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迷子の迷子の冒険者捜索!
閑話 ホワイトデー
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「どーしよっかなぁ……」
こんにちは、柳原羽汰です。今日は一人で街に買い物に来ています。
というのも、今日はホワイトデー。三人からチョコレート貰ったし、お返しを買おうと思っているのだ。当日まで買えなかったのは、なかなかタイミングが掴めなかったからで。
今日はというと、どうやら隣街のカフェで、女性子供の料金が半額になるというのをアリアさんが見つけてきたのだ。僕は男だし、対象の子供の年齢でもない。
丁度ホワイトデーの買えてなかったし、先帝からお茶に誘われたことにした。もちろん、本人の許可はその後取った。
……それにしても、だ。
「いっぱいあるなぁ……」
デパートにはホワイトデー限定の売り場みたいのがやはりできていて、お返し用のものがずらっと並んでいる。泊まっている宿に小さなキッチンはあるけれど、僕は手先が不器用だから作るのは最初から却下だ。ここで何かを買うしかない。
並んでいるのは、王道のマシュマロ、キャンディ、チョコレート、クッキー、バームクーヘンなどなど……。お菓子の種類だけで10は越えている。さらに味だとか数だとか見た目だとかを考えていると、本当にきりがない。
しかし、当日だからなのか、種類のわりに量が少ない。人も多いし、早く決めないと売り切れてしまう。
売り場を何周かぐるぐる歩き回り、うーんと唸っていると、ふと、一つのラッピングされた袋が目に入ってきた。
中身はカラフルなマシュマロ。中身自体はシンプルだけど、ラッピングがとにかく可愛らしい。ツリーみたいな見た目で、一つ一つ包装されたマシュマロには顔が描かれている。ちっちゃなキャンディも一緒に数個入っているようだ。
(これかわいいな……よし、迷いすぎてもしょうがない! これにしよう!)
僕はそれ三つと、それとは別に、小さなチョコレートの包みを持ってレジに向かった。
◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈
「……あれ? ウタくんじゃないですか!」
「ら、ライアンさん!?」
お会計を終え、宿に戻ろうとすると、そこには大量のバームクーヘンをかごにいれたライアンさんが立っていた。
「その量……っていうか、普通に出歩いてていいんですか?」
「いーのいーの。意外とバレないの僕。
これはね、侍女とかがみんなバレンタインにくれるから、そのお返しね! 予約してたの。これからお会計。僕はいつもバームクーヘンにしてるよ!」
「へぇ、何か理由があるんですか」
するとライアンさんは、僕にとってはとんでもないことを話し始めた。
「ホワイトデーのお返しって、お菓子によって意味が違うんだよ」
「え、そうなんですか?」
「そうそう! 一般的には、バームクーヘンはその人との長い付き合いを願うことを意味するから、僕は毎年それを送ってるんだ!
他にも、クッキーは『あなたは友達』とか、キャンディは『あなたが好き』とか、そういう意味になるんだよ」
「へぇー、知らなかった! ちなみに、マシュマロは?」
「マシュマロはダメだよ! それは『あなたが嫌い』って意味になっちゃうから」
「…………え」
「あっ、レジ空きそう。じゃあね!」
「ま、待って! その、お返しの意味って、アリアさん知ってるかな?」
「知ってるもなにも、それ教えてくれたの、アリア姫だよ! じゃ!」
…………。
……………………。
やってもうたぁぁぁぁぁぁ!!!
ど、どうする!? さすがにここまで知った上でマシュマロ渡せないぞ!?
買い直す? ……そ、そうだ。そうしよう!
急いで売り場に戻る……が、
「うっそ……」
僕がここを離れた後、ほとんど売れてしまっていて、残っているのはマシュマロと手作り用の材料ばかり……。こ、これは……ピンチだ! ヤバイ!
と、僕がパニックになりかけたところで、後ろから肩を叩かれた。振り向くとそこにいたのは、
「ウタくん、大丈夫?」
「テラーさん……?」
「なんか、スッゴい負のオーラ漂ってたけ」
「テラーさぁぁぁぁん!!!」
「え!? ちょ、タンマタンマ!」
「たすけてくださぁぁぁい……」
僕が今までのことを手短に話すと、テラーさんはうんうんとうなずいて、手作り用コーナーから板チョコとグラノーラを手に取った。
「キッチン貸して? 手伝ってあげるよ」
「どうにか出来ますか!?」
「これでもカフェを経営していてね」
「たっ、たたた、助かります! 本当に助かります!」
「いいから、これと、あと牛乳、買ってきて。はい」
僕は言われるがままにチョコとグラノーラと牛乳を買うと、テラーさんと宿へ向かった。
◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈
「お返しするのはウタくんだから、頑張って作ってね」
「が、頑張ります!」
どうやらマシュマロを、違う何かに作り替えるらしい。材料を新たに買ってもよかったが「もったいないから」と。
「まずチョコをきざんでくださいな」
「はいっ!」
う、チョコって案外固いな……これ、アリアさんとか大量にきざんでるのか。すごいな。
「きざんだチョコ、牛乳、マシュマロをボウルにいれて、良く混ぜて、レンジでチン」
「いかほどで」
「1分くらいかな?」
「はい! ……レンジあるっていいですね」
「電子レンジは100%グッドオーシャンフィールド製」
「ありがとうGOF」
チンと音がしたのでボウルを取り出す。あっついなぁ。
「よーくかき混ぜて、マシュマロを溶かすように」
ぐるぐるぐるぐるかき混ぜる。テラーさんはそれをちらっと見て、レンジを指差した。
「マシュマロ残っちゃってるね。じゃあもう30秒くらいチンしよう!」
「これ、テラーさん作ったことあるんですか?」
レンジにボウルを入れながら聞くと、テラーさんはうなずく。
「遠い昔、中学時代にね。ネットで見たんだけど、なんのやつだったか忘れちゃった」
レンジが再び鳴る。取り出して混ぜていると、テラーさんがグラノーラをざばっと入れた。
「ほーい、混ぜて混ぜて!」
そして、混ぜたものをパットに移し、ラップをかけ、上からぎゅっと押して、冷蔵庫で冷えるのを待つ。
「あれ、冷えたらスティック状に切ればチョコバーになるから」
そして、アイテムボックスからラッピング用の紙を取り出す。
「私の余りでよければ使ってくださいな」
「本当にありがとうございます!」
「アリアさんたちなら気にしないと思うけどね。……あとまぁ、折角だから」
「…………?」
その2時間後、
「おおおお! すげぇウタ兄!」
「ウタさん、いつの間にこんな隠し芸が……!」
「……いや、実はテラーさんに手伝ってもらってて」
僕らが作ったチョコバーはかなり好評だった。ペーパーのおかげで見た目もかわいい。
さらにテラーさんは、一緒に入ってた飴で簡単な飴細工まで一緒に作ってくれたのだ。オーブンで加熱したのを手で形にする面倒で地味な作業だけど、綺麗なバラになった。
「この花見たことないなぁ」
「あ、それは僕の住んでたところに咲いてた花です」
……バラにしたいと言ったのは僕だ。一人五個ずつ。ピンクと黄色とオレンジのバラ。
そのバラの意味は……なんて、ちょっと女々しいかな。これは僕だけの秘密にしよう。
こんにちは、柳原羽汰です。今日は一人で街に買い物に来ています。
というのも、今日はホワイトデー。三人からチョコレート貰ったし、お返しを買おうと思っているのだ。当日まで買えなかったのは、なかなかタイミングが掴めなかったからで。
今日はというと、どうやら隣街のカフェで、女性子供の料金が半額になるというのをアリアさんが見つけてきたのだ。僕は男だし、対象の子供の年齢でもない。
丁度ホワイトデーの買えてなかったし、先帝からお茶に誘われたことにした。もちろん、本人の許可はその後取った。
……それにしても、だ。
「いっぱいあるなぁ……」
デパートにはホワイトデー限定の売り場みたいのがやはりできていて、お返し用のものがずらっと並んでいる。泊まっている宿に小さなキッチンはあるけれど、僕は手先が不器用だから作るのは最初から却下だ。ここで何かを買うしかない。
並んでいるのは、王道のマシュマロ、キャンディ、チョコレート、クッキー、バームクーヘンなどなど……。お菓子の種類だけで10は越えている。さらに味だとか数だとか見た目だとかを考えていると、本当にきりがない。
しかし、当日だからなのか、種類のわりに量が少ない。人も多いし、早く決めないと売り切れてしまう。
売り場を何周かぐるぐる歩き回り、うーんと唸っていると、ふと、一つのラッピングされた袋が目に入ってきた。
中身はカラフルなマシュマロ。中身自体はシンプルだけど、ラッピングがとにかく可愛らしい。ツリーみたいな見た目で、一つ一つ包装されたマシュマロには顔が描かれている。ちっちゃなキャンディも一緒に数個入っているようだ。
(これかわいいな……よし、迷いすぎてもしょうがない! これにしよう!)
僕はそれ三つと、それとは別に、小さなチョコレートの包みを持ってレジに向かった。
◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈
「……あれ? ウタくんじゃないですか!」
「ら、ライアンさん!?」
お会計を終え、宿に戻ろうとすると、そこには大量のバームクーヘンをかごにいれたライアンさんが立っていた。
「その量……っていうか、普通に出歩いてていいんですか?」
「いーのいーの。意外とバレないの僕。
これはね、侍女とかがみんなバレンタインにくれるから、そのお返しね! 予約してたの。これからお会計。僕はいつもバームクーヘンにしてるよ!」
「へぇ、何か理由があるんですか」
するとライアンさんは、僕にとってはとんでもないことを話し始めた。
「ホワイトデーのお返しって、お菓子によって意味が違うんだよ」
「え、そうなんですか?」
「そうそう! 一般的には、バームクーヘンはその人との長い付き合いを願うことを意味するから、僕は毎年それを送ってるんだ!
他にも、クッキーは『あなたは友達』とか、キャンディは『あなたが好き』とか、そういう意味になるんだよ」
「へぇー、知らなかった! ちなみに、マシュマロは?」
「マシュマロはダメだよ! それは『あなたが嫌い』って意味になっちゃうから」
「…………え」
「あっ、レジ空きそう。じゃあね!」
「ま、待って! その、お返しの意味って、アリアさん知ってるかな?」
「知ってるもなにも、それ教えてくれたの、アリア姫だよ! じゃ!」
…………。
……………………。
やってもうたぁぁぁぁぁぁ!!!
ど、どうする!? さすがにここまで知った上でマシュマロ渡せないぞ!?
買い直す? ……そ、そうだ。そうしよう!
急いで売り場に戻る……が、
「うっそ……」
僕がここを離れた後、ほとんど売れてしまっていて、残っているのはマシュマロと手作り用の材料ばかり……。こ、これは……ピンチだ! ヤバイ!
と、僕がパニックになりかけたところで、後ろから肩を叩かれた。振り向くとそこにいたのは、
「ウタくん、大丈夫?」
「テラーさん……?」
「なんか、スッゴい負のオーラ漂ってたけ」
「テラーさぁぁぁぁん!!!」
「え!? ちょ、タンマタンマ!」
「たすけてくださぁぁぁい……」
僕が今までのことを手短に話すと、テラーさんはうんうんとうなずいて、手作り用コーナーから板チョコとグラノーラを手に取った。
「キッチン貸して? 手伝ってあげるよ」
「どうにか出来ますか!?」
「これでもカフェを経営していてね」
「たっ、たたた、助かります! 本当に助かります!」
「いいから、これと、あと牛乳、買ってきて。はい」
僕は言われるがままにチョコとグラノーラと牛乳を買うと、テラーさんと宿へ向かった。
◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈
「お返しするのはウタくんだから、頑張って作ってね」
「が、頑張ります!」
どうやらマシュマロを、違う何かに作り替えるらしい。材料を新たに買ってもよかったが「もったいないから」と。
「まずチョコをきざんでくださいな」
「はいっ!」
う、チョコって案外固いな……これ、アリアさんとか大量にきざんでるのか。すごいな。
「きざんだチョコ、牛乳、マシュマロをボウルにいれて、良く混ぜて、レンジでチン」
「いかほどで」
「1分くらいかな?」
「はい! ……レンジあるっていいですね」
「電子レンジは100%グッドオーシャンフィールド製」
「ありがとうGOF」
チンと音がしたのでボウルを取り出す。あっついなぁ。
「よーくかき混ぜて、マシュマロを溶かすように」
ぐるぐるぐるぐるかき混ぜる。テラーさんはそれをちらっと見て、レンジを指差した。
「マシュマロ残っちゃってるね。じゃあもう30秒くらいチンしよう!」
「これ、テラーさん作ったことあるんですか?」
レンジにボウルを入れながら聞くと、テラーさんはうなずく。
「遠い昔、中学時代にね。ネットで見たんだけど、なんのやつだったか忘れちゃった」
レンジが再び鳴る。取り出して混ぜていると、テラーさんがグラノーラをざばっと入れた。
「ほーい、混ぜて混ぜて!」
そして、混ぜたものをパットに移し、ラップをかけ、上からぎゅっと押して、冷蔵庫で冷えるのを待つ。
「あれ、冷えたらスティック状に切ればチョコバーになるから」
そして、アイテムボックスからラッピング用の紙を取り出す。
「私の余りでよければ使ってくださいな」
「本当にありがとうございます!」
「アリアさんたちなら気にしないと思うけどね。……あとまぁ、折角だから」
「…………?」
その2時間後、
「おおおお! すげぇウタ兄!」
「ウタさん、いつの間にこんな隠し芸が……!」
「……いや、実はテラーさんに手伝ってもらってて」
僕らが作ったチョコバーはかなり好評だった。ペーパーのおかげで見た目もかわいい。
さらにテラーさんは、一緒に入ってた飴で簡単な飴細工まで一緒に作ってくれたのだ。オーブンで加熱したのを手で形にする面倒で地味な作業だけど、綺麗なバラになった。
「この花見たことないなぁ」
「あ、それは僕の住んでたところに咲いてた花です」
……バラにしたいと言ったのは僕だ。一人五個ずつ。ピンクと黄色とオレンジのバラ。
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