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63章
元魔王様と浮島強化計画 1
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セダンの街に帰ってきて数日は街の変わり様に慣れる為に色々と見て回っていた。
久しぶりに会う知り合い達とも交流を深めて、今日も街でも見て回ろうかと考えているとシキによる召集が掛かった。
「一大事なのです。もはや悠長に構えてはいられないのです。」
シキが集まった浮島の面々を見回しながらとても深刻そうな表情で告げる。
「シキ、そんな真剣な表情で何を言っているのだ?」
「ジル様はもう少し真剣になってほしいのです!」
頑張ってシリアスな雰囲気を作ろうとしているがあまりにも周りは違っていた。
「我にそう言われてもな。」
「はいジルさん、あーん。」
言われた通り口を開けると美味しいお菓子が口の中に運ばれてくる。
そして口の中いっぱいに幸せが広がっていく。
「テスラ待ちなさい!何故私が作ったのに貴方がその役目を担っているのですか!」
「レイアばかりに仕事させるのも悪いと思ってね。」
「でしたら自分で作りなさい!それは私の役目です!」
ジルにお菓子を食べさせる役目を勝ち取る為にレイアとテスラが争っている。
二人が久しぶりにゆっくり出来るからと甲斐甲斐しく世話をされている最中なのだ。
「レイアとテスラも黙って座っているのです!真剣な話しなのです!」
シキが小さな手でテーブルをペシペシと叩いて言う。
それを見て本当に真剣な話しなのだろうと三人は座り直して、ジルは自分でお菓子を食べる事にした。
「それで浮島の住人を集めて何用なんじゃ?」
「こほん、最近天使族の動きが活発になってきているのです。」
「知っているぞ。我の知り合いも魔の森で戦ったらしいからな。」
アレンとエルミネルも魔の森で天使族と交戦している。
ジルの名前も出たらしく探し回られていると言う。
「拠点としている国からかなりの数が出払っているらしいわよ。魔族狩りって言う一番の目的があるけど、最近は歯向かってくる他種族にも容赦はしないって話しね。」
「セダン近郊で見掛ける天使族はジルさんを探しているらしいですからね。」
「迷惑な話しだ。」
天使族の一番の目的は魔族の殲滅だ。
この世界に来て世界に向けてそう宣言している。
だからこそ標的の魔族に加担する種族も敵と見做している。
「そんな状況なのに皆落ち着き過ぎなのです。対策を立てようとは思わないのです?」
「対策?」
「天使族に見つかればジル様は攻撃対象なのです。レイアとテスラは当然として、他の皆も関わりがあると見做されて問答無用なのです。」
確かにレイアとテスラは魔族だと知られてしまったし、ジルやナキナも一緒にいるところを見られている。
戦闘能力が高い者ならばある程度の相手は問題無いが、ナンバーズクラスが出てくると実力的に厳しい者もいるだろう。
「それで対策か。一応結界は張って浮島の対策はしているぞ?」
「足りないのです。天使族のナンバーズが攻めてきたとすれば心許ないのです。」
ジルの知るナンバーズはライエルだけだが、更に強い天使族もまだいると言っていた。
ジルの結界魔法は強力だがナンバーズはこの世界に無い聖痕と言う不思議な力を扱ってくるので、まだまだ他にも対策は欲しいところだ。
「ナンバーズか。あの光剣を見て自分の力不足を実感させられたのう。」
あの頃はジルがいなければ三人はやられていたかもしれない。
それだけナンバーズの力は凄まじかった。
「でもナキナさんも随分と強くなったじゃない。私達と一緒で。」
「そうです、天使族など恐れるに足りません。」
「そうじゃな、今度は妾もナンバーズと戦ってみたいのじゃ。」
前とは違って皆力を付けたり全盛期に近付いている。
次に同じ様な事が起これば自分達も戦える。
「戦闘狂ばかりで頭が痛いのです。普通はそんな考えにならないのです。」
「シキは天使族を恐れているのか?」
対策を立てたがっているのはシキだけだ。
だが戦闘能力を持たないので不安なのは分かる。
「普通は怖いのです。種族的に見てもかなり戦闘に特化した種族なのです。ずっと目を付けられてるのは嫌なのです。」
「具体的にどう言う対策をしたいんだ?シキが望むなら協力するぞ?」
「さすがはジル様なのです。契約精霊想いで嬉しいのです。」
昔からの付き合いであり、真契約を結んでいるシキの頼みは極力叶えてあげたい。
なのでシキが納得する対策を講じるのもお安い御用だ。
「シキが対策として提案するのは浮島の戦力強化なのです。ジル様の側が襲われても一番安心出来るのですが他はまだ不安なのです。攻め込まれても安心出来るくらいに浮島全体を強化する必要があると宣言するのです。」
シキが小さな手を上げながら真剣な表情で皆にそう言った。
久しぶりに会う知り合い達とも交流を深めて、今日も街でも見て回ろうかと考えているとシキによる召集が掛かった。
「一大事なのです。もはや悠長に構えてはいられないのです。」
シキが集まった浮島の面々を見回しながらとても深刻そうな表情で告げる。
「シキ、そんな真剣な表情で何を言っているのだ?」
「ジル様はもう少し真剣になってほしいのです!」
頑張ってシリアスな雰囲気を作ろうとしているがあまりにも周りは違っていた。
「我にそう言われてもな。」
「はいジルさん、あーん。」
言われた通り口を開けると美味しいお菓子が口の中に運ばれてくる。
そして口の中いっぱいに幸せが広がっていく。
「テスラ待ちなさい!何故私が作ったのに貴方がその役目を担っているのですか!」
「レイアばかりに仕事させるのも悪いと思ってね。」
「でしたら自分で作りなさい!それは私の役目です!」
ジルにお菓子を食べさせる役目を勝ち取る為にレイアとテスラが争っている。
二人が久しぶりにゆっくり出来るからと甲斐甲斐しく世話をされている最中なのだ。
「レイアとテスラも黙って座っているのです!真剣な話しなのです!」
シキが小さな手でテーブルをペシペシと叩いて言う。
それを見て本当に真剣な話しなのだろうと三人は座り直して、ジルは自分でお菓子を食べる事にした。
「それで浮島の住人を集めて何用なんじゃ?」
「こほん、最近天使族の動きが活発になってきているのです。」
「知っているぞ。我の知り合いも魔の森で戦ったらしいからな。」
アレンとエルミネルも魔の森で天使族と交戦している。
ジルの名前も出たらしく探し回られていると言う。
「拠点としている国からかなりの数が出払っているらしいわよ。魔族狩りって言う一番の目的があるけど、最近は歯向かってくる他種族にも容赦はしないって話しね。」
「セダン近郊で見掛ける天使族はジルさんを探しているらしいですからね。」
「迷惑な話しだ。」
天使族の一番の目的は魔族の殲滅だ。
この世界に来て世界に向けてそう宣言している。
だからこそ標的の魔族に加担する種族も敵と見做している。
「そんな状況なのに皆落ち着き過ぎなのです。対策を立てようとは思わないのです?」
「対策?」
「天使族に見つかればジル様は攻撃対象なのです。レイアとテスラは当然として、他の皆も関わりがあると見做されて問答無用なのです。」
確かにレイアとテスラは魔族だと知られてしまったし、ジルやナキナも一緒にいるところを見られている。
戦闘能力が高い者ならばある程度の相手は問題無いが、ナンバーズクラスが出てくると実力的に厳しい者もいるだろう。
「それで対策か。一応結界は張って浮島の対策はしているぞ?」
「足りないのです。天使族のナンバーズが攻めてきたとすれば心許ないのです。」
ジルの知るナンバーズはライエルだけだが、更に強い天使族もまだいると言っていた。
ジルの結界魔法は強力だがナンバーズはこの世界に無い聖痕と言う不思議な力を扱ってくるので、まだまだ他にも対策は欲しいところだ。
「ナンバーズか。あの光剣を見て自分の力不足を実感させられたのう。」
あの頃はジルがいなければ三人はやられていたかもしれない。
それだけナンバーズの力は凄まじかった。
「でもナキナさんも随分と強くなったじゃない。私達と一緒で。」
「そうです、天使族など恐れるに足りません。」
「そうじゃな、今度は妾もナンバーズと戦ってみたいのじゃ。」
前とは違って皆力を付けたり全盛期に近付いている。
次に同じ様な事が起これば自分達も戦える。
「戦闘狂ばかりで頭が痛いのです。普通はそんな考えにならないのです。」
「シキは天使族を恐れているのか?」
対策を立てたがっているのはシキだけだ。
だが戦闘能力を持たないので不安なのは分かる。
「普通は怖いのです。種族的に見てもかなり戦闘に特化した種族なのです。ずっと目を付けられてるのは嫌なのです。」
「具体的にどう言う対策をしたいんだ?シキが望むなら協力するぞ?」
「さすがはジル様なのです。契約精霊想いで嬉しいのです。」
昔からの付き合いであり、真契約を結んでいるシキの頼みは極力叶えてあげたい。
なのでシキが納得する対策を講じるのもお安い御用だ。
「シキが対策として提案するのは浮島の戦力強化なのです。ジル様の側が襲われても一番安心出来るのですが他はまだ不安なのです。攻め込まれても安心出来るくらいに浮島全体を強化する必要があると宣言するのです。」
シキが小さな手を上げながら真剣な表情で皆にそう言った。
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