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駆け出し転生者ウタ
僕の「勇気」
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美しさすら感じる、その巨体。黒い鱗をまとったドラゴンは、金色の目をこちらに向けていた。……しかし、相手が悪かった。このドラゴンの相手は僕だ。
「ぬぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「う、ウタ……」
ヘタレの俺の限界はとっくに越えている。こんなのを相手に出来るわけない! 悪かったなぁ! 熱いバトルが出来なくて!
「あ、あ、アリアさん! ににに、にげにげにげ、逃げますよ!」
「あっ、バカ……」
アリアさんを支える手に力を加える。そして走る。ほとんど引きずられている状態のアリアさんは、必死に僕に言う。
「ウタ……バカ、お前一人で逃げろ。私を連れていたら、逃げ遅れて」
「いやここに置いていくとか本当に無理ですから! なに言ってるんですか!」
「でも」
「グァァァァァッ!」
「…………! ウタ!」
アリアさんが重心を移動させ、僕と一緒に横に倒れる。と、その上にドラゴンがはいた炎が踊る。立っていたらと考えると、恐ろしい。
「った……」
「ご、ごめんなさい! 無理させて……」
「うるさい! いいから、さっさと逃げろ!」
そうしてる間にもドラゴンはこちらに迫ってくる。どうしたら、どうしたらいいんだ……!
「…………!」
「……どうした、ウタ」
「アリアさん! 回復魔法使ってください! それでちょっとでも傷治して!」
「え、あぁ! 分かった!」
アリアさんが自分の足に手をかざし『ケアル』と詠唱する。すると、だんだんと傷がふさがり、完治とはいかないものの、見た目だいぶましになった。
「動けますか、アリアさん!」
「多少はな。でも、あれを相手にするなんて」
「なに言ってるんですか! アリアさんはスラちゃんと逃げてください!」
「…………は? お前、なに言って」
「だから! 逃げてください! 僕が時間を稼ぎます。その足じゃ走るまでは無理でしょうけど、街に戻るくらいならできるはずです!」
「バカっ! そんなの、死ににいくようなもん」
「だから死ににいくんですよ!」
アリアさんの声が止まる。怒って言い返すこともできず、しかしあきれたわけでもなく、その顔に表れたのは、動揺だった。
「……僕が囮になります。だから、アリアさんは戻って、街の人たちと、あれを倒すための策を立ててください」
「そんな、そんなこと出来るわけないだろ!?」
「二人ではもう逃げられません! だから、アリアさんは逃げてください。僕はあとを追います」
「なにいってんだ! お前は、死ぬかもしれないんだぞ!」
「大丈夫ですよ」
ドラゴンが、僕らに迫る。その体が僕らに近づく前に、僕はスラちゃんをそっとなで、アリアさんにもらった剣を抜いて、ドラゴンに向かって走り出した。
「僕には、命が二つありますから!」
「ウタっ!」
……命を捨てる覚悟で。これは、一度死んだ僕だからこそ口に出来る、『勇気』だった。
剣を右手にしっかりと握りしめ、とりあえずドラゴンを鑑定する。
名前 ダークドラゴン
種族 龍種
年齢 127
職業 ――
レベル 100
HP 180000
MP 100000
スキル 体術(上級)・初級魔法(熟練度10)・炎魔法(熟練度9)・雷魔法(熟練度8)・闇魔法(熟練度8)
ユニークスキル 龍王の加護
称号 黒き力・災害級
わーお! 勝てる気なんてこれっぽっちもしなーい! どーしようね。
……レベル100じゃん。アリアさん、自分より40も上とか勝てないっていってたのに。無理してるな。どっちがバカさ。ばーかばーか!
もう少しだけ、もう少しだけなにか見えないかと根気強く鑑定すると、僕の視界に異変が現れた。
「……あれ、なんだ?」
ドラゴンの瞳が淡く輝いている。……ように見える。実際は変わったことはない。でも、なにかを指し示すように、その瞳は光る。
「……あれが弱点、ってことはないかな」
あー! わからん! とりあえずやってみろおらぁ!
体は僕の方が小さいから小回りは利く。ドラゴンがはく炎を避け、懐に潜り込み、剣で一突きする。
「グァァァァァっ!」
「お願いだから怒らないでぇっ!」
ドラゴンが体をくねらせる。あの巨体に踏み潰されたら一生のおしまいだ! ……いや、もう一回一生おしまいにしたんだけどさ。
一瞬、頭が下に下がった瞬間、僕は光る瞳に剣を突き刺す。
「グギャァアァアアァァッ!!!!」
「わぁぁぁぁ! ごめんなさーーーい!」
やはり眼は弱点だったようで、そこを突かれたドラゴンは怒り狂う。めちゃくちゃに炎を吐き出し、辺りを焼き尽くす。
「よ、避け――」
避けられない……!
「ウォーターッ!!!」
この土壇場で僕が使ったのは初級水魔法だ。熟練度9の炎に敵うわけない。でも、それしか手がない!
「うぉ、ウォーターッ! ウォーーータァァァーーー!!!」
……これだけもってることを褒めてほしい。普通だったら一秒も持たないからね!? これだっていつまでもつか……。あれ?
押し寄せる炎が弱まる感覚。だんだんと消えていく炎。……あれ? あれれ? いや、弱点一突きで終わりって、そんなばなな。僕、レベル1だよ? 『やったか!?』イコールやってない的なの嫌だからね?
「ウタ……!」
「アリアさん?! ……逃げてって、言ったのに」
「逃げるか、バカ。
……大丈夫か? 怪我、してないか?」
……別れてから、5分だって経ってないはずなのに、すごく、懐かしい感じがした。
「……アリアさん」
「なんだ?」
「アリアさん……アリアさんっ……」
「え? は? な、なに泣いてんだよ。お前、さっきまでの威勢はどうした?」
「怖かったぁ……!」
「…………」
あきれたようにため息をついたアリアさんは、僕の背中を優しくさすった。
「ほらほら、落ち着け。……全く。ぶれないなお前は」
はぁー……、よし、落ち着こう。そうしよう。僕は大きく深呼吸をしてアリアさんにくってかかった。
「アリアさん!」
「な、なんだ!?」
「アリアさん無茶しすぎですって! あのドラゴン、レベル100ですよ!? 炎魔法熟練度9とかいうヤバイやつですよ!? 称号に災害級とか書いてありましたけど!」
「……え、いや! 待て待て待て、一旦落ち着け。お前、あのドラゴン鑑定したのか?」
「えっ? ……そう、ですけど?」
「だってお前、レベル1……」
「あっ」
そういえば、格上の相手にはほぼ効かないんだった。え? でも、普通に鑑定できちゃって……あれぇ?
「……もしかして…………おいウタ! ステータス、開いてみろ!」
「えっ?!」
「いいから早く!」
「す、ステータス!」
名前 ウタ
種族 人間
年齢 17
職業 村人(仮)
レベル 1200
HP 1800000
MP 960000
スキル 言語理解・アイテムボックス・鑑定・暗視・剣術(上級)・体術(上級)・初級魔法(熟練度15)・使役(上級)
ユニークスキル 女神の加護・勇気
称号 転生者・ヘタレ・敵前逃亡
……あれ?
「ぬぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「う、ウタ……」
ヘタレの俺の限界はとっくに越えている。こんなのを相手に出来るわけない! 悪かったなぁ! 熱いバトルが出来なくて!
「あ、あ、アリアさん! ににに、にげにげにげ、逃げますよ!」
「あっ、バカ……」
アリアさんを支える手に力を加える。そして走る。ほとんど引きずられている状態のアリアさんは、必死に僕に言う。
「ウタ……バカ、お前一人で逃げろ。私を連れていたら、逃げ遅れて」
「いやここに置いていくとか本当に無理ですから! なに言ってるんですか!」
「でも」
「グァァァァァッ!」
「…………! ウタ!」
アリアさんが重心を移動させ、僕と一緒に横に倒れる。と、その上にドラゴンがはいた炎が踊る。立っていたらと考えると、恐ろしい。
「った……」
「ご、ごめんなさい! 無理させて……」
「うるさい! いいから、さっさと逃げろ!」
そうしてる間にもドラゴンはこちらに迫ってくる。どうしたら、どうしたらいいんだ……!
「…………!」
「……どうした、ウタ」
「アリアさん! 回復魔法使ってください! それでちょっとでも傷治して!」
「え、あぁ! 分かった!」
アリアさんが自分の足に手をかざし『ケアル』と詠唱する。すると、だんだんと傷がふさがり、完治とはいかないものの、見た目だいぶましになった。
「動けますか、アリアさん!」
「多少はな。でも、あれを相手にするなんて」
「なに言ってるんですか! アリアさんはスラちゃんと逃げてください!」
「…………は? お前、なに言って」
「だから! 逃げてください! 僕が時間を稼ぎます。その足じゃ走るまでは無理でしょうけど、街に戻るくらいならできるはずです!」
「バカっ! そんなの、死ににいくようなもん」
「だから死ににいくんですよ!」
アリアさんの声が止まる。怒って言い返すこともできず、しかしあきれたわけでもなく、その顔に表れたのは、動揺だった。
「……僕が囮になります。だから、アリアさんは戻って、街の人たちと、あれを倒すための策を立ててください」
「そんな、そんなこと出来るわけないだろ!?」
「二人ではもう逃げられません! だから、アリアさんは逃げてください。僕はあとを追います」
「なにいってんだ! お前は、死ぬかもしれないんだぞ!」
「大丈夫ですよ」
ドラゴンが、僕らに迫る。その体が僕らに近づく前に、僕はスラちゃんをそっとなで、アリアさんにもらった剣を抜いて、ドラゴンに向かって走り出した。
「僕には、命が二つありますから!」
「ウタっ!」
……命を捨てる覚悟で。これは、一度死んだ僕だからこそ口に出来る、『勇気』だった。
剣を右手にしっかりと握りしめ、とりあえずドラゴンを鑑定する。
名前 ダークドラゴン
種族 龍種
年齢 127
職業 ――
レベル 100
HP 180000
MP 100000
スキル 体術(上級)・初級魔法(熟練度10)・炎魔法(熟練度9)・雷魔法(熟練度8)・闇魔法(熟練度8)
ユニークスキル 龍王の加護
称号 黒き力・災害級
わーお! 勝てる気なんてこれっぽっちもしなーい! どーしようね。
……レベル100じゃん。アリアさん、自分より40も上とか勝てないっていってたのに。無理してるな。どっちがバカさ。ばーかばーか!
もう少しだけ、もう少しだけなにか見えないかと根気強く鑑定すると、僕の視界に異変が現れた。
「……あれ、なんだ?」
ドラゴンの瞳が淡く輝いている。……ように見える。実際は変わったことはない。でも、なにかを指し示すように、その瞳は光る。
「……あれが弱点、ってことはないかな」
あー! わからん! とりあえずやってみろおらぁ!
体は僕の方が小さいから小回りは利く。ドラゴンがはく炎を避け、懐に潜り込み、剣で一突きする。
「グァァァァァっ!」
「お願いだから怒らないでぇっ!」
ドラゴンが体をくねらせる。あの巨体に踏み潰されたら一生のおしまいだ! ……いや、もう一回一生おしまいにしたんだけどさ。
一瞬、頭が下に下がった瞬間、僕は光る瞳に剣を突き刺す。
「グギャァアァアアァァッ!!!!」
「わぁぁぁぁ! ごめんなさーーーい!」
やはり眼は弱点だったようで、そこを突かれたドラゴンは怒り狂う。めちゃくちゃに炎を吐き出し、辺りを焼き尽くす。
「よ、避け――」
避けられない……!
「ウォーターッ!!!」
この土壇場で僕が使ったのは初級水魔法だ。熟練度9の炎に敵うわけない。でも、それしか手がない!
「うぉ、ウォーターッ! ウォーーータァァァーーー!!!」
……これだけもってることを褒めてほしい。普通だったら一秒も持たないからね!? これだっていつまでもつか……。あれ?
押し寄せる炎が弱まる感覚。だんだんと消えていく炎。……あれ? あれれ? いや、弱点一突きで終わりって、そんなばなな。僕、レベル1だよ? 『やったか!?』イコールやってない的なの嫌だからね?
「ウタ……!」
「アリアさん?! ……逃げてって、言ったのに」
「逃げるか、バカ。
……大丈夫か? 怪我、してないか?」
……別れてから、5分だって経ってないはずなのに、すごく、懐かしい感じがした。
「……アリアさん」
「なんだ?」
「アリアさん……アリアさんっ……」
「え? は? な、なに泣いてんだよ。お前、さっきまでの威勢はどうした?」
「怖かったぁ……!」
「…………」
あきれたようにため息をついたアリアさんは、僕の背中を優しくさすった。
「ほらほら、落ち着け。……全く。ぶれないなお前は」
はぁー……、よし、落ち着こう。そうしよう。僕は大きく深呼吸をしてアリアさんにくってかかった。
「アリアさん!」
「な、なんだ!?」
「アリアさん無茶しすぎですって! あのドラゴン、レベル100ですよ!? 炎魔法熟練度9とかいうヤバイやつですよ!? 称号に災害級とか書いてありましたけど!」
「……え、いや! 待て待て待て、一旦落ち着け。お前、あのドラゴン鑑定したのか?」
「えっ? ……そう、ですけど?」
「だってお前、レベル1……」
「あっ」
そういえば、格上の相手にはほぼ効かないんだった。え? でも、普通に鑑定できちゃって……あれぇ?
「……もしかして…………おいウタ! ステータス、開いてみろ!」
「えっ?!」
「いいから早く!」
「す、ステータス!」
名前 ウタ
種族 人間
年齢 17
職業 村人(仮)
レベル 1200
HP 1800000
MP 960000
スキル 言語理解・アイテムボックス・鑑定・暗視・剣術(上級)・体術(上級)・初級魔法(熟練度15)・使役(上級)
ユニークスキル 女神の加護・勇気
称号 転生者・ヘタレ・敵前逃亡
……あれ?
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