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64章

元魔王様と世界最強の従魔使い 8

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 レギオンハートの集めた情報により、一先ず聞きたい事は全て聞けた。

「あっちもそろそろだな。随分と頑張った方じゃないか?」

 ナキナと影丸が激しく動き回って息を切らしている。
レギオンハートの従魔達の攻撃に応戦し続けて体力も魔力も限界の様だ。

「どちらもSランクの魔物ですからね。」

「でも手加減してるんでしょ?」

「当たり前だろう。全力でやらせちまったら王の配下を殺してしまう。」

 今の段階ではまだまだ圧倒的な実力差がある。
どの程度の力があるか見極めるだけなので全力で戦う必要は無い。

「配下と言うよりは仲間だな。なので殺されては困る。」

 転生した今のジルは新たな仲間達を加えて2度目の人生を謳歌しているところなのだ。

「それで実力はどうなの?お眼鏡にはかなった?」

「悪くないな。これなら俺の考案した育成方法も試してやれそうだ。」

 どうやら二人の実力はレギオンハートから見ても高いと判断された様だ。

「従魔育成において貴方以上の方はいませんから頼もしいですね。」

「それでどんな方法を試すんだ?」

「おっと、それは内緒だな。王と言えど俺の育成方針を語る訳にはいかない。」

「ふむ、門外不出と言ったところか。」

 興味本位で尋ねたが断られてしまった。
これだけの従魔達を育て上げる手法なのでそう簡単には明かせないのも分かる。

「まあ、聞けるのは受ける者だけだな。王もホッコを預けたいって話しなら教えてもいいが、俺が関与するまでも無さそうだ。王の下で育っても変わらないくらい強くなれるだろう。」

 ホッコは本来得意な魔法の力を魔物の姿では無くスキルを使い人型になって扱う事でディバースフォクスとしては全く新しい戦闘スタイルへとなった。
これなら手出ししなくてもSランククラスの魔物になれるだろうとレギオンハートは確信していた。

「主様の下で強くなるの!」

 ホッコはレギオンハートに教えてもらうよりもジルに訓練してもらう事を選んだ。
自分の主人こそが最強だと信じて疑っていないので、ジルに鍛えてもらうのが一番成長出来ると思っているのだ。

「そうか、いつか俺の従魔達にも並ぶかもしれないな。」

「もっと強くなったら勝負したいの!」

 ホッコは最強の元四天王であるレギオンハートに勝負を挑みたいと言っていた。

「構わないぞ、なんなら今からやるか?」

「今はまだ実力不足だと思ったから止めておくの。せっかくなら強くなってから戦ってみたいの。」

 そう言ってホッコが首を振る。
ナキナ達の戦いを見て先程の考えを改めたらしい。

「ほう、自分の実力をよく理解しているな。王の下で訓練していれば成長し続けられるから焦る事は無い。いつでも歓迎するぞ。」

「レギオンハートの様な指導は出来無いと思うが、我なりに考えて育てていこうとは思っている。さて、終了だ。」

 ナキナ達の戦いが終わったので遮音結界が解除される。

「格上相手によく戦った。実力はしっかりと確認したぞ。」

「つ、疲れたのじゃ~。」

「ウォ~ン…。」

 レギオンハートが腕を組みながら満足そうに頷いているが、ナキナと影丸はそれどころでは無い。
地面に大の字に横たわって疲労困憊である。
ジルから飲み物を受け取ってガブガブと流し込んで喉を潤している。

「はっはっは、必要な事だったからな。ある程度の実力が無ければ俺の強化訓練には耐えられん。」

 レギオンハートの訓練に付いてこれるかを見極める為の戦いだ。
そして二人は見事にそれを合格した。

「その強化を影丸に施してくれると言う事じゃな?」

「影丸にもだが、テイマーであるナキナにも訓練は受けてもらうぞ。」

「妾も?」

 影丸の強化を頼んだので自分が指名されるとは思っていなかったのだろう。

「俺がお前達を強くしてやれる方法は二つある。一つは影丸の進化、もう一つはテイマーと従魔の連携強化だ。」

 二本の指を立てて方法を説明してくれる。
二つ目の連携強化の方にナキナも必要となるのだろう。

「その訓練が秘密と言う事だな?」

「まあ、そうなるが秘密ばかりではつまらないだろう。少しくらい情報を開示しよう。影丸の進化についてだ。」

 本来魔物が上位の存在へと進化する方法は幾つかあるが、長く生きる事や高い実力を身に付ける事が基本的となる。
そうすれば自ずと魔物は更に高みの存在へと進化する。

「魔物の進化ですか。」

「シャドウウルフが別の魔物になるって事だよね?」

「より上位種へと至るだけで中身は影丸のままだ。そしてシャドウウルフの進化先は、ダークシャドウウルフか、カースシャドウウルフだな。」

「どちらもAランクの魔物の中ではトップクラスの魔物ですね。Sランクとも大差ありません。」

 ランクは変わらないがその力の差は大きい。
進化すれば新たな力も得て出来る事が大きく広がる。

「その二種って事は新たに魔法適性を得るって事だよね?」

「そうなるな。魔法とスキルの両刀使いだ。」

「闇魔法と呪詛魔法か。どちらを選んでも強くなるのは間違い無い。」

 進化すれば影丸がどちらかの魔法適性を得る。
スキルと組み合わせれば強力な攻撃手段となるだろう。

「ちなみに俺のお勧めはダークシャドウウルフだな。」

「何故じゃ?派生魔法の方が良いのではないか?」

 派生魔法は簡単に言えば基本魔法の高難易度版とでも言える魔法だ。
自在に扱える様になるのは多少苦労するが、その分強力な手札となる。

「確かに攻撃力に特化させるならカースシャドウウルフなんだが、こっちは性格も変わってしまう。かなり交戦的で残虐な性格になるぞ。」

 進化の中には性格にも影響を及ぼすものがある。
元の影丸とは掛け離れた魔物へとなってしまうかもしれない。

「そ、それは遠慮したいのう。」

「ウォンウォン。」

 ナキナも影丸も性格が変わる事を望んではいない。

「ならば進化先は決まりだな。」

「うむ、影丸の進化宜しく頼むのじゃ。」

「任せておけ。」

 レギオンハートに向かってナキナが深々と頭を下げた。
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