上 下
1 / 1

ひとときの永遠

しおりを挟む
わたしたち、二人だけの舞踏会。
型どおりに手を構えポジショニング――でも、触れることなく、わたしたちはただ、くるくるとステップを踏む。

気まぐれな、決して越えない隔たりを挟んで。わたしたちのダンスが回る。

やがて、ダンスは終わり。
わたしたちを取り巻いていた幻が溶ける。

ああ。きっとこれは傷になる。
忘れられない心の傷。
思い出すたび、胸が痛む――そんな傷になるのでしょう。

もしもどんなに幸せになる未来がこの先にあったとしても
きっとこのひと時以上の喜びはありはしないから――

”永遠”を探してはいけない。
見つからなければ苦しくて
見つけてしまえば、こんなにも哀しくなるのだから。

「――泣いているのか」

「いいえ」

「涙が――」

「いいえ。きっと夜露だわ」

「――」

「遠い遠い異国の物語にあるのですって。

 ――夜闇に紛れて恋人を連れて逃げることにしくじった男が、夜露と一緒に消えてしまいたかったと嘆く場面が」

「――このまま、夜露と消えてしまえればいいのに」

 それ以上、わたしは続けることができませんでした。
 彼の唇が言葉を封じてしまったから。

 でも、きっとそれも夢の一場面――
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

私の恋が消えた春

豆狸
恋愛
「愛しているのは、今も昔も君だけだ……」 ──え? 風が運んできた夫の声が耳朶を打ち、私は凍りつきました。 彼の前にいるのは私ではありません。 なろう様でも公開中です。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら

夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。  それは極度の面食いということ。  そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。 「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ! だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」  朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい? 「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」  あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?  それをわたしにつける??  じょ、冗談ですよね──!?!?

【完結】あわよくば好きになって欲しい(短編集)

野村にれ
恋愛
番(つがい)の物語。 ※短編集となります。時代背景や国が違うこともあります。 ※定期的に番(つがい)の話を書きたくなるのですが、 どうしても溺愛ハッピーエンドにはならないことが多いです。

あの日、さようならと言って微笑んだ彼女を僕は一生忘れることはないだろう

まるまる⭐️
恋愛
僕に向かって微笑みながら「さようなら」と告げた彼女は、そのままゆっくりと自身の体重を後ろへと移動し、バルコニーから落ちていった‥ ***** 僕と彼女は幼い頃からの婚約者だった。 僕は彼女がずっと、僕を支えるために努力してくれていたのを知っていたのに‥

幼馴染による寝取り性感マッサージ

下菊みこと
恋愛
ヤンデレな幼馴染が迎えに来たお話。 今回はえっち多め、激しめのつもりです。 ムーンライトノベルズ様でも投稿しています。

王子殿下の慕う人

夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。 しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──? 「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」 好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。 ※小説家になろうでも投稿してます

処理中です...