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しおりを挟む「僕ってそんなに恐れられているの?」
色んな液体で湿ったシーツの上で、頬杖をついた俺は首を傾げて尋ねた。隣のコーネンは困ったように視線を彷徨わせ、小さく唸ってから頷いた。
「そうですねぇ、恐れられていると思います」
「え、なんで」
心底驚いて呟けば、コーネンは苦笑しながら説明してくれた。
「ユウリ様は、美形過ぎますからね……。魔性の色気がございますし。力なき凡人なら、その場にいるだけでおそれをなしてしまう者もいるでしょうね」
「えー」
今生ではピロートークを頑張ると決めているので、俺はコーネンを三回抱いた後であり非常に眠かったが、彼とイチャイチャしながら事後の睦言を楽しんでいた。俺をベタ褒めするコーネンにちょっと気分が良くなりながら、俺は首を傾げる。
「ん?凡人?この間聞いた名前は、皆、高位貴族の御子息だった気がするよ?」
「あの方達も十分に凡人ですよ。微笑みで周囲を凍り付かせたりしませんから」
「えー……」
俺ってそこまでビビられてんのか。
衝撃すぎて言葉が出ない俺に向かって、なぜかコーネンはどこか自慢げに続ける。
「ちなみにユウリ様に恐れをなしている者たちは、彼らだけでなく、もっといますよ。名前を挙げる価値もない小物も大勢」
「そ、うなんだぁ……下級貴族の子達ってことかい?」
「ええ。お優しいユウリ様からの『仲良くしよう』という心からの言葉を、捻じ曲げて受け取ってしまう、矮小で性根の穢れた者達です。お気になさる必要はございません」
「あはは」
にっこりと言うコーネンの強火俺担ぶりがちょっと怖い、……けど可愛い。好かれて悪い気はしないよね。俺、許容範囲広いから、ヤンデレとか全然対応可能だし。
「本当にコーネンは僕が大好きなんだねぇ」
揶揄うつもりで言えば、「もちろんです」と即答されて、キュンときた。こんな可愛いことを言ってくれるなら、今夜はまだまだサービスせねばなるまい。俺はそう決意して、手始めにコーネンの体を抱き寄せた。汗ばんだ肌は吸い付くような感触で、実に俺好みだ。手入れを頑張っているようで素晴らしい。
「はい、と頷いて手をとれば、こんなめくるめく快感を与えて頂けるの、に、んっ……はぁ……愚かで憐れな者達です……あっ」
「ふふっ、そうだねぇ」
優越感に浸っているらしい可愛い侍従の耳の穴に舌を差し入れて擽りながら、俺はふぅ、と熱い吐息を吹き込む。
「あ……あぁ……」
「僕の手をとれば、君みたいに、きもちよぉくなれたのにねぇ」
「んっ、ふぁッ」
そぉっと体のラインを触れるか触れないかの強さでなぞり、再び首をもたげ始めた可愛らしいミニ・コーネンをチョンと撫でれば、コーネンはぶるぶると体を震えさせた。俺は甘くて優しい後戯、からのもう一発を狙って、コーネンの体を再び昂らせていく。
「ユウリ様は……ふぅっ、んッ、神より性愛の恩恵を、授けら、ぁ、れたとしか、思えませ、んぅッ」
「へぇ、どうして?」
「だって、こんなテクニック……聞いたことがありませんっ、んああっ」
たしかに、この世界は少々単純で分かりやすいセックスしか存在しないようだ。この世界を作った腐った神様は、きっと経験が少なくていらっしゃるのだろう。
王太子の婚約者として受けた閨房術の授業も、無味乾燥なつまらない内容だった。王国で一番の教師が呼び寄せられているはずなのに、だ。
コーネンも、どうやら初めてではなかったようだが、前世で培われた俺のスーパーテクの前にはあっという間に陥落し、雌堕ちした。もちろん他の雌堕ちボーイズもだ。
こんなところに性感帯があるなんて、と日々怯えながら夢中になっていく姿は可愛くて、開発のしがいがあった。
「恩恵ねぇ……聖者、つまり、聖魔法の使い手みたいに、かい?」
「ん、はいっ、……あっ、そこはッ」
俺の指先の動きに合わせて、甘やかな喘ぎ声をあげながらコーネンはビクンビクンと身を震わせる。まるでコーネンという楽器を俺が奏でているような気分だ。
「なるほど、それならばさしずめ、聖魔法ならぬ性魔法だな」
「ひゃっ、んぁああっ、あああああんっ」
くだらなすぎるオヤジギャグに、言った後で『スン……』となったが、ちょうどミニ・コーネンを摘んで先っぽをいじりまくっていた時だったのが幸いだった。コーネンは悲鳴のような嬌声をあげながら果てていたので、俺の低レベルすぎるギャグは聞こえていなかっただろう。セーフだ。
聖者と呼ばれる聖魔法の使い手は、本性が『聖性』であると言う。大層心根の清らかで美しい人物で、周囲に恵みをもたらす。人々は聖者の放つ清らかな空気に癒しを感じ、聖者が動けば見惚れ、話せば聞き惚れるという。
非常に稀な存在で、めったに現れることはない。
しかし、今の時代には、同世代に一人いる。
名前を、イシャ・ド・インセジュと言う。
これまでほとんど名前を聞かなかった彼は、インセジュ伯爵家の三男で、いかにも主人公らしい生い立ちの少年である。
そして、ものすごく俺好みの美少年だ。
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