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学校での喧騒の渦

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その日、僕と高橋の思いは微妙にすれ違いながらも、双方が自分に都合よく解釈をした結果、高橋は大人しく帰っていった。

そんな僕と高橋を見た上条は僕に家に帰るといきなり告げるんだ。

「なんで帰るんだ?
せっかく1週間も頑張ったのに、あと数日の辛抱だろう」

急な上条の申し出に僕は驚きそして戸惑う。

「ごめんなさい、でも山本君にただ匿われるのは違うのかなって思ったの。
高橋さんとのやり取りを聞いていて、甘えるだけの自分じゃあダメなんだとも思ったの。
もう一度、ちゃんと親と向き合うから。
その為に家に帰るわ」

上条の顔にも言葉にも上条の決意が現れていた。
一方で僕の心にはこれまでの努力は何だったんだという思いも沸き上がる。
それにさっきまでの僕と高橋の会話がきっかけって?
正直 ???? だ

でも上条の人生だ、僕はサポートはできても強制はしたくない。
そう思い僕は上条の決意を尊重することにした。

「判ったよ、相手は上条の両親だもんな。上条の思う通りにすればよいよ」

「ありがとう、そしてごめんなさい」

そう言うと上条は僕に抱き着いてきた。
そしてキスを求めてくる。
僕は上条を抱きしめて優しくキスをする。

1分、2分、いや5分か、上条を抱きしめる時間が終わる。

「本当に、ありがとう、じゃあ帰る」

そう言い残して上条は出ていった。

本当は無理にでも引き留めるべきだったのかもしれない。
でも、これは上条の選択。
きっと、僕に頼り過ぎるのがいけないと思ったんだろう。

しょうがないよね。
だから無言で見送った。

そして気が付くと僕は一人だった。
僕しかいない部屋で僕の手から零れ落ちていった女たちを考えてみるが意味が無いことに気づいて頭から追い出した。
そして僕には広すぎる部屋で、誰の人肌も感じない部屋で僕は一人で寝るのだった。

翌日、僕はひとりで学校に向かう。
これも久しぶりの感覚だ。

でも教室に入ればみんなに会える。
学校では変わらない日常が再開されると思っていた。

.....でも違ってたんだ、僕は甘すぎた。

最初の違和感。
上条の席に上条が居ないんだ。
あいつはいつも早くに学校に来ていたのに。
結局、その日上条は学校を欠席した。

そして次の違和感。
高橋の制服に変化がある。
目ざとい女たちが高橋の制服が変わっているのに気が付いて高橋の周りに群がっている。

「なあ、あき、一人だけ抜け駆けして狡くないよ。
チョウ羨ましんだけど」

「そう、そう、あきったら半端無いしい。
私らを置いて一人だけいい子ちゃんに変わってるしい」

「ねえ、ねえ、高橋さん、その服って、あれよ、あれよね、マタニティー用の制服よね」

「そうなの、だからあきはギャルを辞めたんだ。
髪だって黒くなってるし」

「いいなああ、私にもチャンスが回ってこないかなあ」

「はあ、みんな聞きたいことはチャント聞くしいい。なあ、あき、どうやったら山本に孕ませてもらえるんだ」

「ええええ、相手は山本君なんだ」

「ちょ、ちょっと、朱音のあほ、バカ、その無節操な口、縫い付けようか」

島村のバカは教室でも安定の暴走だ。

「ひゃああ、あきがおこってるし、本当に山本が相手なんだ」

高橋の言葉が島倉の言葉を肯定してしまう。

「うああ、高橋もあほ、そうですって答えてるようなもんだよな。
な、なあ、本当に山本が高橋を孕ましたのか。
って事は、その.....うわあ、したんだ、狡い、山本狡いぞ」

うん、安定の田畑だ。

「なあ、田畑ちょっと落ち着こうか」

「そうなんだ、山本は経験者なんだ、なあ、山本、その、高橋ってどんな感じだったんだ」

うわああ、こいつも面倒くさい。

「なあ、田畑、お前、黙れよ。高橋に失礼なこと口走ってるぞ」

 「え、ええ~」

高橋と周りの女たちが田畑を冷たい目で見ている。
それに気づいた田畑の腰が引ける。

女の一人が田畑を指さして罵声を浴びせようとするが、その罵声はその女の口から出ることは無かった。

「おはよう!」

皆の目がさわやかな挨拶をして教室に入ってきた委員長に注がれる。

一瞬の沈黙、そして。

「「「「えええええええ」」」」」

委員長が2個目の爆弾を抱えて教室に突入してきた。

「えへへへへ、似合うかな」

そう言ってくるりと委員長が廻る。

「どう、高橋とおそろいだよ」

「「「「きゃああ、祥子、祥子ったら、いつのまに」」」」

みんな驚きの声がハモって響きわたる。

「えへへへ、私、お母さんになるんだよ」

嬉しそうな委員長。

「ねえ、山本、似合ってるかな」

おい、僕に振るなよ。

「なっ、山本、そうなのか、お前は高橋だけじゃなくて委員長まで毒牙に掛けたのか。
なあ、そうなんだろう」

田畑の目が怖いんだけど。

「そうなし、あきも委員長もずるい。朱音だってしてほしいのに」

いつの間にか側に来ていた島村が僕に抱き着きながら不穏当な言葉を口走る。

「いいなあ、山本は半年後のご氏名まで入ってるんだ」

だから、田畑、お前は黙れ面倒くさくなる。

「田畑はバカなしなあ、半年も待つわけ無いっしょ。
ねえ、山本、してよ、なんなら今からでもいいなし」

「バカは島村だろう。高橋達を妊娠させた山本としたければ半年待つしかないだろう」

勝ち誇ったような声で田畑が島村にダメ出しをする。

「はああ、バカは田畑なし、高橋達って言ったなし」

「えっ、そうか2人?
なっ、本当か、ええええ、なあ山本、本当に2人ともなのか.....それって......」

「偉い、田畑正解、だ・か・ら、うちともするなし、ねえ山本」

島村と田畑、お前ら二人とも大馬鹿だああ。
僕は心の中で毒づく。

「ほら、離れて」

僕にしがみ付いていた島村を委員長が引きはがす。

「ねえ、山本、ありがとうね」

島村を引きはがした委員長が僕の頬にキスをする。
それを見て静まり返る教室。
そしてあちこちから声が上がる。

「えええ、本当に2人」

「な、なんで、どうして」

「山本ってまじ半端ない」

「山本、お前が羨ましい」

「ねえ、ねえ、私にもワンちゃんあるから」

「アンタ、何言ってるのよ。
私、ワンちゃんあるなら私よ」

カオスになり始める教室。
そして島村が委員長を押しのけてまた僕にしがみ付く。

「ねえ、山本、うち、次はうちね」

みんな勝手な事を言いやがって。
僕の中に怒りが渦巻いてくる。

これがそんな僕の感情と共に、学校での僕の平安が永遠に失なわれる事になった、朝の出来事だったのだ。
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