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「ふむふむ、理解しました。つまり殿下は愛しのイシャくんが私に虐められたと考えて激怒してるってことでよろしいですね?」
「よろしくないが!?何一つよろしくないが!?」
真っ赤な顔でバンバンと机を叩いている王太子に、俺は生温い笑顔を返した。
「恥ずかしがらなくても良いですよ。その照れっぷり、甘酸っぱいですねぇ」
「お前は私を馬鹿にしてるのか!?」
「まさか!心からお祝いしておりますよ。精神年齢の低かった殿下にもとうとう春がきたか、と」
「明らかに馬鹿にしているだろう!!」
怒りのあまりか少々潤んだ目で睨みつけられて、Sっ気のある俺はつい愉快になってきた。
「……殿下、これが初恋でしょう?」
「なっ」
声を潜めて密やかに問い掛ければ、ただでさえ赤かった顔が、耳と首まで朱に染まる。もはや赤黒いと言っても良いくらいだ。この調子だと上方に血液が集中しすぎて、下半身から血がなくなるんじゃないか。恋愛で一番大事な下半身に血が集まらなくなっちゃうじゃん。笑える。
「て、適当なことを言うなっ」
焦って誤魔化そうとする王太子が面白くて、俺はますます揶揄いモードになった。
「え、これまで想いを寄せた方がいらしたので?あ、分かった乳母が初恋とか言うんでしょ。殿下、惚れっぽそうですもんね。イシャくんは十三番目くらいの恋のお相手ですかね」
「無礼者め!そんなわけあるか!」
わざとらしいカマかけにもあっさりと引っかかり、王太子が自爆する。
「私はそんな心根の浮ついた軽薄な人間ではない!私の心を動かしたのは、神に誓ってイシャだけだ!」
「ヘェ~」
はい熱愛宣言来たぁ~!
しかも神に誓っちゃいますか。
婚約者のいる王太子が熱愛宣言とか、大スキャンダルじゃね?まじウケる。
「おや、やはり初恋ですか。そりゃイシャくんのために一肌脱ぎたくなっちゃいますよねぇ」
「お、まえ、引っ掛けたな!?」
自分で引っかかったくせに、被害者面でショックを受けている王太子に吹き出しそうだ。
性格の悪いニヤニヤ笑いが止まらない。純情な青少年を揶揄うのは、なぜこんなに楽しいのだろうか。
けれど俺は、ふと一つの事実を思い出し、王太子に真面目な顔を向けた。
「あ、殿下。脱ぎたくなる気持ちは分かりますけれど、避妊を忘れちゃだめですよ?孕ませないように注意してくださいね?」
「ふぁッ!?お、お前、言うに事欠いて、私がそんなふしだらな真似をするとでも……!?」
怒りと羞恥で言葉が出てこないらしい王太子に向かって、俺は純粋な親切心から忠告を続けた。
「イシャくんは十五になったら早々に金持ち爺の後妻にされる予定で、もう子袋を授けられてますから」
「なっ!?」
王太子が絶句している。やはり知らなかったようだから、教えて良かった。
これを知らないとトラブルのもとだからな。聖者の後見をしている神殿とかも巻き込んで、国家的な大問題になりかねない。
「馬鹿な!」
俺の下世話かつ余計なお世話な発言に、脳血管が切れそうなくらい頭に血が上っていたと思しき王太子だが、俺があっさり告げた衝撃の事実により、一気に青ざめた。
「未成年に子袋を作るのは、違法行為だろう!?」
「イシャは実家では随分と虐げられていたようですね。十三歳で子袋を創られたらしいですよ」
「なんだと!?インセジュ伯爵め……っていうか待て、なぜお前がそんなことを知っている!?」
ハッと顔を上げると、王太子は猜疑に満ちた目でこちらを凝視してくる。青い目が爛々と輝いて圧が強い。しかし特に後ろ暗いところもない俺は、射抜かんばかりの視線を受け流して、あっさり答えた。
「まぁ、調べたので」
「そうか調べたのか……って、いや待て!」
あっさり答えたんだからあっさり流せよそこは。
「なんでそんなことを調べた!?どうやって!?」
面倒くさいなコイツ。
「よろしくないが!?何一つよろしくないが!?」
真っ赤な顔でバンバンと机を叩いている王太子に、俺は生温い笑顔を返した。
「恥ずかしがらなくても良いですよ。その照れっぷり、甘酸っぱいですねぇ」
「お前は私を馬鹿にしてるのか!?」
「まさか!心からお祝いしておりますよ。精神年齢の低かった殿下にもとうとう春がきたか、と」
「明らかに馬鹿にしているだろう!!」
怒りのあまりか少々潤んだ目で睨みつけられて、Sっ気のある俺はつい愉快になってきた。
「……殿下、これが初恋でしょう?」
「なっ」
声を潜めて密やかに問い掛ければ、ただでさえ赤かった顔が、耳と首まで朱に染まる。もはや赤黒いと言っても良いくらいだ。この調子だと上方に血液が集中しすぎて、下半身から血がなくなるんじゃないか。恋愛で一番大事な下半身に血が集まらなくなっちゃうじゃん。笑える。
「て、適当なことを言うなっ」
焦って誤魔化そうとする王太子が面白くて、俺はますます揶揄いモードになった。
「え、これまで想いを寄せた方がいらしたので?あ、分かった乳母が初恋とか言うんでしょ。殿下、惚れっぽそうですもんね。イシャくんは十三番目くらいの恋のお相手ですかね」
「無礼者め!そんなわけあるか!」
わざとらしいカマかけにもあっさりと引っかかり、王太子が自爆する。
「私はそんな心根の浮ついた軽薄な人間ではない!私の心を動かしたのは、神に誓ってイシャだけだ!」
「ヘェ~」
はい熱愛宣言来たぁ~!
しかも神に誓っちゃいますか。
婚約者のいる王太子が熱愛宣言とか、大スキャンダルじゃね?まじウケる。
「おや、やはり初恋ですか。そりゃイシャくんのために一肌脱ぎたくなっちゃいますよねぇ」
「お、まえ、引っ掛けたな!?」
自分で引っかかったくせに、被害者面でショックを受けている王太子に吹き出しそうだ。
性格の悪いニヤニヤ笑いが止まらない。純情な青少年を揶揄うのは、なぜこんなに楽しいのだろうか。
けれど俺は、ふと一つの事実を思い出し、王太子に真面目な顔を向けた。
「あ、殿下。脱ぎたくなる気持ちは分かりますけれど、避妊を忘れちゃだめですよ?孕ませないように注意してくださいね?」
「ふぁッ!?お、お前、言うに事欠いて、私がそんなふしだらな真似をするとでも……!?」
怒りと羞恥で言葉が出てこないらしい王太子に向かって、俺は純粋な親切心から忠告を続けた。
「イシャくんは十五になったら早々に金持ち爺の後妻にされる予定で、もう子袋を授けられてますから」
「なっ!?」
王太子が絶句している。やはり知らなかったようだから、教えて良かった。
これを知らないとトラブルのもとだからな。聖者の後見をしている神殿とかも巻き込んで、国家的な大問題になりかねない。
「馬鹿な!」
俺の下世話かつ余計なお世話な発言に、脳血管が切れそうなくらい頭に血が上っていたと思しき王太子だが、俺があっさり告げた衝撃の事実により、一気に青ざめた。
「未成年に子袋を作るのは、違法行為だろう!?」
「イシャは実家では随分と虐げられていたようですね。十三歳で子袋を創られたらしいですよ」
「なんだと!?インセジュ伯爵め……っていうか待て、なぜお前がそんなことを知っている!?」
ハッと顔を上げると、王太子は猜疑に満ちた目でこちらを凝視してくる。青い目が爛々と輝いて圧が強い。しかし特に後ろ暗いところもない俺は、射抜かんばかりの視線を受け流して、あっさり答えた。
「まぁ、調べたので」
「そうか調べたのか……って、いや待て!」
あっさり答えたんだからあっさり流せよそこは。
「なんでそんなことを調べた!?どうやって!?」
面倒くさいなコイツ。
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