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69章
元魔王様と記憶喪失の天使族 5
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ジルの魔法によってベリッシ湖の表面は凍っているので水の中には落ちなくて済んだ。
「ジル、あれって。」
「何故レイクサーペントの中に天使族が。」
凍った湖の上に落ちた者には天使の証でもある白い翼が生えている。
「大変です!ずっと食べられていたのなら体調が心配です!助けなければ!」
「待てお嬢。」
「ど、どうしたんですか?」
急いで助けに向かおうとするリュシエルの腕を掴んでジルが止める。
何故止めるのかと不思議そうな表情をしている。
「気を失っている様だからな。始末するなら今が丁度良い。」
今なら厄介な力を使われずに比較的楽に倒せるだろう。
「始末って、命を奪うと言う事ですか!?な、何故そんな事を。」
突然のジルの過激な発言にリュシエルが驚いている。
銀月の鞘を握っているので冗談では無いと分かる。
「我は天使族の一人と前に争って命を狙われている様だからな。報告されては面倒だ。」
「だ、だからって突然そんな事をしなくても。しかも相手は子供なのですよ?」
気を失って倒れているのは天使族の少女だ。
翼を除けば見た目だけなら人族の子供と変わらない。
「相手は長命種だ、見た目に騙されるな。」
「し、しかしですね、うーんと。」
こんな少女を殺させるのは嫌な様で、リュシエルがどうにかジルを止めれないかと必死に考えている。
「はぁ、分かった分かった。いきなり殺すのは止めてやる。あの天使族をどうしたいのかはお嬢に任せるとしよう。」
あまりにも悩んでいたので取り敢えず殺すのは止めておいた。
と言っても不審な動きをすれば容赦するつもりは無い。
「本当ですか!では取り敢えず私が話しをしてみます!」
「その代わりに少しでも奴が攻撃の意思を見せたら我は躊躇しないからな?」
「わ、分かっています。」
ジルにそんな事をさせない為にも自分がしっかりしなければとリュシエルは緊張しつつ近付いていく。
ジルもリュシエルを守れる様に後ろで控えておく。
「あの、起きて下さい。」
少女の身体を優しく揺すってリュシエルが声を掛ける。
「ん…ん?」
閉じられていた瞼をゆっくりと開けて少女がジル達を見上げる。
「良かった、気が付きましたね。」
「ここは?」
少女が身体を起こして辺りを見回して首を傾げる。
先程までレイクサーペントに食べられていたのだが、どうやら身体に問題は無さそうだ。
「シャルルメルトのベリッシ湖です。貴方は魔物に食べられていたのですが覚えていませんか?」
「シャルルメルト?ベリッシ湖?魔物に食べられてた?」
リュシエルの言葉全てに首を傾げる少女。
どうやら何一つ覚えが無いらしい。
「覚えていない様ですね。では貴方のお名前は?」
「名前?名前…。」
思い出そうと頑張っているが一向に名前を思い出す気配が無い。
「記憶喪失の様ですね。」
「その様だな。」
何らかの理由で記憶を失っている様だが普通の記憶喪失ではなさそうだ。
理由は何故か万能鑑定で少女が視えないからだ。
名前や状態が知れないので記憶の手掛かりは得られない。
「何か些細な事でも覚えている事はありますか?」
「名前は分からないけど私は天使族。聖痕の使い方も分かる。」
「成る程、他には何か覚えていますか?」
リュシエルが尋ねると少女は首を横に振る。
完全に記憶を失っている訳では無いが殆ど覚えている事も無さそうだ。
「殆ど記憶を失っている様だな。それでどうするんだ?」
この少女の扱いはリュシエルに任せる事にした。
なのでどうしたいのか確認を取る。
「一先ず屋敷に連れ帰ります。このまま置いていくなんて出来ませんから。」
「屋敷?」
「私の家です。貴方が良ければ来ませんか?記憶を失くしてよく分からない場所に一人でいるなんて心細いと思います。」
そう言って微笑んでリュシエルが手を差し伸べる。
少女は差し出された手を掴んで立ち上がる。
「ありがとう、えっと。」
「私はリュシエルです。」
「そっちは。」
「我はジルだ。」
「リュシエル、ジル、助けてくれてありがとう。」
少女がぺこりと頭を下げてお礼を言う。
「無害そうな子じゃないですか?」
少女の態度を見てリュシエルがこっそり耳打ちしてくる。
天使族と揉めていたとしても、この子に当たるのは可哀想だと言う感情がリュシエルから伝わってくる。
「まだ断定は出来んな。記憶を取り戻した瞬間に襲い掛かってくる可能性もあるぞ。」
「一体貴方と天使族との間で何が起きたのですか?」
仲間の魔族を庇って戦いになりましたとは言えない。
レイアやテスラの情報を漏らすつもりも無いので話題を変える。
「色々とあるのだ。それより用件は住んだ事だし戻らないか?」
「そうですね。ベリッシ湖が解放されたと聞けば領民も喜んでくれるでしょう。水の精霊の事もシキに聞かなければ。」
レイクサーペントを倒し終えたジル達は記憶喪失の天使を加えて屋敷に戻る事にした。
「ジル、あれって。」
「何故レイクサーペントの中に天使族が。」
凍った湖の上に落ちた者には天使の証でもある白い翼が生えている。
「大変です!ずっと食べられていたのなら体調が心配です!助けなければ!」
「待てお嬢。」
「ど、どうしたんですか?」
急いで助けに向かおうとするリュシエルの腕を掴んでジルが止める。
何故止めるのかと不思議そうな表情をしている。
「気を失っている様だからな。始末するなら今が丁度良い。」
今なら厄介な力を使われずに比較的楽に倒せるだろう。
「始末って、命を奪うと言う事ですか!?な、何故そんな事を。」
突然のジルの過激な発言にリュシエルが驚いている。
銀月の鞘を握っているので冗談では無いと分かる。
「我は天使族の一人と前に争って命を狙われている様だからな。報告されては面倒だ。」
「だ、だからって突然そんな事をしなくても。しかも相手は子供なのですよ?」
気を失って倒れているのは天使族の少女だ。
翼を除けば見た目だけなら人族の子供と変わらない。
「相手は長命種だ、見た目に騙されるな。」
「し、しかしですね、うーんと。」
こんな少女を殺させるのは嫌な様で、リュシエルがどうにかジルを止めれないかと必死に考えている。
「はぁ、分かった分かった。いきなり殺すのは止めてやる。あの天使族をどうしたいのかはお嬢に任せるとしよう。」
あまりにも悩んでいたので取り敢えず殺すのは止めておいた。
と言っても不審な動きをすれば容赦するつもりは無い。
「本当ですか!では取り敢えず私が話しをしてみます!」
「その代わりに少しでも奴が攻撃の意思を見せたら我は躊躇しないからな?」
「わ、分かっています。」
ジルにそんな事をさせない為にも自分がしっかりしなければとリュシエルは緊張しつつ近付いていく。
ジルもリュシエルを守れる様に後ろで控えておく。
「あの、起きて下さい。」
少女の身体を優しく揺すってリュシエルが声を掛ける。
「ん…ん?」
閉じられていた瞼をゆっくりと開けて少女がジル達を見上げる。
「良かった、気が付きましたね。」
「ここは?」
少女が身体を起こして辺りを見回して首を傾げる。
先程までレイクサーペントに食べられていたのだが、どうやら身体に問題は無さそうだ。
「シャルルメルトのベリッシ湖です。貴方は魔物に食べられていたのですが覚えていませんか?」
「シャルルメルト?ベリッシ湖?魔物に食べられてた?」
リュシエルの言葉全てに首を傾げる少女。
どうやら何一つ覚えが無いらしい。
「覚えていない様ですね。では貴方のお名前は?」
「名前?名前…。」
思い出そうと頑張っているが一向に名前を思い出す気配が無い。
「記憶喪失の様ですね。」
「その様だな。」
何らかの理由で記憶を失っている様だが普通の記憶喪失ではなさそうだ。
理由は何故か万能鑑定で少女が視えないからだ。
名前や状態が知れないので記憶の手掛かりは得られない。
「何か些細な事でも覚えている事はありますか?」
「名前は分からないけど私は天使族。聖痕の使い方も分かる。」
「成る程、他には何か覚えていますか?」
リュシエルが尋ねると少女は首を横に振る。
完全に記憶を失っている訳では無いが殆ど覚えている事も無さそうだ。
「殆ど記憶を失っている様だな。それでどうするんだ?」
この少女の扱いはリュシエルに任せる事にした。
なのでどうしたいのか確認を取る。
「一先ず屋敷に連れ帰ります。このまま置いていくなんて出来ませんから。」
「屋敷?」
「私の家です。貴方が良ければ来ませんか?記憶を失くしてよく分からない場所に一人でいるなんて心細いと思います。」
そう言って微笑んでリュシエルが手を差し伸べる。
少女は差し出された手を掴んで立ち上がる。
「ありがとう、えっと。」
「私はリュシエルです。」
「そっちは。」
「我はジルだ。」
「リュシエル、ジル、助けてくれてありがとう。」
少女がぺこりと頭を下げてお礼を言う。
「無害そうな子じゃないですか?」
少女の態度を見てリュシエルがこっそり耳打ちしてくる。
天使族と揉めていたとしても、この子に当たるのは可哀想だと言う感情がリュシエルから伝わってくる。
「まだ断定は出来んな。記憶を取り戻した瞬間に襲い掛かってくる可能性もあるぞ。」
「一体貴方と天使族との間で何が起きたのですか?」
仲間の魔族を庇って戦いになりましたとは言えない。
レイアやテスラの情報を漏らすつもりも無いので話題を変える。
「色々とあるのだ。それより用件は住んだ事だし戻らないか?」
「そうですね。ベリッシ湖が解放されたと聞けば領民も喜んでくれるでしょう。水の精霊の事もシキに聞かなければ。」
レイクサーペントを倒し終えたジル達は記憶喪失の天使を加えて屋敷に戻る事にした。
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