153 / 387
声にならない声を聞いて
分け与えられた「勇気」
しおりを挟む
「…………」
「…………」
ジャッジメントの光が消えても、僕らはしばらく立ち尽くしたままでいた。大きく地面が抉れ、円状に凹んでいた。ミーレスはその場に倒れ、ピクリとも動かない。僕はそっと近づいて、しゃがみこみ、脈を調べてみる。
……うん、脈はある。僕はほっとして立ち上がり、アリアさんの方をみる。
「……終わりましたね」
そう言いながらアリアさんの方へ歩いていくと、優しく微笑みなから、言葉を返された。
「あぁ……。終わった、な」
アリアさんがそう微笑んだ瞬間、頭上に何か大きなものが現れ、影が出来る。
「ウタ殿、アリア殿……!」
「ドラくん?!」
「ほら、心配することなかったでしょ?」
「……と、塊's?」
アリアさんがそれを見て何かを言おうとすると、
「ストーップ!」
そう言うアイリーンさんが僕らの口にチョコレートを突っ込み、その言葉は遮られた。
「んぐっ?!」
「はい回復かんりょー。
私たちよりー、もっと心配してる人がいるんだから。その人たちが先ー!」
「…………!」
「ね?」
「んじゃ、こいつはうちらがお持ち帰りしますかっと」
「ですなー。ドラくーん、二人乗っけてきてあげてー!」
「言われなくとも」
ドラくんがそう答えると、塊'sはミーレスの首根っこを捕まえるとものすごい勢いで走っていった。……はや。
「…………なぁ」
ふいに、アリアさんがドラくんを突っつく。
「どうした、アリア殿」
「ちょっとだけ……。ちょっとだけ、後ろ向いててくれないか?」
「…………? 心得た」
そうして、ドラくんが僕らから視線を逸らしたのを確認すると、アリアさんは僕を見て、駆け寄り、
「ウタっ…………!」
「う、わ……!?」
そのままぎゅっと抱きついた。突然のことに僕は体を支えきれなくて、尻餅をついた。
「あ、アリアさん……?!」
「……ありがとう」
はっとした。声は、震えていた。
僕はどうしたらいいのか迷いながら、そっと片手をアリアさんの頭にやった。
「……あはは。お疲れさまでした」
「子供扱いすんな。バカ」
「あっ、そういえば服……」
気がついた瞬間、アリアさんの素肌が目に飛び込んできて顔が熱くなった。え、えっと……。
僕はアリアさんを少し離して、視線もちょっと逸らして、ベストを脱ぎながら言う。
「き、気休めですけど、これ着ときます?」
「これくらい大丈夫だぞ? 胸とか見えてないし」
「僕はだいじょばないです。というかそういうの普通に言うの止めてくださいね?」
脱いだベストをバサッとかけ、アリアさんが腕を通すと、少し大きいのが幸をそうして大分ましになった。
「うん、これでよし。……にしても」
「ん?」
「アリアさん、強すぎません?」
「……ん?」
「ん? じゃないですよ。だって、ステータスは普通で……ええええええっ?!」
「な、なんだ!? 急に大きな声出すな!」
「アリアさん! 自分のステータス! ステータス! はい、せーのっ!」
「す、ステータス!」
名前 アリア
種族 人間
年齢 18
職業 皇女
レベル 4300
HP 6880000
MP 4300000
スキル アイテムボックス・剣術(超上級)・体術(超上級)・初級魔法(熟練度50)・光魔法(熟練度40)・水魔法(熟練度40)・氷魔法(熟練度20)・雷魔法(熟練度30)・回復魔法(熟練度20)
ユニークスキル 王室の加護・魔力向上・ジャッジメント・勇気
称号 次期女王・不屈の精神・甘い物好き・C級冒険者
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
「き、気づいてなかったんですか?!」
「気づいてなかった……」
「なぁ、とても気になる。振り向いてもいいか?」
「あ、あぁ」
なぜか僕とアリアさんは地面に正座をする。そして、一つ息を吐いて、アリアさんが僕に言う。
「えー……っと、とりあえず、『勇気』鑑定してみてくれないか?」
「なぜ今更?」
「アリアさんのステータスに出没したんだよ」
「……は?」
「と、とにかく! 鑑定します!」
鑑定した結果は、以下の通りだった。
勇気……分け与えられた勇気。スキル『勇気』の保持者ともう一人の心が強く共鳴し、お互いの限界を越えることで習得、発動する。発動時間は互いの想いが共鳴している間。効果は『勇気』と等しい。
僕はそれを、読み上げた。そして、アリアさんをみる。
「……分け与えられた、勇気…………」
そして、二人で意味もなく笑った。
「こりゃまた、大変なもの見つけちまったな!」
「そうですねー! 勇気の新しい使い道ですね!」
「お主らはお気楽だな。大変な力だってこと、分かっていってるのか?」
ドラくんはそう言ってちょっと呆れてる。僕らだってわかっていない訳じゃない。100倍スキル持ちが、実質的に二人になったのだから。でも……
「なんか、嬉しいですね」
「そうだな。なんか、仲間って感じがしてな」
旅を始めたばっかりのとき、仲は悪くなかったけど、それでも、まだ出会ってからそんなに経っていないのもあって、僕らはお互いにどこか遠慮していた。個性の塊'sみたいに、遠慮しないでガンガンものを言ったりは出来なかった。
でも、あの部屋で僕らは言いたいことを言いたいだけ言って、結果として『勇気』をアリアさんが得ることが出来て、ミーレスを倒せて。
そういうのって、嬉しいなって。
「……それはそれでいいが、お主ら、忘れていないか?」
「「……え?」」
「何を?」
ドラくんは視線をどこかに向けると、静かに言う。
「王都のほとんどの者は、姫がさらわれ、悲しみや不安にうちひしがれながらも、それを追うことさえ出来なかったんだ」
「……そう、か」
アリアさんの声が、柔らかくも、悲しいものに変わる。
「……安心させてやらなきゃいけないんじゃないか?」
「……そうだな。ドラくん、連れてってくれ」
僕らがその大きな背中に乗ると、ドラくんは大きく羽ばたいて飛び立った。
きっと、アリアさんはまた迷っている。
旅を続けるべきか、そうしないべきか。
「…………」
ジャッジメントの光が消えても、僕らはしばらく立ち尽くしたままでいた。大きく地面が抉れ、円状に凹んでいた。ミーレスはその場に倒れ、ピクリとも動かない。僕はそっと近づいて、しゃがみこみ、脈を調べてみる。
……うん、脈はある。僕はほっとして立ち上がり、アリアさんの方をみる。
「……終わりましたね」
そう言いながらアリアさんの方へ歩いていくと、優しく微笑みなから、言葉を返された。
「あぁ……。終わった、な」
アリアさんがそう微笑んだ瞬間、頭上に何か大きなものが現れ、影が出来る。
「ウタ殿、アリア殿……!」
「ドラくん?!」
「ほら、心配することなかったでしょ?」
「……と、塊's?」
アリアさんがそれを見て何かを言おうとすると、
「ストーップ!」
そう言うアイリーンさんが僕らの口にチョコレートを突っ込み、その言葉は遮られた。
「んぐっ?!」
「はい回復かんりょー。
私たちよりー、もっと心配してる人がいるんだから。その人たちが先ー!」
「…………!」
「ね?」
「んじゃ、こいつはうちらがお持ち帰りしますかっと」
「ですなー。ドラくーん、二人乗っけてきてあげてー!」
「言われなくとも」
ドラくんがそう答えると、塊'sはミーレスの首根っこを捕まえるとものすごい勢いで走っていった。……はや。
「…………なぁ」
ふいに、アリアさんがドラくんを突っつく。
「どうした、アリア殿」
「ちょっとだけ……。ちょっとだけ、後ろ向いててくれないか?」
「…………? 心得た」
そうして、ドラくんが僕らから視線を逸らしたのを確認すると、アリアさんは僕を見て、駆け寄り、
「ウタっ…………!」
「う、わ……!?」
そのままぎゅっと抱きついた。突然のことに僕は体を支えきれなくて、尻餅をついた。
「あ、アリアさん……?!」
「……ありがとう」
はっとした。声は、震えていた。
僕はどうしたらいいのか迷いながら、そっと片手をアリアさんの頭にやった。
「……あはは。お疲れさまでした」
「子供扱いすんな。バカ」
「あっ、そういえば服……」
気がついた瞬間、アリアさんの素肌が目に飛び込んできて顔が熱くなった。え、えっと……。
僕はアリアさんを少し離して、視線もちょっと逸らして、ベストを脱ぎながら言う。
「き、気休めですけど、これ着ときます?」
「これくらい大丈夫だぞ? 胸とか見えてないし」
「僕はだいじょばないです。というかそういうの普通に言うの止めてくださいね?」
脱いだベストをバサッとかけ、アリアさんが腕を通すと、少し大きいのが幸をそうして大分ましになった。
「うん、これでよし。……にしても」
「ん?」
「アリアさん、強すぎません?」
「……ん?」
「ん? じゃないですよ。だって、ステータスは普通で……ええええええっ?!」
「な、なんだ!? 急に大きな声出すな!」
「アリアさん! 自分のステータス! ステータス! はい、せーのっ!」
「す、ステータス!」
名前 アリア
種族 人間
年齢 18
職業 皇女
レベル 4300
HP 6880000
MP 4300000
スキル アイテムボックス・剣術(超上級)・体術(超上級)・初級魔法(熟練度50)・光魔法(熟練度40)・水魔法(熟練度40)・氷魔法(熟練度20)・雷魔法(熟練度30)・回復魔法(熟練度20)
ユニークスキル 王室の加護・魔力向上・ジャッジメント・勇気
称号 次期女王・不屈の精神・甘い物好き・C級冒険者
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
「き、気づいてなかったんですか?!」
「気づいてなかった……」
「なぁ、とても気になる。振り向いてもいいか?」
「あ、あぁ」
なぜか僕とアリアさんは地面に正座をする。そして、一つ息を吐いて、アリアさんが僕に言う。
「えー……っと、とりあえず、『勇気』鑑定してみてくれないか?」
「なぜ今更?」
「アリアさんのステータスに出没したんだよ」
「……は?」
「と、とにかく! 鑑定します!」
鑑定した結果は、以下の通りだった。
勇気……分け与えられた勇気。スキル『勇気』の保持者ともう一人の心が強く共鳴し、お互いの限界を越えることで習得、発動する。発動時間は互いの想いが共鳴している間。効果は『勇気』と等しい。
僕はそれを、読み上げた。そして、アリアさんをみる。
「……分け与えられた、勇気…………」
そして、二人で意味もなく笑った。
「こりゃまた、大変なもの見つけちまったな!」
「そうですねー! 勇気の新しい使い道ですね!」
「お主らはお気楽だな。大変な力だってこと、分かっていってるのか?」
ドラくんはそう言ってちょっと呆れてる。僕らだってわかっていない訳じゃない。100倍スキル持ちが、実質的に二人になったのだから。でも……
「なんか、嬉しいですね」
「そうだな。なんか、仲間って感じがしてな」
旅を始めたばっかりのとき、仲は悪くなかったけど、それでも、まだ出会ってからそんなに経っていないのもあって、僕らはお互いにどこか遠慮していた。個性の塊'sみたいに、遠慮しないでガンガンものを言ったりは出来なかった。
でも、あの部屋で僕らは言いたいことを言いたいだけ言って、結果として『勇気』をアリアさんが得ることが出来て、ミーレスを倒せて。
そういうのって、嬉しいなって。
「……それはそれでいいが、お主ら、忘れていないか?」
「「……え?」」
「何を?」
ドラくんは視線をどこかに向けると、静かに言う。
「王都のほとんどの者は、姫がさらわれ、悲しみや不安にうちひしがれながらも、それを追うことさえ出来なかったんだ」
「……そう、か」
アリアさんの声が、柔らかくも、悲しいものに変わる。
「……安心させてやらなきゃいけないんじゃないか?」
「……そうだな。ドラくん、連れてってくれ」
僕らがその大きな背中に乗ると、ドラくんは大きく羽ばたいて飛び立った。
きっと、アリアさんはまた迷っている。
旅を続けるべきか、そうしないべきか。
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説
異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。
星の国のマジシャン
ファンタジー
引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。
そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。
本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。
この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
騎士志望のご令息は暗躍がお得意
月野槐樹
ファンタジー
王弟で辺境伯である父を保つマーカスは、辺境の田舎育ちのマイペースな次男坊。
剣の腕は、かつて「魔王」とまで言われた父や父似の兄に比べれば平凡と自認していて、剣より魔法が大好き。戦う時は武力より、どちらというと裏工作?
だけど、ちょっとした気まぐれで騎士を目指してみました。
典型的な「騎士」とは違うかもしれないけど、護る時は全力です。
従者のジョセフィンと駆け抜ける青春学園騎士物語。
殿下から婚約破棄されたけど痛くも痒くもなかった令嬢の話
ルジェ*
ファンタジー
婚約者である第二王子レオナルドの卒業記念パーティーで突然婚約破棄を突きつけられたレティシア・デ・シルエラ。同様に婚約破棄を告げられるレオナルドの側近達の婚約者達。皆唖然とする中、レオナルドは彼の隣に立つ平民ながらも稀有な魔法属性を持つセシリア・ビオレータにその場でプロポーズしてしまうが───
「は?ふざけんなよ。」
これは不運な彼女達が、レオナルド達に逆転勝利するお話。
********
「冒険がしたいので殿下とは結婚しません!」の元になった物です。メモの中で眠っていたのを見つけたのでこれも投稿します。R15は保険です。プロトタイプなので深掘りとか全くなくゆるゆる設定で雑に進んで行きます。ほぼ書きたいところだけ書いたような状態です。細かいことは気にしない方は宜しければ覗いてみてやってください!
*2023/11/22 ファンタジー1位…⁉︎皆様ありがとうございます!!
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる