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chapter1

step.3-3* 傘とボディランゲージ

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 唇が腫れるほどの、長く、深い口付け……
 息が上がる頃、類さんは僕に跨るようにして胸に手を伸ばしてきた。

「あぅっ……」

 乳輪のフチを、指先で何度もなぞられる。
 その触れるか触れないかのタッチに、中心がどんどん固く痼っていく。

「はぁ、はぁ……あっ……」

「伝は感じやすいんだな。ココ、まだ触ってもないのに……摘んでっておねだりしてる」

 指先の描く円が段々と狭まって、時折、乳首を掠めた。
 その度に、ゾクゾクと背に快感が走って腰が浮く。
 乳頭に触れる回数が増えていき、くるおしいほど期待が高まっていく。

 お腹の奥がぎゅううっと切なさを訴える頃、狙いすましたかのように乳首を摘まれた。

「はひっ……!」

 執拗に引っ張られ、押し込められ、コヨリを捻るようにクリクリと弄り倒される。
 口元に腕を押し付け必死で声を抑えようとすれば、類さんが不満げに鼻を鳴らした。

「なんで声、我慢すんの」

「だ、って、気持ち悪い……」

「そんなわけないだろ」

「ひあっ、ぁっ!」

 さっきよりも強い刺激に僕は身体をくねらせた。

「俺は聞きたいよ。あんたの感じてる声……」

 声を我慢すればするほど、激しく指先に翻弄される。
 その強過ぎる刺激は苦しいほどだ。

 僕はおずおずと口元から手を退かし、か細く喘いだ。
 少しでも楽になりたい一心だった。

「んぁうっ……」

 けれど我慢を止めた途端、自分でも驚くほど艶めかしい声が出た。

 ハッと我に返って、また快楽にうっとりして、また正気を取り戻して……を繰り返す。
 せっかく借りた真新しい下着は先走りで濡れ、中で膨らんだ屹立は今にも弾けそうだ。

「んう、うぅ! ……類さん……もう……もう僕……」

「中も弄って欲しい?」

 僕は恥ずかしさに泣きそうになりながら、頷いた。

「いい子だ。じゃあ下着脱いで」

 いそいそと言われた通りにすれば、類さんはベッドの上の方へ手を伸ばした。

 パチリと音がしてベッドライトが淡く点灯し、部屋がぼんやりと明るくなる。
 続いて、彼はプラスチックの容器を手に取った。たぶん、ローションだ。

「次は四つん這いになって……怖がんなくていいよ。オレが全部やってやるから。たくさん解してやる」

 彼はローションを手の中で温めながらそう言った。

「は……はい……」

 僕は恐る恐る四つん這いになる。
 ヌルついた液体がお尻に塗り込められ、続いて指がゆっくりと挿入された。

「んっ……」

「伝のココ……凄く可愛い色してる。もしかして初めて?」

「す、すみません……」

「なんで謝るんだよ」

 類さんが苦笑を噛み殺す。

「でも……そっか、初めてか。なら、とびきり気持ちよくしてやらねぇとな」

 中に挿入された指が増えたのか圧迫感が強まった。

「ふ、くぅっ……ん、ぁ……」

「ココでしかイケなくなるくらい、トロトロに蕩してやる」

 グリ、と中の指が何かを探るように動く。
 やがて、一点を刺激された瞬間、ジワリと何とも言えない心地良さが広がった。

「あっ……!?」

「伝のイイトコ、見つけた」

「や、類さん、そこはっ……」

 指の動きに合わせて穴口が搾るのを感じる。
 意識が一点に集中し、ガクガクと膝が震えはじめる。
 自分で弄った時とは比べようもない心地良さに、僕は恐怖すら覚えた。

「やっぱ、あんた感度いいよ」

「はっ、ぁっ、んぅあっ」

「このまま、後ろでイク感覚覚えようか」

「う……後ろで……っ?」

「そ。1時間でも2時間でも気持ちよくなれる、魔法の感覚だよ」

 異物感を覚えたのは初めだけだった。
 類さんの指は的確に僕の身体を開発していった。

「そうそう……そのまま、リラックスして……」

「あ、はぁ、んくっ……ぃ、あ……類さ……そこ、ぁ、気持ちいい……っ」

 枕に顔を突っ伏せ、僕はされるがままだった。
 初めは、類さんにお尻を見せつける体勢がとても恥ずかしかったのに、気がつけば何の抵抗もなく、小波のような快感に溺れている。

 何度も目の前で星が散った。
 飲み下せなかった唾液が枕にシミを作る。

「深く息吸え、伝……そう、そのタイミングだ……そのままーー」

「ひぅんっ……!」

 指をグゥッと押し込まれると、自然と身体が跳ねた。

「上手、上手。またイケたな」

 それからゆっくり、時間をかけて、類さんは僕の身体を奥まで暴いていった。
 何度も何度もローションで濡らし、根気よく指を出し入れして、中でバラバラと動かしたりして……

「さっきからイキっぱなしなの、わかるか?」

「は、はいぃ……」

 こんな快感、知らない。プラグなんて比べ物にならない。
 頭が沸騰して、フワフワしている。クラゲになったみたいだ。

 好きな人に触れられることが、こんなにも気持ちいいだなんて考えたこともなかった。
 指先まで幸せが染みていくような……
 身体を重ねたら、どうなってしまうのだろう?

 もっと奥まで欲しい。
 指じゃなくて、類さんが欲しい。

「伝……そろそろ限界……中、挿れたい……」

 切なげな掠れた声が耳に届く。

「きて、ください……」

 朦朧とする意識の中で答えれば僕は仰向けに寝転がされた。
 類さんは下着を脱ぎ捨てると、サイドチェストからゴムを取り出す。次いで、口で封を切った。
 彼は手慣れた様子でそれを隆起した欲望に被せると、僕に覆いかぶさってくる。

 細身だけど引き締まった身体が迫った。
 鼻先に、爽やかな汗が香る……

「類さん……」

 ローションで濡れた場所を何度か熱い先端が行き来し、やがてグチュゥッと濡れた音が立った。
 指とは比べようもない質量に、息が引きつる。彼が中へと押し入ってきたのだ。

「ん……キツ……」

 けれど、たくさん解して貰ったお陰で痛みは少しもなかった。
 それどころか、圧迫感に甘い疼きすら感じた。

 類さんは苦しげに眉根を寄せると、僕を抱きしめた。

「痛くねぇ?」

「へっ……平気、です……」

 類さんは動かない。
 そっと僕の髪を撫でたり、頬にキスをしてきたりする。

 次第にもどかしくなってきて、僕は彼の耳に唇を寄せた。

「あの、類さん……」

「なに?」

「類さんは、ちゃんと気持ちいいですか……? 僕だけ気持ちよくなってるなんてことーー」

「俺も凄く気持ちいいよ。……滅茶苦茶に動きたいの、必死で我慢してる」

「どうして我慢なんて……動いてくださいよ……」

「ダーメ。初めてなんだ。馴染むまで待たねぇとケガするだろ」

 十分解してもらったし、今だって少しの抵抗もなく繋がっているというのに、彼は頑として動いてくれない。
 僕はくるおしいもどかしさに襲われた。
 それこそが類さんの狙いなんじゃないかと思うくらいに。

「類さ……お願い……です……動いて……僕、僕、もう……変に、なっちゃう……から……」

 腰に足を巻きつけ、僕は彼に額を押し付ける。
 穴口が呼応するように、キュンキュン震えるのを感じる。

「よしよし。もう少しだけな」

「そんな……」

 前髪をかき上げられて、ちゅ、ちゅ、と額やこめかみにキスをされた。
 堪えきれず、僕は類さんの頬を両手で包み込み唇を塞ぐ。

「んっ……」

 拙いながらも、必死で舌を伸ばした。
 類さんも応えてくれる。
 舌を何度も擦り合わせていると、次第に彼の腰が動き始めた。

「あっ……! あっ、あぁっ、んぁっ……!」

 まだ足りない。
 もっと激しく突き上げられたい――そんな僕の気持ちを読み取ったように、ズンッと最奥を抉られる。

「んぁああっ……!」

 視界が極彩色に染まって旋回した。

「あー! あっ、あぁっあっ……!」

「はぁ、はぁ、ヤバ……絡みついてくる……っ」

「類さっ、ぁ、いい、きもちっ、いっ……っ! そこ、そこ、もっと……ぁ、イク、イク、イッちゃ……ぁ……!」

「いいよ。イケよ……何度だって気持ちよくしてやるから……っ!」

「んぁっ、あああ……っ!」

 背が反り、爪先がギュッと丸まる。
 意識が弾け飛んで、更なる快感に呼び起こされる。

「もう少し激しくするぞ……」

「ふ、ぁ……ひっ、んぐぅっ……!」

 僕の両足を抱え直すと、類さんは先ほどとは比べられない激しさで抽送を繰り返した。

「あーっ、あっ、あぁ、ま、待っへ……そこ、はっ、ん、ふぁんっ!」

 指で弄られた時も思ったが……彼はとてつもなく正確だった。
 突き上げる場所も、タイミングも、緩急の付け方も……経験のない僕では比べる対象がないが、とにかく彼は上手で、僕の理性も羞恥心も粉々に砕かれた。

 陰茎の根本から込み上げる快感が腹の方へと突き抜けていく。
 抵抗できない絶頂が何度も何度も続き、僕は前後不覚に陥る。

「類さん……ど、しよ……気持ちいいの、止まらない……」

「俺も……我慢してねぇと、すぐ出ちまう……伝の中……あったかくて……はぁ、気持ち良い……っ」

 薄暗い中でもわかるくらい、類さんの顔は赤く染まっている。
 僕に欲情して、腰を跳ねさせている。
 その姿に泣きたいほど胸が打ち震えた。

「好きだよ、伝……」

「僕も……ぁ、んンッ、類さんの、ことっ……!」

 僕は類さんの背に手を回し、縋り付くように爪を立てた。
 唾液を啜り、啜られ、全てを晒し合い、汗まみれになって求め合う。
 情熱的に。貪欲に。ーーふたつの身体が溶け合っていく。
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