192 / 387
魔王だよ! 全員集合!
成長
しおりを挟む
クラーミルへ向かう道中、僕は船に揺られながら自分のステータスを確認していた。
名前 ウタ
種族 人間
年齢 17
職業 冒険者
レベル 23
HP 34500
MP 18400
スキル 言語理解・アイテムボックス・鑑定・暗視・剣術(中級)・体術(中級)・初級魔法(熟練度5)・光魔法(熟練度3.5)・炎魔法(熟練度3)・氷魔法(熟練度2)・水魔法(熟練度1.5)・風魔法(熟練度1)・土魔法(熟練度1)・回復魔法(熟練度2)・使役(中級)・ドラゴン召喚
ユニークスキル 女神の加護・勇気・陰陽進退
称号 転生者・ヘタレ・敵前逃亡・B級冒険者・Unfinished
……うん、やっぱりそうだよね。見間違いじゃないよね。
「増えてる……」
「ん? どうした、ウタ?」
アリアさんは舵を握りながら僕に訊ねる。僕はその後ろで柱に体を預け、ぼんやりとステータスを眺めていた。
「知らない間に、属性魔法が増えてます」
マルティネスに帰ったとき、水魔法が増えていた。そして今回、人身売買グループとのもろもろが終わって、気がついたら風魔法と土魔法が増えているのだ。
「良かったじゃないか。リヴィーとかは使い勝手あるし、風魔法も使いようによっては便利だろ?」
「でも、普通こんなに習得できるんですかね? 個性の塊'sならともかく、僕はただの転生者ですし……」
「ま、広い分野に対して相性がよければ、そりゃ属性魔法も多く習得出来るだろう。普通は偏るが、全部使える人もいないわけじゃない」
「んー……」
「そんなに気になるのか?」
「気になるっていうか……はぁ! この世界に来てから覚えることが多すぎて、頭がパンクしてきました……」
「まぁ……魔法は半分フィーリングだ。初級魔法と、得意な属性魔法を上手く扱えるようになればいい。
それに、今度また、テラーに会うことがあれば、教えてもらえばいいだろう? 元職業魔法使いだ。魔法に関してはスペシャリストだからな」
テラーさんの名前が出てきて、僕はこれから会いに行く、もう一人について考えた。
個性の塊's最強のリーダーであり、仲間ですら魔王だと言い切るその人……ジュノン。
今まで会った塊'sのメンバーだって、十分すぎるくらいに強かった。それでも、それを上回るほどの強さ。それも、話だけ聞くに、圧倒的な強さ。
「気になるなぁ。どんな人なんだろう、ジュノンさん」
「さぁな。でもまぁ、塊'sのリーダーだ。今さら、どんなやつでも驚かない」
すると、後ろからドタドタと足音がして、操縦室の扉が開き、フローラとポロンくんが入ってきた。
「見てくれよアリア姉! ウタ兄!」
「お魚、こんなに大きいの釣れましたー! しかもたくさん!」
「わぁ! ほんとだ、すご…………。
これ、今日の夜ご飯?」
「……刺身で食えるらしいから、目は気にしなくてもいいと思うぞ」
「そっか!」
「あからさまに態度変わるな! 全くもう……スラちゃんも大変だなー、ウタ兄のこと助けるの」
「ぷる(そりゃもう)」
「うっ……ごめんって」
するとフローラが、あっと小さく声をあげた。
「そういえば、ドラくんって、どうしてウタさんに遣えてるんですか? スラちゃんとはまだしも、ドラゴンなんて……普通に考えたら、あり得ないことですよね?」
「まぁ、僕の場合は偶然に偶然が重なって……あはは。ご飯の時にでものんびり話すよ」
「話してくれるんですね!」
「隠すようなことじゃないし」
……そういえば、ミーレスとの一件があってから召喚を控えていたせいか、しばらくドラくんに会ってないことを思い出した。
「アリアさん、ちょっと甲板出てきますね」
「あぁ。どうした、急に」
「ドラくんに会いたくなって! この辺、迷惑になるような場所無いですよね?」
「あぁ、暴れたりしなけりゃ一番近い島からも見えないし、問題ないと思う」
「じゃ、おいらたちは魚さばいとくか!」
「そうだね! いっぱい取れたから煮付けもつくろっか!」
僕はちょっとウキウキしながら甲板に出て、手を前に出した。
「ドラゴン召喚っ!」
現れるのは漆黒の翼を持った、ドラゴン。西の王、ダークドラゴン。
「……久しいな。今回はどうした?」
「んー、どうもしてないかな」
「どうもしてない?」
「しばらく会ってなかったからさ、元気かなーって。会いたくなっちゃった。ダメだった、かな?」
ドラくんはちょっと驚いた感じで目を丸くしたけど、そのあとすぐ、柔らかく微笑んだような気がした。
「なんだ……そんなことか。お主は我の主なのだぞ? 良くないわけがないだろう」
「怪我は、もう大丈夫?」
「あぁ、もうすっかりだ。お主はどうだ? あのあと大事ないか?」
「うん! 平気だよ!」
するとドラくんは僕のことをじっと見て、やがて小さく笑みをこぼした。
「え……なに? なんか顔についてる?」
「いや……人間は成長する生き物だなぁと思ってな」
「成長……?」
「あのときのお主はレベルも低く、戦闘の経験もなく、今よりもっと臆病でビクビクして、我の顔をまともに見ることも出来なかった。
しかし今は、こうして、目を見て、話すことが出来る。根本は変わっていないかもしれない。
しかしウタ殿……お主は、我から見て、確実に成長している」
「――――」
僕が……成長、か。
それが本当なら、嬉しいな。
でも……僕は、僕の根元はまだ全然変わっていない。
「…………そうかな。ありがとう」
「少し、背に乗るか?」
「うん、乗りたい!」
僕がヘタレになった原因……。
僕が一番恐れているものは、焼き魚の白い目でも、ドラくんのちょっと鋭い金色の瞳でも、ましてや自分の死ですらない。
大切な人の命が『また』失われることなのだから。
名前 ウタ
種族 人間
年齢 17
職業 冒険者
レベル 23
HP 34500
MP 18400
スキル 言語理解・アイテムボックス・鑑定・暗視・剣術(中級)・体術(中級)・初級魔法(熟練度5)・光魔法(熟練度3.5)・炎魔法(熟練度3)・氷魔法(熟練度2)・水魔法(熟練度1.5)・風魔法(熟練度1)・土魔法(熟練度1)・回復魔法(熟練度2)・使役(中級)・ドラゴン召喚
ユニークスキル 女神の加護・勇気・陰陽進退
称号 転生者・ヘタレ・敵前逃亡・B級冒険者・Unfinished
……うん、やっぱりそうだよね。見間違いじゃないよね。
「増えてる……」
「ん? どうした、ウタ?」
アリアさんは舵を握りながら僕に訊ねる。僕はその後ろで柱に体を預け、ぼんやりとステータスを眺めていた。
「知らない間に、属性魔法が増えてます」
マルティネスに帰ったとき、水魔法が増えていた。そして今回、人身売買グループとのもろもろが終わって、気がついたら風魔法と土魔法が増えているのだ。
「良かったじゃないか。リヴィーとかは使い勝手あるし、風魔法も使いようによっては便利だろ?」
「でも、普通こんなに習得できるんですかね? 個性の塊'sならともかく、僕はただの転生者ですし……」
「ま、広い分野に対して相性がよければ、そりゃ属性魔法も多く習得出来るだろう。普通は偏るが、全部使える人もいないわけじゃない」
「んー……」
「そんなに気になるのか?」
「気になるっていうか……はぁ! この世界に来てから覚えることが多すぎて、頭がパンクしてきました……」
「まぁ……魔法は半分フィーリングだ。初級魔法と、得意な属性魔法を上手く扱えるようになればいい。
それに、今度また、テラーに会うことがあれば、教えてもらえばいいだろう? 元職業魔法使いだ。魔法に関してはスペシャリストだからな」
テラーさんの名前が出てきて、僕はこれから会いに行く、もう一人について考えた。
個性の塊's最強のリーダーであり、仲間ですら魔王だと言い切るその人……ジュノン。
今まで会った塊'sのメンバーだって、十分すぎるくらいに強かった。それでも、それを上回るほどの強さ。それも、話だけ聞くに、圧倒的な強さ。
「気になるなぁ。どんな人なんだろう、ジュノンさん」
「さぁな。でもまぁ、塊'sのリーダーだ。今さら、どんなやつでも驚かない」
すると、後ろからドタドタと足音がして、操縦室の扉が開き、フローラとポロンくんが入ってきた。
「見てくれよアリア姉! ウタ兄!」
「お魚、こんなに大きいの釣れましたー! しかもたくさん!」
「わぁ! ほんとだ、すご…………。
これ、今日の夜ご飯?」
「……刺身で食えるらしいから、目は気にしなくてもいいと思うぞ」
「そっか!」
「あからさまに態度変わるな! 全くもう……スラちゃんも大変だなー、ウタ兄のこと助けるの」
「ぷる(そりゃもう)」
「うっ……ごめんって」
するとフローラが、あっと小さく声をあげた。
「そういえば、ドラくんって、どうしてウタさんに遣えてるんですか? スラちゃんとはまだしも、ドラゴンなんて……普通に考えたら、あり得ないことですよね?」
「まぁ、僕の場合は偶然に偶然が重なって……あはは。ご飯の時にでものんびり話すよ」
「話してくれるんですね!」
「隠すようなことじゃないし」
……そういえば、ミーレスとの一件があってから召喚を控えていたせいか、しばらくドラくんに会ってないことを思い出した。
「アリアさん、ちょっと甲板出てきますね」
「あぁ。どうした、急に」
「ドラくんに会いたくなって! この辺、迷惑になるような場所無いですよね?」
「あぁ、暴れたりしなけりゃ一番近い島からも見えないし、問題ないと思う」
「じゃ、おいらたちは魚さばいとくか!」
「そうだね! いっぱい取れたから煮付けもつくろっか!」
僕はちょっとウキウキしながら甲板に出て、手を前に出した。
「ドラゴン召喚っ!」
現れるのは漆黒の翼を持った、ドラゴン。西の王、ダークドラゴン。
「……久しいな。今回はどうした?」
「んー、どうもしてないかな」
「どうもしてない?」
「しばらく会ってなかったからさ、元気かなーって。会いたくなっちゃった。ダメだった、かな?」
ドラくんはちょっと驚いた感じで目を丸くしたけど、そのあとすぐ、柔らかく微笑んだような気がした。
「なんだ……そんなことか。お主は我の主なのだぞ? 良くないわけがないだろう」
「怪我は、もう大丈夫?」
「あぁ、もうすっかりだ。お主はどうだ? あのあと大事ないか?」
「うん! 平気だよ!」
するとドラくんは僕のことをじっと見て、やがて小さく笑みをこぼした。
「え……なに? なんか顔についてる?」
「いや……人間は成長する生き物だなぁと思ってな」
「成長……?」
「あのときのお主はレベルも低く、戦闘の経験もなく、今よりもっと臆病でビクビクして、我の顔をまともに見ることも出来なかった。
しかし今は、こうして、目を見て、話すことが出来る。根本は変わっていないかもしれない。
しかしウタ殿……お主は、我から見て、確実に成長している」
「――――」
僕が……成長、か。
それが本当なら、嬉しいな。
でも……僕は、僕の根元はまだ全然変わっていない。
「…………そうかな。ありがとう」
「少し、背に乗るか?」
「うん、乗りたい!」
僕がヘタレになった原因……。
僕が一番恐れているものは、焼き魚の白い目でも、ドラくんのちょっと鋭い金色の瞳でも、ましてや自分の死ですらない。
大切な人の命が『また』失われることなのだから。
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
転生調理令嬢は諦めることを知らない
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。
追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。
2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。
異世界母さん〜母は最強(つよし)!肝っ玉母さんの異世界で世直し無双する〜
トンコツマンビックボディ
ファンタジー
馬場香澄49歳 専業主婦
ある日、香澄は買い物をしようと町まで出向いたんだが
突然現れた暴走トラック(高齢者ドライバー)から子供を助けようとして
子供の身代わりに車にはねられてしまう
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
貴方の隣で私は異世界を謳歌する
紅子
ファンタジー
あれ?わたし、こんなに小さかった?ここどこ?わたしは誰?
あああああ、どうやらわたしはトラックに跳ねられて異世界に来てしまったみたい。なんて、テンプレ。なんで森の中なのよ。せめて、街の近くに送ってよ!こんな幼女じゃ、すぐ死んじゃうよ。言わんこっちゃない。
わたし、どうなるの?
不定期更新 00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる