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「女がいないから、どうしようもねぇんだけどさ」

人一倍性的欲求が強い俺である。
体の発育もよく、十歳で早々に精通を迎え、それ以来四年間、シコシコと毎日十回までを目標に、せっせと己を慰めていた。

が、しかし。
そんな虚しい単純作業的自慰に、とうとう耐えられなくなってきたのだ。

「ぅぬぁあああああ!ちくしょう!女を抱きてぇッ!!」

俺の愛らしい薔薇色の唇から本能の悲鳴が迸った。俺は人目のないところでは、本能のままに生きる男なのである。

「もうダメだ、耐えられない……!」

悲壮な声で絞り出されるのは、ものすごく本能に正直で、お下劣な願望だ。

「突っ込みてぇ。前世みたいに巨乳が良いとか華奢な子が良いとか、目がくりっと二重で口がぽってりしてて可愛い系より綺麗系が良いとか、贅沢は言わねぇよ!女であればいい。っていうか、もう、穴さえあればいいから……!」

我ながら、結構最低な願いであることは承知している。でも、切実な本音なのだ。
俺は「神よ我に女を与え給え」と祈ろうとした。が、しかし。

「……待てよ」

ふと、凄いことに気がついた。

「……穴、男にもあるじゃん?」

雷に打たれたような衝撃だった。
そうじゃん、男にも穴あるじゃん?
だって、俺、あのバカ親父に「お前が産め」とか言われたじゃん。

「え、俺なんで気づかなかったんだ!?親父の『お前が産め』発言のせいで、自分は女ポジ確定だと思い込んでいた!?」

目の前がサッと開けたかのようだ。
世界が明るく見える。

「要はウシロが未通ならいいんでしょ?じゃあ、俺が突っ込めば万事解決じゃん!?」

なんで気が付かなかったのだろう。
気づいてみればこんな単純明快なことはない。

「うっわぁー!DESEMO商社のペニス野郎と呼ばれた俺としたことが!」

前世のあだ名を思い出し、俺は羞恥に打ち震える。なんてことだ。俺は自ら雌に成り下がっていたのか!

「くっ、屈辱だ……っ!」

前世では女を何人も侍らせていたタイプだったのに。
前世の記憶が強かった頃は、『俺の希望も聞かずに王太子の婚約者ってなんだよ?え?しかも俺が産む側?雌ポジ?ありえなくない?俺ってばわりと雄なのだが?』とか怒り狂ってたくせに。
王家との契約だから従うしかないって言われて、おとなしくシコシコ自慰して我慢なんかしていたのだ。

この俺が。
ペニス野郎と呼ばれたこの俺が!

「……まじかぁ」

慣れって怖い。
思い込みって怖い。
俺は、あの頃の心意気を忘れていた。

……よし!
これからは雄モード全開で行くぞ!

「まぁ雄と言うには、俺の顔はちょっと可愛すぎるけどな!」

俺ってば花のような美少年だからなぁ。
そもそもこの世界、美形が多すぎるんだよなぁ。俺ほどじゃないにしても、わりと華奢な綺麗系から細マッチョ、ガチムチまでよりどりみどり何でもござれ状態だ。きっとBL世界だからだろう。

「まぁでも、おかげで俺の食指が動きそうなカワイコチャンも結構居そうな気がするんだよねぇ~!ぶっちゃけ俺、顔さえ好みなら、穴の種類とかボインの有無とかは、瑣末な問題な気がするしっ」

俺はウキウキと立ち上がり、両足で雄々しく地を踏み締めて立つ。

「よしっ、ガンガン行くぜぇ!」



手始めに、侍従のコーネンを喰っちまおう。
俺に心酔してるから、裏切ったり密告したりしなさそうだし。

っていうか俺、単純にアイツの顔が好みなんだよな!


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