上 下
271 / 387
届かない想いに身を寄せて

作戦実行!

しおりを挟む
「ギルドカードを」

「……はい」


 かなり強面なその人に、僕らはギルドカードを渡した。それを確認すると、その人はギルドカードを返し、道を開ける。


「早く行け」

「は、はい!」


 そそくさとその場を走り抜け、ホッと一息。


「全く……あぁも検問が多くちゃ、着くまでに日が暮れてしまうな」

「そうですね……無事にたどり着ければいいんですけど」

「あいつらが保証できないって言うんだ。……危険なことには変わりないさ」


 今、僕とアリアさんはミネドールを出て、北から回り込む形でクラーミルの王都に入ろうとしていた。ひたすら北に進み続け、ようやく街に出たと思ったら今度は検問地獄だ。
 ……まぁ、クラーミル内では国王と女王が殺されたことになっているわけだから、当たり前といっては当たり前のことなんだけと。


「にしても……本当にすごいな、個性の塊's」


 そう、そうすると疑問になってくるのは、どうして僕らは検問をクリアできたのか、ということだ。その秘密はギルドカードと僕らの見た目にある。


「よし、じゃあ囮になってもらおうか!」


 ニッコリと笑って、当たり前のことを言うかのように、ジュノンさんは爆弾発言を投げ込んだ。
 ……いや、いやいやいや。


「しれっととんでもないこと言わないでくれます!?」

「いやいや、冗談でいってるんじゃないよ?」

「なおさらですよ!」

「はーい、ギルドカード出してねー」

「何するんですか!?」

「死なない風にしてあげるんだよ」

「風……」

「ウタ……」

「抵抗しても無駄な気がします」

「奇遇だな、私もだ」


 僕らからギルドカードを受け取ったジュノンさんは、アイテムボックスから、小さな本を取り出す。


「あ、単語帳」

「ムーディーフライ、学歴を修正する」

「ジュノンが言うと雰囲気変わるな」


 ジュノンさんが持っていたギルドカードがほんの少し光り、それを確認したジュノンさんは、それを隣にいたおさくさんに見せる。


「どう?」


 すると、なぜかおさくさんは吹き出し、笑いながら他のメンバーを手招きする。


「ちょ、ちょ……」

「……どんな内容にしたの、ジュノン」

「いやいや、ふつーだよ? ふつー」

「……あっ」

「ドロウも微妙な反応やめてくれるかな?」

「これは……」

「ウタくん大変だねー」

「え、怖い」

「まぁいいや、はい」


 ジュノンさんから手渡されたギルドカードは、内容が見事に変わっていた。
 『マルティネス・アリア(18) ランクB』だったものが、『クリアネル・サミラ』に、『ヤナギハラ・ウタ(17) ランクB』だったものが、『ハラライ・オト』になっていた。

 なるほどなるほど、修正されていますねー……って、そうじゃない。
 名前が……まるっきり……違う……。っていうか、『オト』って、ウタよりも女の子っぽい名前……。


「これは……」

「ちゃちゃっとギルドカードを偽証したから」

「それ大罪だぞ!?」

「名前だけ差し替えただけだからっ」

「ちなみに『オト』ってなんか男っぽくないじゃん? その通り、女の子の名前です」

「…………ドウイウコトデショウカ」

「ウタくんさ、女装してよ」

「なんでですか!?」

「全体的に女子っぽいから?」

「テラー、頼んだ」

「よしきた。いい感じの服くらい出せるぞー」

「待ってくださいよー!」


 ……色々あって、僕は男の娘にされたらしい。なぜだ。
 髪を伸ばされ一つ結びに。目も、自分ではよく分からないが、緑色になっているらしい。
 まぁおかげでバレてはいない。アリアさんはフードつきの服を着て、髪を全部その中にいれ、目の色と肌の色をテラーさんに変えてもらっていた。赤い瞳は深い青に、肌は褐色に。全くの別人に見えるが……これはこれで、美人だ。


「なんとかなるもんだな」

「そうですね、あ……サミラさん」

「オト、気を付けろ」

「すみません」


 僕らが二人っきりでクラーミルに向かう理由……それは、目立たないから、というのが大きな理由だった。
 もちろん、寝たままのポロンくんたちを起こすわけにいかないのはもちろん、個性の塊'sが一緒にいると、安全だけど目立つ。近づくことができなくなってしまう。

 その点、二人ならばある程度こそこそ動くのにも適した人数だ。容姿を変えたりだとか、そういう部分でも二人なら言うほど面倒じゃない。


「……で、アールたちが起きたら、城の前にいく計画だったよな」

「そうです。僕らに連絡、来るはずですよ!」


 アールと言うのはレイナさんとロイン……二人のことだ。
 個性の塊'sの見解……というか、当たり前のことなのだが、クラーミルの国民たちは、自分達の国王、女王が殺されたかる怒り狂っている訳なんだ。
 ならば、二人が死んでいないことを証明すればいい。生きている姿を見せればいい。……つまりはそういうことなのだ。


「しかし……ブリスのやつ、一体いつから潜り込んでいたんだろうな」

「結構前から……みたいでしてもんね」

「……例えばの話だ。軽く聞き流してくれ」


 そう前置きすると、アリアさんはどこか虚空を眺めながら、ポツリと呟いた。


「……もし、あいつの目的が二カ国の戦争なのだとしたら、もっとら楽な方法があると思うんだ」

「うーん、確かに」


 この件……まだもう少し、裏がありそうです。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

転生調理令嬢は諦めることを知らない

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。  主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。  追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。  2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。

異世界母さん〜母は最強(つよし)!肝っ玉母さんの異世界で世直し無双する〜

トンコツマンビックボディ
ファンタジー
馬場香澄49歳 専業主婦 ある日、香澄は買い物をしようと町まで出向いたんだが 突然現れた暴走トラック(高齢者ドライバー)から子供を助けようとして 子供の身代わりに車にはねられてしまう

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

貴方の隣で私は異世界を謳歌する

紅子
ファンタジー
あれ?わたし、こんなに小さかった?ここどこ?わたしは誰? あああああ、どうやらわたしはトラックに跳ねられて異世界に来てしまったみたい。なんて、テンプレ。なんで森の中なのよ。せめて、街の近くに送ってよ!こんな幼女じゃ、すぐ死んじゃうよ。言わんこっちゃない。 わたし、どうなるの? 不定期更新 00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

処理中です...