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それは一輪の花のように
根拠
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船に乗り、海へと出る。
波は、今まで経験したことがないほどに高く、荒れに荒れていた。それは地図に描かれた赤い×印へ近づくほどに酷くなる。
これが、『漆黒』へ向かうということなんだろう。いつもは明るいUnfinishedだが、今は静かだ。船の上で、それぞれがそれぞれの思うままに過ごしている。
僕は一人甲板にでていた。前ならば簡単に振り落とされてしまうであろう高い波。しかしそれに耐えられるのは今まで歩んできた道があるから。……そう信じている。
なぜ甲板にいるのか? 漆黒に近づくにつれ、魔物が出てきた。海の上でだ。鳥のように空を飛ぶもの、海から飛び出てくるもの、たくさんいる。僕はそれを倒していった。
なぜか? 別に放置していてもいいのだ。船を壊すだけの力はないし、襲ってきたとしてもUnfinishedのメンバーなら簡単に倒せる相手。……僕は、少しでもレベルをあげておきたかった。
個性の塊'sでも苦戦する……いや、苦戦しているような相手に、これから挑むのだ。個性の塊'sの攻撃が通らず、平然と立っていた彼を、痛みと闇に襲われ、ただ一人苦しんでいた彼を、僕らは、これから助けに行くのだ。レベルは高いに越したことはない。それで、少しでもあげようと、ここで戦っているのだ。
「ウタ」
もちろん、体力の消耗も激しい。しかし、そんなことを気にはしていられない。僕はUnfinishedのリーダーだ。『勇気』が発動できなかったとしても、みんなを守る義務がある。そのためには身を削ってでも、力をつけていくんだ。
「……ウタ?」
それに、僕は約束していたじゃないか。あの日彰人さんと、アリアさんのことを守るって、ずっと近くにいるって。
……そういえば、一緒に旅に出るきっかけになったのはディランさんの失踪。僕は、自分の使命を探しに、だ。僕の使命って、結局なんなんだろう? 世界を守ること? 滅ぼすこと? それとも……
「ウタっ!」
「え、あ、アリアさん……?」
「いつまで一人でそこにいる! いい加減に中には入れ……漆黒に着く前に、からだ壊すぞ」
「……でも、僕は、Unfinishedのリーダーです」
僕はアリアさんに背を向ける。その意味は……よくわかっていた。それでも背を向けた。
「僕が何とかしなくちゃ。僕が、ここに導いたんだから……」
「…………」
アリアさんの足音が遠ざかり……すごい勢いで迫ってきた。何事かと振り向けば、頭に強い衝撃が走る。
「いっ……たっ、叩くことないじゃないですかぁ!」
「全く、今さらこんな当たり前のことを言うのもどうかと思うけどな? 私たちはお前を信じてる! 信頼している。だからなんの心配もない!」
「でもっ」
「お前は信用していないのか!? 自分の仲間を、私たちを! ……私たちは、お前がいなくても、アキヒトたちに勝てたぞ。攻撃を耐えて、お前が戻ってくると信じて、そして今ここにいる」
「…………」
僕は……また、おかしなことを考えてしまっていたようだ。
「お前は、自分の仲間を信じられないって言うのか!? 今まで一緒に戦ってきた仲間を、自分が守らなければいけないような弱い存在だと思っているのか!?」
「違うっ! ……違います、決して」
「…………だろう?」
アリアさんはにこりと笑って、僕の隣にたつ。……やはり、アリアさんの隣は安心する。なんてったって、僕の信頼する仲間、Unfinished第一号は、アリアさんなのたから。
あの日、途方にくれていた僕に、声をかけてくれたアリアさんなのだから。だから、助けたいと思ったし、僕も助けられてる。
「…………もうすぐ、旅が終わるな」
「……はい」
「どうだった?」
「……短かった、ですね。僕にとっては。……アリアさんは、どうですか?」
「んー……長かった、かな」
波が大きくたち。アリアさんの頬を濡らす。……いつかみたあの表情と重なった。
「色々ありすぎたんだよ、この旅は……。もっとのんびりだらりとした度だと思ってたぞ?」
「アリアさんの誕生日までの期限つきですよね? そんなに余裕なかったですよ、そもそもは」
「最初行った先でポロンと会って、おさくに押し売りされて、アイリーンがめちゃくちゃ強くて」
「次の街では、テラーさんに会って、メヌマニエと両親からフローラを救いました」
「サラ姉さんとドロウと会えたのはよかったけど、そのあとは辛かった」
「僕らの勝ちです」
「そうだな……」
アリアさんは、空を見上げる。つられて上を見上げれば、星の淡い光が、だんだんと飲み込まれていっているのがわかる。
漆黒――その名にふさわしい佇まいだと思った。全ての光を飲み込み、無へ帰す存在。
「あれが……漆黒……」
「そうみたいだな。……覚悟はいいか? ウタ。私たちは、あれに挑むんだぞ」
「…………」
じっと、それを見つめた。勝てる気がしない。まるで勝てない。そんな存在だ。……なんとなく、強い力を感じる、恐ろしいものだ。
……けど。
「……大丈夫です、僕らなら」
「その根拠は?」
「……勘です!」
アリアさんが、優しく微笑んだのがわかった。
波は、今まで経験したことがないほどに高く、荒れに荒れていた。それは地図に描かれた赤い×印へ近づくほどに酷くなる。
これが、『漆黒』へ向かうということなんだろう。いつもは明るいUnfinishedだが、今は静かだ。船の上で、それぞれがそれぞれの思うままに過ごしている。
僕は一人甲板にでていた。前ならば簡単に振り落とされてしまうであろう高い波。しかしそれに耐えられるのは今まで歩んできた道があるから。……そう信じている。
なぜ甲板にいるのか? 漆黒に近づくにつれ、魔物が出てきた。海の上でだ。鳥のように空を飛ぶもの、海から飛び出てくるもの、たくさんいる。僕はそれを倒していった。
なぜか? 別に放置していてもいいのだ。船を壊すだけの力はないし、襲ってきたとしてもUnfinishedのメンバーなら簡単に倒せる相手。……僕は、少しでもレベルをあげておきたかった。
個性の塊'sでも苦戦する……いや、苦戦しているような相手に、これから挑むのだ。個性の塊'sの攻撃が通らず、平然と立っていた彼を、痛みと闇に襲われ、ただ一人苦しんでいた彼を、僕らは、これから助けに行くのだ。レベルは高いに越したことはない。それで、少しでもあげようと、ここで戦っているのだ。
「ウタ」
もちろん、体力の消耗も激しい。しかし、そんなことを気にはしていられない。僕はUnfinishedのリーダーだ。『勇気』が発動できなかったとしても、みんなを守る義務がある。そのためには身を削ってでも、力をつけていくんだ。
「……ウタ?」
それに、僕は約束していたじゃないか。あの日彰人さんと、アリアさんのことを守るって、ずっと近くにいるって。
……そういえば、一緒に旅に出るきっかけになったのはディランさんの失踪。僕は、自分の使命を探しに、だ。僕の使命って、結局なんなんだろう? 世界を守ること? 滅ぼすこと? それとも……
「ウタっ!」
「え、あ、アリアさん……?」
「いつまで一人でそこにいる! いい加減に中には入れ……漆黒に着く前に、からだ壊すぞ」
「……でも、僕は、Unfinishedのリーダーです」
僕はアリアさんに背を向ける。その意味は……よくわかっていた。それでも背を向けた。
「僕が何とかしなくちゃ。僕が、ここに導いたんだから……」
「…………」
アリアさんの足音が遠ざかり……すごい勢いで迫ってきた。何事かと振り向けば、頭に強い衝撃が走る。
「いっ……たっ、叩くことないじゃないですかぁ!」
「全く、今さらこんな当たり前のことを言うのもどうかと思うけどな? 私たちはお前を信じてる! 信頼している。だからなんの心配もない!」
「でもっ」
「お前は信用していないのか!? 自分の仲間を、私たちを! ……私たちは、お前がいなくても、アキヒトたちに勝てたぞ。攻撃を耐えて、お前が戻ってくると信じて、そして今ここにいる」
「…………」
僕は……また、おかしなことを考えてしまっていたようだ。
「お前は、自分の仲間を信じられないって言うのか!? 今まで一緒に戦ってきた仲間を、自分が守らなければいけないような弱い存在だと思っているのか!?」
「違うっ! ……違います、決して」
「…………だろう?」
アリアさんはにこりと笑って、僕の隣にたつ。……やはり、アリアさんの隣は安心する。なんてったって、僕の信頼する仲間、Unfinished第一号は、アリアさんなのたから。
あの日、途方にくれていた僕に、声をかけてくれたアリアさんなのだから。だから、助けたいと思ったし、僕も助けられてる。
「…………もうすぐ、旅が終わるな」
「……はい」
「どうだった?」
「……短かった、ですね。僕にとっては。……アリアさんは、どうですか?」
「んー……長かった、かな」
波が大きくたち。アリアさんの頬を濡らす。……いつかみたあの表情と重なった。
「色々ありすぎたんだよ、この旅は……。もっとのんびりだらりとした度だと思ってたぞ?」
「アリアさんの誕生日までの期限つきですよね? そんなに余裕なかったですよ、そもそもは」
「最初行った先でポロンと会って、おさくに押し売りされて、アイリーンがめちゃくちゃ強くて」
「次の街では、テラーさんに会って、メヌマニエと両親からフローラを救いました」
「サラ姉さんとドロウと会えたのはよかったけど、そのあとは辛かった」
「僕らの勝ちです」
「そうだな……」
アリアさんは、空を見上げる。つられて上を見上げれば、星の淡い光が、だんだんと飲み込まれていっているのがわかる。
漆黒――その名にふさわしい佇まいだと思った。全ての光を飲み込み、無へ帰す存在。
「あれが……漆黒……」
「そうみたいだな。……覚悟はいいか? ウタ。私たちは、あれに挑むんだぞ」
「…………」
じっと、それを見つめた。勝てる気がしない。まるで勝てない。そんな存在だ。……なんとなく、強い力を感じる、恐ろしいものだ。
……けど。
「……大丈夫です、僕らなら」
「その根拠は?」
「……勘です!」
アリアさんが、優しく微笑んだのがわかった。
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