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ワクワク! ドキドキ! 小人ライフ!
今、すべきこと
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アリアさんとベランダで話したあと、明日おきられないと困るからと言って、しばらくして、僕らはベッドに戻った。
アリアさんには、ここであったことを誰にも……特にポロンくんとフローラには言わないように口止めされてしまった。もとより言うつもりなんてなかったが、アリアさんのことだ。余計な心配をかけたくないのだろう。
再びベッドに潜った僕は、悶々と先程のことを考えていた。
(……やっぱり、悲しかったんだよな)
思えば、僕がアリアさんの涙を見たのは、催涙スプレーの一見以来だった。あれは不可抗力だったから、実質はじめてか。
そもそも、エヴァンさんが前に言っていた気がするが、アリアさんは自分のお母さんが亡くなっても、泣かなかったという。良くも悪くも、アリアさんの心は強かった。
(……やめよう。もう寝よう。二時すぎちゃったよ)
僕はみんなに背を向け、壁に向かって目を閉じた。そして、ゆっくりとその意識は闇にとけていった。
◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈
……結局、寝不足だ。
というのも、あのあと確かに眠った僕だったが、起きたのはなんと四時前。二時間も眠っていないのだ。
こんな寝不足で大丈夫かなぁ……と、心配になったが、パッと見ると、アリアさんも起きていた。
「……眠れなかったのか」
「眠れなかったんですね」
「どうする? ちょっと二度寝するには遅い時間だ。だからといって、何をするわけでもないが……」
「うーん……あ。弓の練習、したいです。二人に教える前に僕が少しでも出来ていたほうがよくないですか?」
僕がそういうと、アリアさんは大きくうなずいた。
「そうか……。うん、それもそうだな。よし! じゃあ地下で少し練習するか」
「はい!」
「二人は……そうだな。書き置きしていくか。そこにメモとペンがある。用件だけ書いておこう」
「了解しました! ……なんて書きましょうか?」
「そうだなぁ…………『練習してくる』くらいでいいんじゃないか? あの二人、頭いいからきっとわかってくれるさ」
「あぁ、そうですね!」
というわけで僕は、メモに『練習してくる』とだけ書いて、部屋の丸テーブルの上に置いた。
「これでよし……行きましょうか」
「あぁ」
二人だけで歩く明け方の廊下は、光輝いているように見えた。空模様は夜に見たときとは全く違って、少し明るく、そして淡い赤紫色に空を染めていく。風が木々を揺らし、木漏れ日が形を変える。
朝が来る――まさに、そんな感じだ。
しばらく廊下を歩いていくと、そこには地下に続く階段があった。……さすがアリアさん、城の作りは、あらかた知っているみたいだ。
二人で、その階段を下っていく。ふと、アリアさんが僕に声をかける。
「……なぁ」
「どうかしましたか?」
「お前、はさ……ほら、転生者じゃないか」
「……そう、ですけど?」
どうして改まってそんなことを聞くのか、その言葉だけでは、僕にはよくわからなかった。
「ほら……その、転生者ってことは、一度……死んでるんだろ?」
「……まぁ、そうですね」
「お前って……どうして、死んだんだ?」
「…………」
そういえば、言ってなかったなぁ。とはいっても、その瞬間のことはあまり覚えていない。多分あれ、血を見て気を失ったあとに死んだから。
「えっと……ですね。伝わるかなぁ。向こうの世界には、トラックとか、車とかいうのが走ってるんです」
「それは……なんだ? 動物か?」
「いや、馬車に近いですよ。移動手段です。でも、動物の力じゃなくて、ガソリンとかの力で走るんです」
「ガソリン……か。石油ってやつか? アキヒトが石油ストーブがほしいとか言ってたからな」
「それですそれです。その、ガソリンの力で走るトラックってやつに、轢かれて死んだんです」
「馬車に轢かれたのと同じこと、か?」
「馬車よりもいくらか速いですけど、そんなもんですよ」
「ずいぶんボーッとしてたんだな」
……アリアさん、あの子のこと、聞いたら、笑うかな? まさかお前がそんなこと! ……みたいに。
「えっと……本当は、トラックに轢かれそうだったのは、僕じゃなくて」
「……そうなのか?」
「ポロンくんくらいの男の子が、ボールを追いかけてトラックの前に入っちゃって……どうしてだか僕、助けなきゃって思って……。それで」
「死んだのか?」
「はい……」
アリアさんは、「そうか……」と呟いたあと、にっこりと微笑んで僕を見た。
「お前らしいな」
ドキッとした。僕らしい……これが? これが僕らしいのか?
だって僕は……なにもしないで、なにも見ないで、なにも言わないで、結局、大切だった人を助けられなくて。
それなのに、僕らしい、か……。
アリアさんには……いつ、あのことを伝えたらいいんだろう? もしかしたらずっと、一生伝えられないかもしれない。
だって、僕はヘタレで、その性格のせいであんなことになった。この旅は……『勇気』を発動させないと生きていけないこの旅は、きっと、神様からの罰ゲームで、戒めで、制裁で……。
「僕が今、すべきことってなんだろう……?」
「…………?」
突然そんなことを言い出した僕に動揺したようなアリアさんだったが、こう、答えてくれた。
「……一緒に見つければいいさ。この旅で」
アリアさんには、ここであったことを誰にも……特にポロンくんとフローラには言わないように口止めされてしまった。もとより言うつもりなんてなかったが、アリアさんのことだ。余計な心配をかけたくないのだろう。
再びベッドに潜った僕は、悶々と先程のことを考えていた。
(……やっぱり、悲しかったんだよな)
思えば、僕がアリアさんの涙を見たのは、催涙スプレーの一見以来だった。あれは不可抗力だったから、実質はじめてか。
そもそも、エヴァンさんが前に言っていた気がするが、アリアさんは自分のお母さんが亡くなっても、泣かなかったという。良くも悪くも、アリアさんの心は強かった。
(……やめよう。もう寝よう。二時すぎちゃったよ)
僕はみんなに背を向け、壁に向かって目を閉じた。そして、ゆっくりとその意識は闇にとけていった。
◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈
……結局、寝不足だ。
というのも、あのあと確かに眠った僕だったが、起きたのはなんと四時前。二時間も眠っていないのだ。
こんな寝不足で大丈夫かなぁ……と、心配になったが、パッと見ると、アリアさんも起きていた。
「……眠れなかったのか」
「眠れなかったんですね」
「どうする? ちょっと二度寝するには遅い時間だ。だからといって、何をするわけでもないが……」
「うーん……あ。弓の練習、したいです。二人に教える前に僕が少しでも出来ていたほうがよくないですか?」
僕がそういうと、アリアさんは大きくうなずいた。
「そうか……。うん、それもそうだな。よし! じゃあ地下で少し練習するか」
「はい!」
「二人は……そうだな。書き置きしていくか。そこにメモとペンがある。用件だけ書いておこう」
「了解しました! ……なんて書きましょうか?」
「そうだなぁ…………『練習してくる』くらいでいいんじゃないか? あの二人、頭いいからきっとわかってくれるさ」
「あぁ、そうですね!」
というわけで僕は、メモに『練習してくる』とだけ書いて、部屋の丸テーブルの上に置いた。
「これでよし……行きましょうか」
「あぁ」
二人だけで歩く明け方の廊下は、光輝いているように見えた。空模様は夜に見たときとは全く違って、少し明るく、そして淡い赤紫色に空を染めていく。風が木々を揺らし、木漏れ日が形を変える。
朝が来る――まさに、そんな感じだ。
しばらく廊下を歩いていくと、そこには地下に続く階段があった。……さすがアリアさん、城の作りは、あらかた知っているみたいだ。
二人で、その階段を下っていく。ふと、アリアさんが僕に声をかける。
「……なぁ」
「どうかしましたか?」
「お前、はさ……ほら、転生者じゃないか」
「……そう、ですけど?」
どうして改まってそんなことを聞くのか、その言葉だけでは、僕にはよくわからなかった。
「ほら……その、転生者ってことは、一度……死んでるんだろ?」
「……まぁ、そうですね」
「お前って……どうして、死んだんだ?」
「…………」
そういえば、言ってなかったなぁ。とはいっても、その瞬間のことはあまり覚えていない。多分あれ、血を見て気を失ったあとに死んだから。
「えっと……ですね。伝わるかなぁ。向こうの世界には、トラックとか、車とかいうのが走ってるんです」
「それは……なんだ? 動物か?」
「いや、馬車に近いですよ。移動手段です。でも、動物の力じゃなくて、ガソリンとかの力で走るんです」
「ガソリン……か。石油ってやつか? アキヒトが石油ストーブがほしいとか言ってたからな」
「それですそれです。その、ガソリンの力で走るトラックってやつに、轢かれて死んだんです」
「馬車に轢かれたのと同じこと、か?」
「馬車よりもいくらか速いですけど、そんなもんですよ」
「ずいぶんボーッとしてたんだな」
……アリアさん、あの子のこと、聞いたら、笑うかな? まさかお前がそんなこと! ……みたいに。
「えっと……本当は、トラックに轢かれそうだったのは、僕じゃなくて」
「……そうなのか?」
「ポロンくんくらいの男の子が、ボールを追いかけてトラックの前に入っちゃって……どうしてだか僕、助けなきゃって思って……。それで」
「死んだのか?」
「はい……」
アリアさんは、「そうか……」と呟いたあと、にっこりと微笑んで僕を見た。
「お前らしいな」
ドキッとした。僕らしい……これが? これが僕らしいのか?
だって僕は……なにもしないで、なにも見ないで、なにも言わないで、結局、大切だった人を助けられなくて。
それなのに、僕らしい、か……。
アリアさんには……いつ、あのことを伝えたらいいんだろう? もしかしたらずっと、一生伝えられないかもしれない。
だって、僕はヘタレで、その性格のせいであんなことになった。この旅は……『勇気』を発動させないと生きていけないこの旅は、きっと、神様からの罰ゲームで、戒めで、制裁で……。
「僕が今、すべきことってなんだろう……?」
「…………?」
突然そんなことを言い出した僕に動揺したようなアリアさんだったが、こう、答えてくれた。
「……一緒に見つければいいさ。この旅で」
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