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ワクワク! ドキドキ! 小人ライフ!
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「…………ぅ……ここ、は……?」
「姉さん……っ!」
目を覚ましたサラさんにアリアさんが抱きつく。
あのあと、僕らは気を失ったままのサラさんをつれて山を降りた。街では気を失っていて、ラトさんが面倒を見ていたはずのサラさんが消えて大騒ぎになっていた。そこで僕たちがサラさんをつれて戻ると、半泣きのラトさんがサラさんを抱えたアリアさんを抱えてダッシュで城へ走っていった。なかなかシュールな映像だったけど……。
なにはともあれ、サラさんが無事だったことがわかり、みんなひと安心。色々と事情を聞かれたけど、起こした問題とサラさんの救助で相殺されて、特にお咎めもなかった。
ちなみにベリズの行く末は……知りません。
そんなこんながあって、今は深夜3時。フローラとポロンくんはとっくに寝ていて、僕とアリアさんと、帰ってきた国王陛下だけが起きていて、サラさんの容態を見守っていた状態だ。
「アリア……? 父上も、ウタも……」
サラさんはゆっくりと体を起こし、辺りを見渡し、まだはっきりとしない思考回路で今の状況を整理しているようだった。
「よかった……本当に、よかった…………」
「サラ……お前はもう少し、『姫』という立場を理解した方がいいんじゃないか?」
「…………」
「一体どれだけの人に心配をかけたと思っている」
「陛下! ……サラさんがいなかったら、僕らも、街の人たちも、危険な目に遭っていたんです。だから」
「分かっているさ。本当のことを言えば……一番心配していたのは私だ」
「……父上…………」
「お前の無事が確認できてよかった。……アリアちゃん、ウタくん、あとは任せるよ。私は明日があるのでな。先に休ませてもらう」
「……はい」
エヴァンさんの時も思ったけれど……どれだけ高い地位にいる人でも、家族を……娘を想う気持ちは、一緒なんだなーって。
そう思うと、考えてしまう。
僕が死んだとき、お父さんとお母さんは、何を思ったんだろうって。
「……アリア、大丈夫だから、少し離れてくれないか?」
サラさんが困ったようにやんわりというと、アリアさんはハッとしたようにサラさんから離れた。
「ご、ごめん姉さん。その……つい」
「ははっ。全く……成長したかと思ったら全然変わってなかったり、面白いなぁ、お前は」
サラさんはそうクスクスと笑う。……その仕草は、どこかアリアさんに似ていた。
「姉さん……?」
「……お前、いつから男が大丈夫になった?」
「え?」
「えっ、アリアさんって……男の人、苦手なんですか?」
僕バリバリ男なんですけど……っていうか、部屋割りの件とか最初に声かけてくれた時点で、男に耐性あるのかと。
「あー、その……」
「アリアが8才くらいの頃に、私と一緒に誘拐されかかったことがあってな」
「えー?! そ、そうなんですか!?」
「そうそう。私がぶっとばしたから被害はなかったんだけど、その犯人が男でさ。それから怖くなったみたいで、ずっと引きずってたんだ。んで、初対面の男とは上手く話せなくてな」
「そ、それは昔の話で」
「今は大丈夫なのか?」
「……時と場合にもよる、けど。あと、安全が100%保証されてる人なら平気だ」
「じゃあ、キルナンスの時とか結構怖かったんじゃ……」
「でもほら、お前らがいただろ?」
「……僕は?」
そもそも論。僕はどうして大丈夫なのか。名前や行動が女子っぽくてヘタレで、危険度が低いのはそりゃ分かるだろうけど、だからといって最初っから全く抵抗がないのは変だ。
「それは、私がお前を男として全く見ていないからだろうな」
「ひどい!」
「ははっ……嘘だよ。ちゃんと男として見ている面はあるさ。でも、なんでだろうな……お前だけは、会ったときから全然大丈夫なんだ。
ポロンとか、ドラくんとかは年齢とか種族とかの問題があって大丈夫だけど、お前に関しては謎だ」
「な、謎って……」
するとサラさんがどっと笑い始めた。
「あっははは! お前ら、本当に面白いな! 見ていて飽きない」
「えー、今の会話にそんなに大笑いするところありました?」
「あったあった! 大いにあったよ。
……これは、私の推測なんだけどな」
少し落ち着いて、サラさんが言う。
「ウタは、ディランに似てるんじゃないかな」
「……ディランさんに、ですか?」
こくりと頷くと、サラさんはクッションに背中を預けて続ける。
「……あのとき、一瞬だけお前の顔をみた。ベリズに向かう、お前の横顔を」
「…………」
「あのとき、私は、お前をディランと重ねたよ。お前が私たちを思って行動するように、ディランも、自分のことは二の次に、私たち……特にアリアことを最優先に行動していた。
お前は、ディランに似ていた」
それから、アリアさんの方を向いて、優しく笑いかける。
「……お前も、そうだったんじゃないかな、と、私は思うんだ」
「……ディランに…………」
「『勇気』という特別なスキルを発動させているときも、そうじゃないときも、ウタはディランにどこか似ている。なにより……アリアが頼れるという点が同じだ」
「…………」
「……と、私は想うんだが、アリアはどう思う?」
そのサラさんの問いに、少し考えてから、にっこりと微笑んでアリアさんはいう。
「……そう、かもな」
僕は、どんな顔をしたらいいのか分からなかった。
僕は本当は、そんな人間じゃないのに……。
そんな僕の表情の変化を静かに読み取ったのは、サラさんだけだった。
そのせいか、僕らが部屋に戻ろうと、アリアさんが外に出て、僕も続けて出ようと思ったとき、「ウタ」と僕だけに聞こえる静かに名前を呼び、その後、
「……無理は、絶対にするなよ」
と真剣な顔で言われた。僕はなにも言わずに、部屋の扉を閉めた。
「姉さん……っ!」
目を覚ましたサラさんにアリアさんが抱きつく。
あのあと、僕らは気を失ったままのサラさんをつれて山を降りた。街では気を失っていて、ラトさんが面倒を見ていたはずのサラさんが消えて大騒ぎになっていた。そこで僕たちがサラさんをつれて戻ると、半泣きのラトさんがサラさんを抱えたアリアさんを抱えてダッシュで城へ走っていった。なかなかシュールな映像だったけど……。
なにはともあれ、サラさんが無事だったことがわかり、みんなひと安心。色々と事情を聞かれたけど、起こした問題とサラさんの救助で相殺されて、特にお咎めもなかった。
ちなみにベリズの行く末は……知りません。
そんなこんながあって、今は深夜3時。フローラとポロンくんはとっくに寝ていて、僕とアリアさんと、帰ってきた国王陛下だけが起きていて、サラさんの容態を見守っていた状態だ。
「アリア……? 父上も、ウタも……」
サラさんはゆっくりと体を起こし、辺りを見渡し、まだはっきりとしない思考回路で今の状況を整理しているようだった。
「よかった……本当に、よかった…………」
「サラ……お前はもう少し、『姫』という立場を理解した方がいいんじゃないか?」
「…………」
「一体どれだけの人に心配をかけたと思っている」
「陛下! ……サラさんがいなかったら、僕らも、街の人たちも、危険な目に遭っていたんです。だから」
「分かっているさ。本当のことを言えば……一番心配していたのは私だ」
「……父上…………」
「お前の無事が確認できてよかった。……アリアちゃん、ウタくん、あとは任せるよ。私は明日があるのでな。先に休ませてもらう」
「……はい」
エヴァンさんの時も思ったけれど……どれだけ高い地位にいる人でも、家族を……娘を想う気持ちは、一緒なんだなーって。
そう思うと、考えてしまう。
僕が死んだとき、お父さんとお母さんは、何を思ったんだろうって。
「……アリア、大丈夫だから、少し離れてくれないか?」
サラさんが困ったようにやんわりというと、アリアさんはハッとしたようにサラさんから離れた。
「ご、ごめん姉さん。その……つい」
「ははっ。全く……成長したかと思ったら全然変わってなかったり、面白いなぁ、お前は」
サラさんはそうクスクスと笑う。……その仕草は、どこかアリアさんに似ていた。
「姉さん……?」
「……お前、いつから男が大丈夫になった?」
「え?」
「えっ、アリアさんって……男の人、苦手なんですか?」
僕バリバリ男なんですけど……っていうか、部屋割りの件とか最初に声かけてくれた時点で、男に耐性あるのかと。
「あー、その……」
「アリアが8才くらいの頃に、私と一緒に誘拐されかかったことがあってな」
「えー?! そ、そうなんですか!?」
「そうそう。私がぶっとばしたから被害はなかったんだけど、その犯人が男でさ。それから怖くなったみたいで、ずっと引きずってたんだ。んで、初対面の男とは上手く話せなくてな」
「そ、それは昔の話で」
「今は大丈夫なのか?」
「……時と場合にもよる、けど。あと、安全が100%保証されてる人なら平気だ」
「じゃあ、キルナンスの時とか結構怖かったんじゃ……」
「でもほら、お前らがいただろ?」
「……僕は?」
そもそも論。僕はどうして大丈夫なのか。名前や行動が女子っぽくてヘタレで、危険度が低いのはそりゃ分かるだろうけど、だからといって最初っから全く抵抗がないのは変だ。
「それは、私がお前を男として全く見ていないからだろうな」
「ひどい!」
「ははっ……嘘だよ。ちゃんと男として見ている面はあるさ。でも、なんでだろうな……お前だけは、会ったときから全然大丈夫なんだ。
ポロンとか、ドラくんとかは年齢とか種族とかの問題があって大丈夫だけど、お前に関しては謎だ」
「な、謎って……」
するとサラさんがどっと笑い始めた。
「あっははは! お前ら、本当に面白いな! 見ていて飽きない」
「えー、今の会話にそんなに大笑いするところありました?」
「あったあった! 大いにあったよ。
……これは、私の推測なんだけどな」
少し落ち着いて、サラさんが言う。
「ウタは、ディランに似てるんじゃないかな」
「……ディランさんに、ですか?」
こくりと頷くと、サラさんはクッションに背中を預けて続ける。
「……あのとき、一瞬だけお前の顔をみた。ベリズに向かう、お前の横顔を」
「…………」
「あのとき、私は、お前をディランと重ねたよ。お前が私たちを思って行動するように、ディランも、自分のことは二の次に、私たち……特にアリアことを最優先に行動していた。
お前は、ディランに似ていた」
それから、アリアさんの方を向いて、優しく笑いかける。
「……お前も、そうだったんじゃないかな、と、私は思うんだ」
「……ディランに…………」
「『勇気』という特別なスキルを発動させているときも、そうじゃないときも、ウタはディランにどこか似ている。なにより……アリアが頼れるという点が同じだ」
「…………」
「……と、私は想うんだが、アリアはどう思う?」
そのサラさんの問いに、少し考えてから、にっこりと微笑んでアリアさんはいう。
「……そう、かもな」
僕は、どんな顔をしたらいいのか分からなかった。
僕は本当は、そんな人間じゃないのに……。
そんな僕の表情の変化を静かに読み取ったのは、サラさんだけだった。
そのせいか、僕らが部屋に戻ろうと、アリアさんが外に出て、僕も続けて出ようと思ったとき、「ウタ」と僕だけに聞こえる静かに名前を呼び、その後、
「……無理は、絶対にするなよ」
と真剣な顔で言われた。僕はなにも言わずに、部屋の扉を閉めた。
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