人狼坊ちゃんの世話係

Tsubaki aquo

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エピソード30

♡別れの詩(3)

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 横たえた彼に覆い被さり、性急に唇を塞ぐ。

「ん、んんっ……ユリア……っ」

 シャツを乱し、露わになった肌を撫でた。
 久々に触れる愛する人の肌は、熱く、蕩けるようだった。

 息を吸うと、ほんのりと爽やかな汗の香りが鼻腔をつく。

「好きだよ、バンさん」

「うん……」

 耳朶をはみ囁けば、バンさんの頬が赤く染まった。
 彼の中心はズボンの上からでも分かるくらい、固く反り立っていて心が躍る。

 僕は逸る気持ちを抑えながら、自分のシャツを脱ぎ捨てた。
 ふいにバンさんの手が僕の胸元に触れたのは、そんな時だ。

「どうかしましたか?」

「逞しくなったなって」

「そうかな」

「そうだよ」

 バンさんは、感慨深そうに僕の胸をペタペタと触った。
 アイツに比べたら薄いくらいだと思うんだけど、
 でも、褒められて嫌な気はしない。
 僕は小さく微笑んで鼻の頭を指先でかいた。

「惚れ直した?」

「そうな」

 バンさんが、苦笑する。

 つられて口の端を持ち上げた僕は、
 再び彼の唇に吸い付いた。

 そっと触れて、角度を変えて、
 唇を割って舌を絡め取る。
 耳を指先でくすぐってから、首筋、肩口と確かめるように触れていく。
 やがて、僕の指はバンさんの右肩ーーうっすらと残る噛み痕に辿り着いた。

 僕の中で薄らいでいくアイツを思う。

 あれほど憎くて、苛立たせられた存在なのに、
 失うと思うと、胸に穴が空いたように痛い。

 どうしたら、アイツと分かり合えたんだろう。
 アイツは自分だったものなのに。誰よりも近い存在なのに。

 ねえ。

 呼びかけても応えはない。

 どちらかが消えるかどうかでしか、僕らの問題は解決できないの?
 本当にそれしかないの?

 僕は続けた。

 僕はそうは思わないんだ。
 でも、それを証明する材料も……時間も、なくて。

 ひとつがふたつになって、お互いに変質して、
 アイツは『もうひとつには戻れない』と言っていた。
 確かに、ひとつの身体にふたつの人格なんて不安定だし、普通じゃない。

 だから、アイツが身を引いた。
 全ては1月を倒すために。バンさんが幸せになれるように。

 アイツはそう思い込んでいた。

 僕は、まだ納得できない。
 これからも一生しないと思う。

 お互い、勝手な意見を押し付け合っている。
 そういう意味では、僕らは同じだ。

「ユリア?」

 声に我に返れば、バンさんが僕を見上げて心配そうにしていた。

「……ごめん、何でもないよ」

 バンさんの足の間に身体を滑り込ませて、彼を抱きしめる。

 何に気を取られていたのか、バンさんは訊かなかった。

 僕は一つ吐息をこぼしてから、彼の首の付け根を甘噛みし、
 舌先で鎖骨をなぞり、胸、脇腹とキスを落とした。

 ズボンを下着ごと引き下ろして、床に放る。
 ついで、僕は気恥ずかしそうに顔を背けるバンさんを見つめた。

「な、んだよ……?」

「見てちゃダメですか?」

「……ダメ」

「え、どうして」

「そんなん……
 …………内緒」

「なんですかそれ」

軽口を叩きながら、僕はバンさんの屹立を握りしめて、ゆっくりと扱き立てる。

「んっ、く……」

「バンさん……」

 顔を覗き込むと、彼は瞼を閉じた。

「ん、んんっ……」

 唇が腫れるほど僕らは何度も淫らなキスをした。

「ぁうっ……あっ、は、ぁっ」

「可愛い……いつもよりも、敏感ですね」

「当たり前だろ。久々なんだから……」

「久々なだけ?」

 僕は、バンさんの細い両の手首を彼の頭上で掴む。

「おい?」

 戸惑う彼を見下ろしながら、屹立の隘路を親指の腹で優しく撫でた。
 滲んだ先走りを塗り込めるようにしたり、竿を扱いたりを交互に繰り返す。

「あっ、あぅ……ふ、はぁ、はぁ、あっ、はぁ、はぁ……」

 バンさんの濡れた唇が戦慄く。
 次第に呼吸が荒くなっていく。

 華奢な身体に汗が滲むのを、僕はとても色っぽいと思った。

「も、いいから……挿れろよ……」

「まだ解してませんよ」

「このままだと、イッちまうから……
 イクなら……お前ので、イきたいし……」
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