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第75話 オイゲンとカリン 

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オークション会場でのイベントが全て終わったので俺達は宿に戻る事にした。
幸い、今日購入した奴隷達の引き渡しは明日なので今日は宿を変える必要はない。

ただ、陥没乳首のおっぱいちゃんと妹だけは奴隷の首輪の書き換えを終わらせていたので俺が連れて帰る必要があるらしい。

「ハーツさん、人数が増えたので俺達は別の馬車で帰ります」

俺達は商業ギルドのハーツさんと別れて、オークションの主催者が用意してくれた馬車を利用することにした。

「オイゲン様、私と妹を買い上げて頂きありがとうございました」

馬車に乗ったとたんに陥没乳首のおっぱいちゃんがまた俺にお礼を言ってくる。

「カリンは何度も同じことを言わなくても良いんだよ。
カリンとマリンを買い上げたのは俺の判断だ。
それに2人を買い上げるちゃんと理由もあるんだからそんなに気にしなくても良いんだよ」

「はい、判っています。
それでもオイゲン様に買って頂いたのは嬉《うれ》しいんです」

カリンは妹のマリンを強く抱きしめながら俺にそう言うんだ。
マリンと離れ離れにならずに2人して俺に買われたことがよっぽど嬉《うれ》しいんだな。

馬車が宿に着いたので、二人の為の部屋を確保しようとしたんだが、残念ながら宿は満室で追加で部屋を取ることはできなかった。

しょうがない、2人にはソファーででも寝てもらうか。
枕も掛け布団も余分に置いてあるのでソファーでも寝ることはできそうだからね。

「サミー、銀、帰ったよ」

僕が部屋の扉を開け二人に声を掛けると二人が近寄ってくる。

「主様、古龍の鱗はオークションで首尾よく高値で落札されましたか?」

銀は心配そうに俺に尋ねてくる。

「ああ、思った以上に高額で落札されたよ」

俺が嬉《うれ》しそうに答えると銀の顔に大輪の笑顔が咲く。

「オイゲン、その二人はリンの親族か」

サミーは2人が気になる様だ。
ああ、奴隷の首輪を付けてるからね。
俺が買い上げると約束したリンの親族だと思うよね。

「初めまして、オイゲン様にお買い上げいただいたカリンと妹のマリンです。
至らないところも多いかと思いますがこれからよろしくお願いいたします」

「サミー、2人は別口だ。
勿論、リーンバース伯爵家関係者の購入も上手くいったよ。
彼女達は明日引き渡してもらう予定だ」

サミーは俺が別口と言ったので不思議そうな顔をするが、疑問は取り合えず飲み込んだみたいだ。

「ああ、カリンにマリンだね。
私はサミー、こっちにいるのが銀だ。
あと、奴隷の首輪をしているからと言って私達の間では遠慮はいらないからね。
オイゲンも私達も奴隷だからと区別することは無いからな」

「主様はお優しいですから、助けられそうな奴隷にはいつも手を差し伸べるのです」

サミーと銀がカリン達を安心させようとしているね。

「ハイ、オイゲン様は今日もたくさんの奴隷をお救いになられました」

「はあ~、買ったのは2人だけじゃないのか」

サミーは呆れたと言いたげだな。

「ハイ、私たち以外にもたくさんの奴隷を買われています」

「沢山ねえ、なあ、オイゲン、いったい何人の奴隷を買ったんだ」

「何人だろう、売れ残ったのをまとめて買ったからちゃんと数えてないかな」

「いや、オイゲン、それは無いだろう」

サミー止めてくれよ、そんな目で見る事は。
ほとんど勢いなんだから。
一山幾らで売っている果物の数だって数えないよね。

「だって、サミー、オークションの会場で客の接待を行う女達が全員売り物だったんだ。
その中で俺は俺達を接待してくれたカリンとマリンを買ったんだけどオークションが終わったら売れ残った奴隷は俺が買わないとみんな扱いの酷い娼館で娼婦にされるって言われたんだ。
そう言われたら売れ残った奴隷達をまとめて買うしかないじゃないか」

「そうなのか、そう言われればオイゲンなら全員買うだろうな」

「サミー様、オイゲン君に今日も多くの女が救われました。
私の妹と従妹もオイゲン君に救われました」

リンがそう言うとサミーがリンを抱きしめる。

「リン、良かったな。妹も従妹もオイゲンが保護してくれたんだ」

「そうなのです、ルーミス様だけでなく私の妹や従妹を含む多くの女が救われました。
こんなこと普通の男では絶対にできないです。
オイゲン君は凄いんです」

リンがサミーに抱き着きながら感極まった声で話している。
その声を聞くと頑張った甲斐が有ったと実感できるよ。

「主様、お疲れでしたらお風呂はいかがですか。
そろそろお帰りかと思って準備を済ませておきました」

風呂か、銀は気が効くねえ。
元日本人としてはその気配りが嬉しいね。

「銀、ありがとう、入らせてもらうよ」


☆☆☆☆☆


ご主人様がお風呂に向かわれた。

「皆様、大変僭越かと思いますが、私が|《わたくしが》ご主人様のお背中を流してもよろしいでしょうか」

私は出来るだけ早くご主人様の寵愛を得たいのだ。
今日、ご主人様が買われた奴隷はみな美しい少女達だ。
その中で私がご主人様の寵愛を得るには他の奴隷達が居ない、今日こそが最大のチャンスだ。

「別にオイゲンは放っておいても良いんだよ。
最初からそんなに気を張らなくても良いんだぞ」

サミー様が驚く事をおっしゃった。
そして他の皆様も頷いて|《うなずいて》いるのだ」

「私はご主人様の奴隷です。
ご主人様のお世話をする事が喜びで私の癒しにもなるのです」

「まあ、やりたいなら良いんじゃない」

「ありがとうございます」

私は皆様の反応をこれ幸いとご主人様のお世話に向かう。

それにしても、皆様には危機感が足りません。
あれでは直ぐにご主人様のご不興を買って遠ざけられてしまいます。
まあ、私としてはご主人様の寵愛を争うライバルは少ない方が良いのですけどね。

「ふふふふん」

お風呂からはご主人様の鼻歌が聞こえてきます。
ご機嫌のようですね。
私は手早く服を脱いでご主人様にお伺いを立てます。

「オイゲン様、お背中を流させて頂きます」

そして、お返事を待たずに扉を開けて中に入ります。

「えっ、なに、だれ」

「陥没乳首のおっぱいちゃんですわ、お邪魔いたします」

「えっ、陥没乳首、なんで本人が知ってる、俺声に出して言ったっけ」

「ハイ、そのおっぱいちゃんです」

私は素早く掛け湯をしてご主人様が浸かっている湯船にお邪魔する。
ご主人様の後ろから入り背中を抱きしめさせていただく。

「なあ、カリン、この家ではこんな事はしなくても良いんだよ」

やはり周りが美姫だらけのご主人様では私如きには食指は動かないのでしょうか?
でも、拒絶もお優しいのはやはりご主人様らしいです。

「ご主人様、カリンの我が儘と思い暫くはこのままでお願いします」

私はご主人様の背中からお腹へと回している私の腕に力を込める。
私とご主人様の身体が密着するように
ご主人様の背中で私のおっぱいが潰されるのに気付いてもらえるようにと。

「なあ、カリン、そんなにおっぱいを押し付けたら痛いんじゃないのか」

うふふ、気付いてくださったんだ。

「痛くなど有りませんわ。
カリンはご主人様にカリンのおっぱいを堪能していただきたいのです。
ですから、もっと背中をカリンに預けてくださいませ」

ご主人様のお腹にあった腕をご主人様の胸から首へと回してご主人様を手繰り寄せる。
リラックスする様にご主人様が私に身体を預けてくださる。

「確かにカリンのおっぱいは柔らかで気持ちがいいな。
この姿勢は楽だし、柔らかな寝心地は俺にはご褒美だが、カリンは痛くは無いのかな?」

「はい、カリンはご主人様を感じられてうれしゅうございます」

「そうか、折角だからカリンの事が知りたいな。
嫌でなければ教えてほしい」

嫌なわけは有りません。
ご主人様がカリンに興味を持って下さったのです。
私を哀れんで慈しんで頂けるように身の上をお話ししましょう。

それから私は自分の祖国の事、帝国の学院での扱い、祖国が滅んでからの辛かった日々についてご主人様に聞いて頂きました。

「そうか、カリンも辛かったんだな。
でも、五体満足で貞操も卑しめられなかっただけ幸せかな」

ハイッ?、ご主人様の基準はよく分かりませせん。
返事に困っているとご主人様がリン様や国元にいる元帝国貴族の近衛兵達のことを話してくださります。

王国軍の捕虜になり貞操を奪われて娼婦に落とされた。
王都に移送中に盗賊に奪われて卑しい盗賊達の慰め者になった。
盗賊達は身体を汚すだけでは飽きたらずに暴力で女達のからだと心を蹂躙した。
盗賊から奪回される際に盗賊が四肢のいずれかを切り離した。
王都の奴隷商の館で奴隷としての価値も無いと家畜のように扱われて死ぬ瀬戸際の所でご主人様に救われた。

聴けば聴くほどおぞましく、この身が幸運にさえ思えてしまう。
王国とはなんで恐ろしい所なのでしょう。

「だからカリンにお願いだ。
元帝国の近衛兵だった薔薇の騎士達に恨みを向けないで欲しいんだ。
カリンにとって帝国は憎い仇だろうが、彼女達も被害者だ。
それを分かって欲しいんだ」

私はご主人様の懐の深さに驚いてしまいます。
王国の貴族からすれば帝国の近衛兵など復讐の対象のはずです。
それなのに情けを掛けられて、四肢の欠損まで癒されたなど普通では決して出来ない事です。

やはりご主人様は素晴らしい方でした。
私はご主人様に買われて幸運でした。

私は強くご主人様を抱き締めます。
ご主人様、一生付いて行きますよ。
私を放すなんて許しませんからね。












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