46 / 387
ウタと愉快な盗賊くん
闇の使い手 モーリス
しおりを挟む
三階まで来た。明るく、ポップなカーターの階とはまたがらりと雰囲気が変わって、薄暗く、古い洋館のような造りになっていた。
「うぅっ……ちょ、ちょっと怖いなぁ」
「何いってるんだよ! そんなこと言ってたら先に進めないぞ!」
「ポロンの言う通りだな。シャキッとしろ、シャキッと」
「シャッキーン……」
「声すらシャキッとしてないぞ」
それにしても暗い。暗視のスキルを持ってるからこそこれだけの範囲が見れるけど、アリアさん、どれくらい見えてるんだろう。
「アリアさん、周り見えます?」
「正直なところ、さっぱりだな。音でも聞こえれば別なんだが、何もわからない。
……対象が見えないままジャッジメントは危ないもんな」
「おいらは見えるよ!」
「うん、僕も見える。けど……」
誰もいない? そんなまさか。
螺旋階段はすぐ目の前にある。ちらちらと周りを見渡して、行ってみようと言いかけたその瞬間だった。知らない声が背後から聞こえた。
「陰影」
「っ?! しまっ――」
突然、背後の闇から現れた無数の手に、動きを封じられてしまう。もがいてみるが、実体がないせいなのか、べっとりとまとわりついてきて、全く逃げることが出来ない。
「やられたな……」
「アリアさん……!」
この中で光魔法を使えるのはアリアさんだけだ。そのアリアさんまで身動きがとれないとなると……かなりマズイ!
「……ローレンとカーターを破ったやつらだ。もう少しは、俺を楽しませてくれると思ったんだが」
真っ暗な闇の中から現れたのは、頭の上から爪先まで、真っ黒な人だった。黒いローブ、黒い靴、黒い手袋。髪も瞳も、唇も黒くて、唯一皮膚だけが異様なまでに白かった。
「いや、挨拶をする前にすまないな。俺はモーリス。キルナンス四天王の一人にして、闇の使い手でもある。……以後、お見知りおきを」
そういうとモーリスは腰に挿していた剣をゆっくりと引き抜く。真っ暗な空間の中、その刃だけが気味悪く光る。
……こ、これ、鑑定できるのかな? いや出来たところでどうするって話なんだけど。とりあえずやってみるか。鑑定!
名前 モーリス
種族 人間
年齢 29
職業 魔術師
レベル 60
HP 7500
MP 6900
スキル アイテムボックス・暗視・剣術(上級)・体術(中級)・初級魔法(熟練度6)・炎魔法(熟練度5)・水魔法(熟練度4)・土魔法(熟練度1)・闇魔法(熟練度8)
ユニークスキル 魔力向上・陰影
称号 キルナンス四天王・闇の使い手・黒
読めたぁ! 黒っていう称号に若干突っ込みたくもあるけど、今はそれどころじゃない! 魔力向上も持ってるのか、こいつ……。とりあえず、さっき使われたと思われる『陰影』を鑑定だ!
陰影……闇を操る。影を意図的に操作できる。闇の強さは自身のレベルと消費MPに比例。耐久性は強いが、光に当たると消えてしまう。
やっぱり光か! モーリスは目の前にまで迫ってきてることだし、ダメもとで一発やってみるか!
「ライトっ!」
何も起こらない。不発だ! やっぱり!
「俺の闇に捕らえられながら光魔法を唱えようと? しかも初級。話にならないな。闇に捕らえられている間はどんなレベルのやつでも魔法は使えなくなる。もちろん、ステータスがあがっていてもな」
それヤバくない!? 詰んだ?! 詰みなの!? 王手っていってよそれならぁ!
モーリスは僕らの目の前まで来ると、剣の切っ先をアリアさんに向ける。
「お前は高く売れそうだ。傷つけられたくなければ、大人しくしているんだな」
「誰がっ……!」
「……おや、そういえば」
ふとモーリスが切っ先を下に向け、呟く。
「――裏切り者が一緒じゃなかったのか?」
「え?」
言われて見渡すと、ポロンくんがどこにもいない。アリアさんは暗視が使えないから分からないだろうけど、僕の目にポロンくんの姿は一切映らなかった。
「どういうことだ? 逃げたのか……?」
そうして、モーリスが後ろに振り返ったその瞬間、
「ライトっ!!!」
「なっ――!?」
その目の前にポロンくんが現れ、光魔法を唱える。威力があがっている初級光魔法をもろに受け、モーリスは目を押さえ、僕らを拘束していた影の手も消えた。
「っし、今だぜ!」
アリアさんはポロンくんの光をたよりにモーリスを見つけると、右手を上にあげた。
「ジャッジメントっ!」
モーリスの頭上に魔方陣が現れ、そして、白い閃光が落ちる。それがおさまる頃にはモーリスは床に倒れ、それから、アリアさんもガクッと膝をついた。
「アリアさん!?」
「だ、大丈夫かよ!」
「……はは、大丈夫。大丈夫だ。これ、体力の消費が、半端ないな……。
アイリーンのおかげか、MPは減っていないが……これを笑顔でうてるとか、ある意味、化け物だな…………。MPはある。だが、悪いが、もう一回は無理だ」
「……うわぁ」
あの人、『ジャッジメント~』的な感じでほわわっとやってたけど、やっぱり半端ないっすね。
「威力は二時間程度気絶するようにしておいた。にしても……ポロン、お前、どうやって……」
「ん? あぁ、おいらは『窃盗』ってスキル持っててさ。なんかヤバイのが来るって分かったから、それで気配消して、隙をうかがってたんだ」
そっか。そういえばそんなスキルを持っていた。あの手も気配を消したことで対象を見失ったのかもしれない。
「ナイスだね! ポロンくん!」
「ふふーん。もっとほめてくれてもいいんだぜ?」
「……ともかく、次だな」
「動けますか?」
「あぁ。でも……あまり激しくは動けない。それくらい体力の消費がすごい。次は任せっぱなしになるかもしれないな」
「大丈夫だよ! おいらに任せとけ!」
僕らは、螺旋階段をのぼっていった。
「うぅっ……ちょ、ちょっと怖いなぁ」
「何いってるんだよ! そんなこと言ってたら先に進めないぞ!」
「ポロンの言う通りだな。シャキッとしろ、シャキッと」
「シャッキーン……」
「声すらシャキッとしてないぞ」
それにしても暗い。暗視のスキルを持ってるからこそこれだけの範囲が見れるけど、アリアさん、どれくらい見えてるんだろう。
「アリアさん、周り見えます?」
「正直なところ、さっぱりだな。音でも聞こえれば別なんだが、何もわからない。
……対象が見えないままジャッジメントは危ないもんな」
「おいらは見えるよ!」
「うん、僕も見える。けど……」
誰もいない? そんなまさか。
螺旋階段はすぐ目の前にある。ちらちらと周りを見渡して、行ってみようと言いかけたその瞬間だった。知らない声が背後から聞こえた。
「陰影」
「っ?! しまっ――」
突然、背後の闇から現れた無数の手に、動きを封じられてしまう。もがいてみるが、実体がないせいなのか、べっとりとまとわりついてきて、全く逃げることが出来ない。
「やられたな……」
「アリアさん……!」
この中で光魔法を使えるのはアリアさんだけだ。そのアリアさんまで身動きがとれないとなると……かなりマズイ!
「……ローレンとカーターを破ったやつらだ。もう少しは、俺を楽しませてくれると思ったんだが」
真っ暗な闇の中から現れたのは、頭の上から爪先まで、真っ黒な人だった。黒いローブ、黒い靴、黒い手袋。髪も瞳も、唇も黒くて、唯一皮膚だけが異様なまでに白かった。
「いや、挨拶をする前にすまないな。俺はモーリス。キルナンス四天王の一人にして、闇の使い手でもある。……以後、お見知りおきを」
そういうとモーリスは腰に挿していた剣をゆっくりと引き抜く。真っ暗な空間の中、その刃だけが気味悪く光る。
……こ、これ、鑑定できるのかな? いや出来たところでどうするって話なんだけど。とりあえずやってみるか。鑑定!
名前 モーリス
種族 人間
年齢 29
職業 魔術師
レベル 60
HP 7500
MP 6900
スキル アイテムボックス・暗視・剣術(上級)・体術(中級)・初級魔法(熟練度6)・炎魔法(熟練度5)・水魔法(熟練度4)・土魔法(熟練度1)・闇魔法(熟練度8)
ユニークスキル 魔力向上・陰影
称号 キルナンス四天王・闇の使い手・黒
読めたぁ! 黒っていう称号に若干突っ込みたくもあるけど、今はそれどころじゃない! 魔力向上も持ってるのか、こいつ……。とりあえず、さっき使われたと思われる『陰影』を鑑定だ!
陰影……闇を操る。影を意図的に操作できる。闇の強さは自身のレベルと消費MPに比例。耐久性は強いが、光に当たると消えてしまう。
やっぱり光か! モーリスは目の前にまで迫ってきてることだし、ダメもとで一発やってみるか!
「ライトっ!」
何も起こらない。不発だ! やっぱり!
「俺の闇に捕らえられながら光魔法を唱えようと? しかも初級。話にならないな。闇に捕らえられている間はどんなレベルのやつでも魔法は使えなくなる。もちろん、ステータスがあがっていてもな」
それヤバくない!? 詰んだ?! 詰みなの!? 王手っていってよそれならぁ!
モーリスは僕らの目の前まで来ると、剣の切っ先をアリアさんに向ける。
「お前は高く売れそうだ。傷つけられたくなければ、大人しくしているんだな」
「誰がっ……!」
「……おや、そういえば」
ふとモーリスが切っ先を下に向け、呟く。
「――裏切り者が一緒じゃなかったのか?」
「え?」
言われて見渡すと、ポロンくんがどこにもいない。アリアさんは暗視が使えないから分からないだろうけど、僕の目にポロンくんの姿は一切映らなかった。
「どういうことだ? 逃げたのか……?」
そうして、モーリスが後ろに振り返ったその瞬間、
「ライトっ!!!」
「なっ――!?」
その目の前にポロンくんが現れ、光魔法を唱える。威力があがっている初級光魔法をもろに受け、モーリスは目を押さえ、僕らを拘束していた影の手も消えた。
「っし、今だぜ!」
アリアさんはポロンくんの光をたよりにモーリスを見つけると、右手を上にあげた。
「ジャッジメントっ!」
モーリスの頭上に魔方陣が現れ、そして、白い閃光が落ちる。それがおさまる頃にはモーリスは床に倒れ、それから、アリアさんもガクッと膝をついた。
「アリアさん!?」
「だ、大丈夫かよ!」
「……はは、大丈夫。大丈夫だ。これ、体力の消費が、半端ないな……。
アイリーンのおかげか、MPは減っていないが……これを笑顔でうてるとか、ある意味、化け物だな…………。MPはある。だが、悪いが、もう一回は無理だ」
「……うわぁ」
あの人、『ジャッジメント~』的な感じでほわわっとやってたけど、やっぱり半端ないっすね。
「威力は二時間程度気絶するようにしておいた。にしても……ポロン、お前、どうやって……」
「ん? あぁ、おいらは『窃盗』ってスキル持っててさ。なんかヤバイのが来るって分かったから、それで気配消して、隙をうかがってたんだ」
そっか。そういえばそんなスキルを持っていた。あの手も気配を消したことで対象を見失ったのかもしれない。
「ナイスだね! ポロンくん!」
「ふふーん。もっとほめてくれてもいいんだぜ?」
「……ともかく、次だな」
「動けますか?」
「あぁ。でも……あまり激しくは動けない。それくらい体力の消費がすごい。次は任せっぱなしになるかもしれないな」
「大丈夫だよ! おいらに任せとけ!」
僕らは、螺旋階段をのぼっていった。
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説
異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。
星の国のマジシャン
ファンタジー
引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。
そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。
本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。
この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
騎士志望のご令息は暗躍がお得意
月野槐樹
ファンタジー
王弟で辺境伯である父を保つマーカスは、辺境の田舎育ちのマイペースな次男坊。
剣の腕は、かつて「魔王」とまで言われた父や父似の兄に比べれば平凡と自認していて、剣より魔法が大好き。戦う時は武力より、どちらというと裏工作?
だけど、ちょっとした気まぐれで騎士を目指してみました。
典型的な「騎士」とは違うかもしれないけど、護る時は全力です。
従者のジョセフィンと駆け抜ける青春学園騎士物語。
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる