。
ニャン太さんがブハッと噴き出した。
「あはっ、あははっ……そんなにボク、節操なしに見える?」
「…………すみません」
そんなことを本気で考えてごめんなさい。
「そりゃ、ボクはデンデンのこと気に入ってるし、もっと仲良くなりたいとは思うけど、エッチするのはまた別でしょー」
ひとしきり笑ってから、ニャン太さんは言った。
「そ、そうですよね……」
「うんうん。今はね」
……今は?
「でも、そっかー。意識してくれてたんだー。嬉しいなあ」
顔を覆っていた手を退かされる。
かと思うと、ニャン太さんが覆いかぶさるようにして、顔を覗き込んできた。
「あ、の……ニャン太さ……?」
彼は柔らかな髪をかき上げて、目を細めた。
まとう雰囲気が一変して、ギクリとしてしまう。
「試しにチューしてみよっか?」
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