上 下
102 / 387
ワクワク! ドキドキ! 小人ライフ!

サラの力

しおりを挟む
「またって……どういうことだ?」


 アリアさんがそう、声を漏らす。僕だって意味がわからない。鳥が撃たれて街に落ちてくるなんて。そんなの、なんどもあるわけない。しかも……


「しかも、またこんなことがって言うんじゃなくて……『またお前か』って」

「えっ? ってことは、サラさんは、誰がこんなことをやっているのか知ってる……ってことですか!?」

「ウタ兄の言葉だけを聞くと、そうなるよな。でもサラ姉がそれを知ってて放っておくわけないと思うんだけどなぁ」


 ……それに関しては、僕も同意見だ。ハリルさんとマランちゃんが鳥の下敷きになったとき、あんなに必死に助けようとしていた。そんなサラさんが、まさかその原因を野放しにしているなんて……。そんなこと、到底思えなかった。


「……でも、なにかは知っていそうだな」


 アリアさんがポツリと呟き、そして、立ち上がった。


「よしっ! ここにいても埒があかない。情報がなければ聞き込みだ! 行くぞ!」

「あっ! 待ってくださいよ!」


◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈


 やって来たのは賑やかな街中。そこで適当に会った人たちに話を聞いてみることにした。
 とりあえず、あそこにいるお肉屋さんのおじさんだ。


「あのー」

「お? なんだい小僧」

「い、いや、あの……」

「さっき、鳥が落ちてきたが、そんなことはよくあるのか? 私たちは来たばかりだからよく分からなくてな」


 言葉に詰まった僕に、アリアさんが助け船を出してくれる。あ、ありがとうこざいます……。
 おじさんはちょっと考えたあとに、ゆっくりと口を開く。


「前はこんなこと無かったんだけどなぁ。しかも撃たれてたんだろ? 今回のやつも」

「そうみたいだぞ!」

「そんなことなおさら無かったさ。まれに鳥同士が激突してーってことなら無かったわけでもないがな。
 全く、サラ様の力がなかったらどうなっていたことか……」

「サラさんの力、ですか……」


 おじさんはうなずいて、自分のことじゃないのに、ちょっと得意気に話した。


「いいか? サラ様の力のなかには『守護』っていうのがあるんだよ」

「守護……ですか?」

「そうさ。相手が直視できるとき、それと、相手がいる場所と名前と顔が分かっていればそいつを守ることができるんだ!
 この街だけでも数万はいるだろうに、サラ様はその顔と名前を完全に一致させているんだぜ? スゲーだろ?」


 僕はうなずきながら、納得する。サラさんはあのとき、真っ先に逃げ遅れた人の名前を聞いていた。名前さえわかれば、顔も分かるから助けられる……そういうことだったんだ。


「あの……鳥が落ちてくるようになったのって、いつごろですか?」


 フローラが訊ねると、おじさんは右の人差し指をたてる。


「一年前だ。間違いない」

「一年前……」


 ……また、一年前か。ドラゴンたちのことといい、メヌマニエのことといい、色々と重なりすぎている気がする。……気のせいだろうか?
 おじさんにお礼をいって、他の人に声をかけてみることにした。


「あの、すみません」

「よっ! なんだい、少年!」


 ……聞き覚えのある声だ。そして、振り向いたその顔も、見たことがある。


「さ、侍さん……」

「いやいやー、こんなところでも会うなんて、奇遇だねー!」


 普段なら絶叫して逃げ出したいところだが、今回はそうもいかない。


「あ、あの、この間助けてくれてありがとうございました」


 そう……。教会で、大量の魔物をテラーさんと一緒に倒して、その後、倒れた僕らを部屋まで運んでくれたのだ。


「いやいやー! 礼にはおよばんぞ!」

「でも、本当にありがとうな。助かった」

「おいらたちだけじゃ厳しかったもんな」

「そうですね……ありがとうございました!」

「まぁねー、だてに魔王倒してないからねー」

「……やっぱり塊'sだったんだ」

「あれ? 言ってなかったっけなぁ?」

「言ってませんよ!」


 はぁ……個性の塊'sなら、押し売り逃げられないのも納得だなぁ。


「ところで、そろそろ名前を教えてくれないか?」


 アリアさんがそういう。……確かに、僕らはまだこの人の名前を知らない。これだけつけ回されてるのに、名前すら知らないのだ。そろそろ知りたい。
 アリアさんの言葉に、侍さんはうーんと考え込む。そして、


「あっ! 私とバトって勝ったらいいよ!」

「勝てるかーい!」

「えー?」


 いやいやいや! 個性の塊'sに勝とうなんて! 何回コンティニューしなきゃいけないと思ってるの!? あなただって十分すぎるくらい強かったでしょうに!
 すると、侍さんはこんなことを口にする。


「見えなかったら、上から見てみればいいよ。一番高いところから」

「……え?」


 ま、またこの人は訳のわからんことを……。


「と、いうわけで今回はー、こちら!」


 そしてまた何か売り付けられるー……って、え?


「弓?」


 なんたる……まともな……。


「普通の弓じゃないぜベイベー。この弓は、魔法を射ることができる弓なのさ!」

「なんだと……? いやまさか、そんなこと!」

「えっ? 普通、出来ないんですか? 剣とか、魔法宿したりしてますけど」

「普通は魔力に耐えられなくて弓が折れてしまうんだ。剣よりもずっと脆いからな……」


 と、いうことはこれ、すっごくすごいものな訳で……。


「今ならなんと、銀貨2枚!」

「今回ばかりは破格の値段!」

「アリアさん!」

「買う! 人数分!」

「まいどありー」


 ……久々にまともな買い物をしました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。

星の国のマジシャン
ファンタジー
 引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。  そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。  本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。  この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!

ヒロイン聖女はプロポーズしてきた王太子を蹴り飛ばす

蘧饗礪
ファンタジー
 悪役令嬢を断罪し、運命の恋の相手に膝をついて愛を告げる麗しい王太子。 お約束の展開ですか? いえいえ、現実は甘くないのです。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

騎士志望のご令息は暗躍がお得意

月野槐樹
ファンタジー
王弟で辺境伯である父を保つマーカスは、辺境の田舎育ちのマイペースな次男坊。 剣の腕は、かつて「魔王」とまで言われた父や父似の兄に比べれば平凡と自認していて、剣より魔法が大好き。戦う時は武力より、どちらというと裏工作? だけど、ちょっとした気まぐれで騎士を目指してみました。 典型的な「騎士」とは違うかもしれないけど、護る時は全力です。 従者のジョセフィンと駆け抜ける青春学園騎士物語。

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません

みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。 未来を変えるために行動をする 1度裏切った相手とは関わらないように過ごす

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

処理中です...